政治・制度

日本の最重要な国策は、公的教育財源の倍増!-OECD最下位の公的教育支出、社会保障費のうち子育て関係費は5%

子どもの教育費

「子どもは社会の宝」という言葉があります。親にとって子どもは宝ですが、社会の未来を築き上げていく担い手となる子ども達は、社会全体の宝でもあります。

日本は、少子高齢化の流れの中で、その宝物である子ども達の数がどんどん減っています。この数少ない子どもたち一人ひとりが活き活きと生活し、学んでいくことができるようにしていかなければ、未来の社会を支えられない状況になっています。

しかしながら、「ニッポンの子ども達の未来が、このままではヤバい!」と感じさせる調査研究データが多く示されています。

・日本は、約6人に1人の子どもが貧困状態にあると言われている。
・発達障がい児の9割が、十分な支援を受けていないとも言われている。
・児童養護施設を卒業する子ども・若者達の進学や就職は、困難が続いている。
・不登校の小中学生の8割が、まともな教育を受けていない可能性がある。
・小学生や中学生の学力差が拡大している。
・偏差値への重視が加速し、子どもの生きる力がダウンしているとの調査もある。
・日本にいる外国人の子どもの16%が、学校に通っていない可能性がある。
・1クラスの生徒数は、先進国平均の4割も多い。
・イジメや引きこもりは、深刻化している。
・高校生の約8割が、「自分はダメな人間だ」と感じ、自己肯定感が先進国で最低レベル。

待ったなしの状態の子どもに関する様々な問題が表れてきています。

日本は、先進国の平均と比べ、教育費に占める親の私費負担が倍くらいある

一方、日本は、先進国の平均と比べ、教育費に占める親の私費負担が倍くらいあり、公立中学校の教員の労働時間が5割以上長いというのが現状です。

つまり、低所得者を親に持つ子どもの教育機会がかなり限定されているうえに、教師達も長時間労働で疲弊しているということです。

日本の子どもの教育環境が劣悪な理由

では、日本の子どもの教育環境がこんなに劣悪になっている原因は何でしょうか?

例えば、子どもの教育は、学校と地域と家庭の三位一体が必要ですが、これら三者が対立しているところが少なくありません。さらに教師は、前述した通り超多忙で、地域社会は希薄化し、教育を放棄したり目先の成績ばかりに目が行く親も少なくありません。

また、すぐに「体罰だ」と教師は文句を言われモンスターペアレントも珍しくなく、小学校の運動会や保育園の開園に反対する地域も散見されています。加えて、子ども一人一人への丁寧なケアが今の時代には求められています。

これらを解決する手段は一つではありませんが、間違いなく言えることは、「人・機会・資金」をもっと増やす必要があるのではないでしょうか?

人は、教育人材。多忙を極めている教師の数を増やすことのみならず、地域やNPOなどで子ども教育に関わる人材も、拡充していく必要があります。

機会は、子ども達が教育を受ける機会。教育の場や機会は学校だけではありません。地域、NPO、更には企業など、「実社会」の多くが、子ども教育の場や機会になりえます。

そして資金。上述した教育人材と教育機会を増やすには、やはりどうしても「お金」が必要。「教育は神聖なるもので、教師は歯を食いしばってやるべき、NPOや地域は無償ボランディアでやるべき」では、続きません。教育には「もっとお金が必要」ということです。

少なすぎる日本の公的教育支出

しかし、日本は「子ども教育への公的財源が少な過ぎる」というのが事実です。

例えば、日本の国内総生産に占める教育機関への公的支出の割合は3.6%で、先進30カ国中最下位。世界各国が子ども教育への投資(税金の投入)を増やしている中、日本だけが削減されている。また、多額の社会保障費のうち、子育て関係費はたったの5%、驚くほど少ない。

多額の社会保障費のうち、子育て関係費はたったの5%

お金がもっとあれば、子ども教育の問題が全て解決するわけではありません。でもお金は必要です。「子ども教育は、未来への先行投資」という意識を、政治家や国はもっと持ってほしいです。

「一クラスの生徒数を増やす(=教師の数を減らす)」「子どもの数が減っているので教育財源も減らす」という考え方は全くもってナンセンスだと思います。

そのような中、「保育園落ちた日本死ね」運動が政治家を動かしました。でもあれは、ごく稀なことです。

不登校や引きこもり、発達障がいや児童養護施設、学力格差や貧困、キャリア教育や体験学習、保育・幼児教育の無償化や大学の奨学金拡充など、子ども・若者を取り巻く各々の「分野」が、単独で行動をおこしてもなかなか政治や国は動きません。だから子ども教育に関する全ての「分野」が一つにまとまり、マスの力となって国を動かす必要があると感じています。

そこでこのたび、「ニッポン教育応援団」という団体が立ち上がり、私も参画することにしました。子ども教育に関連する各分野の団体・専門家・親や教師などが一つにまとまり、「教育財源が少なすぎる」という大問題を全国民の議論にまで高め、「子ども教育は未来への投資であり、最重要な国策である」というレベルまで国を動かしていくことが目的です。

もう少しストレートに言うと、「教育財源の倍増計画」です。そして、人財が最大の資産で人口減少が進んでいる日本こそ、子ども教育の先進国になってほしいと、心から思っています。子育て中の皆さん、子ども教育に関与している方々も、是非声を一つにして、国を変えていきましょう。

Author:川島高之
1964年生まれ、1987年:慶応大学卒、三井物産に入社、2012年:系列上場会社の社長就任、「イクボス式経営」で利益8割増、時価総額2倍、残業1/4を達成。2016年:社長退任、フリーランサーとして独立。一方、小中学校のPTA会長(元)、少年野球コーチ、イクメンNPO「ファザーリング・ジャパン」理事、子ども教育NPO「コヂカラ・ニッポン」代表でもある。
子育てや家事(ライフ)、商社勤務や会社社長(ビジネス)、PTA会長やNPO代表(ソーシャル)という3つの経験を融合させた講演が年間300回以上。
NHK「クローズアップ現代」では「元祖イクボス」として特集され、AERA「日本を突破する100人」に選出、日経、朝日、読売、フジTVなど多数メディアに。
著書:いつまでも会社があると思うなよ!職場のムダ取り教科書

この記事が気に入ったら
「いいね!」や「フォロー」をお願いします。
最新情報をお届けします。
タイトルとURLをコピーしました