みなさん、中学生の5人に1人が、困ったときの相談相手が誰もいないということ、ご存じでしょうか。
地域のつながりがなくなり、子育てにまつわる親の負荷や責任が増える中で、満足に子どもと話したり、寄り添うことが難しい家庭も少なくありません。特に深刻な家庭の場合、虐待や育児放棄などへ発展する傾向があり、事実、子どもの虐待対応件数は毎年1万件ペースで増え続け、最新の調査ではついに10万件を超える数字となってしまいました。
様々な支援団体が子どもたちを少しでも支えるために立ち上がっているのにこのような事件は後を絶ちません。その背景には子どもたちと支援団体がまだ十分につながっていない状況があります。子どもたちに寄り添うNPO・支援団体は毎年立ち上がっていますが、支援情報はなかなか子どもたちに届きません。大人ですら、NPO・支援団体の違いや支援内容はわかりづらいのが現状です。
困っている子どもほど、支援情報が届かない矛盾
例えば「無料 学習支援」で検索したら200万件、「無料 食事」で検索したら約6600万件の情報が出てきます。また、ネット上には「簡単に稼げるよ」「泊まれるところがあるよ」など、子どもが助けを求めた時に犯罪や事件につながりかねない情報も溢れています。
学校でNPOや支援団体について習うことはほとんどありません。一緒に調べてくれる大人もいません。子どもたちの力で、支援団体の違いを見分け、自分に最適な団体を見つけるのは不可能に近い状況です。
深刻な悩みを抱えながら、誰にも相談できずにいる子どもたちほど、なるべく早く頼れる大人や支援団体と繋がってほしい、そんな思いを持ち、私たちは2016年4月、10代の子ども向けに支援団体の検索・相談ができるポータルサイト「Mex(ミークス)東京版」を立ち上げました。
(2016年4月に東京版をオープンし、5万人以上からのアクセス)
東京版だけで1500人以上が支援団体につながる。しかし・・
インターネットに駆け込んだ子どもたちが、いち早く、安心して相談・支援団体にたどり着くことを目指して開設した「Mex(ミークス)東京版」ですが、オープンから1年でのサイト訪問者数が約53,739件、そのうち掲載されている支援団体へのコンタクト数が1,529件と、とてもニーズが高いことがわかりました。
しかし、全国の中高生は約700万人いるとされています。困ったときの相談相手が誰もいない子どもが5人に1人なら、誰にも相談できない悩みを抱えた子どもたちが全国で約140万人いると推定されるのです。
さらに、東京版の運営中、地方への展開を期待する声をいただいたり、東京以外のエリアからも多くのアクセスがありました。3keys(スリーキーズ)では、これまでの利用状況や支援団体の声などを活かし、また、より利用しやすい新サービスも加えて6月27日(火)に「全国版」としてリニューアルオープンしました。
子どもたちが検索・相談しやすい様々な工夫
今回のエリア拡大に伴って、そのほかにもいくつかリニューアルをしました。子どもたちの悩みにあわせてカテゴリを絞り込んだり、子どもたちそれぞれが使いやすい手段などで絞り込むこともできます。
電話のほうが話しやすい子どももいれば、メールのほうが話しやすい子どももいます。また親にばれないように通話料がかからないサービスを使いたい子どももいます。匿名相談を望む子どもたちもいます。相談前につまずくことをなるべく減らせるよう、検索しやすさや、相談の壁を少しでも下げられるための工夫をしています。
さらに、相談や支援団体を利用するのはまだ不安な子どもたちのために、悩みの解決につながりうるコラム配信もはじめました。他の子どもも悩んでいることを知り、相談してみようかなと思ってもらうためのステップにもなれたらと思っています。
毎週新しいコラムを配信していきますので、こちらもぜひチェックしていただけたら嬉しいです。
さらに東京版からもありましたが、引き続き「ふりがなON/OFF」ボタンがあったり、サイト内で、予約・相談までできるようになっているなど、子どもたちがやっと思いで相談したいと思ったときに、すこしでもつまずかないように工夫しました。
(担当者の顔が見えるのも、どんな人が相談してくれるのか不安にならないような工夫です)
たくさんの大人が手を差し伸べてることを知ってほしい
私たちは活動をする中で、たくさんの大人が子どもたちを思い、手を差し伸べようとしていることを見てきました。社会には子どもたちを思う大人がたくさんいることを、もっと子どもたちに伝えたいと考えています。
現在、100以上のサービスが掲載されていますが、まだ地域に偏りがあったり、メール相談ができる団体や、フリーダイヤルの団体が足りないなど、掲載団体の種類も増やしていきたいと考えています。子どもたちには周りに助けを呼べず、インターネットだけが頼みのつなになっているケースもあります。そういった子どもたちこそ、もしかしたら一番助けを求めているかもしれません。
是非より多くの子どもたちが寄り添ってくれる大人とつながれるよう、一緒に応援いただけたら嬉しいです。
認定NPO法人3keys代表理事。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会幹事。東京都の「共助社会づくりを進めるための検討会」委員。慶應義塾大学法学部卒。大学時代、塾講師や家庭教師の経験等から教育格差の現状を知り、児童養護施設で学習ボランティアを開始。在学中、大学生を 中心とした学生団体3keysを設立。2011年5月に内閣府の雇用創出のための支援金を基に内閣府の認証の元、NPO法人化し、代表理事に就任。同年社会貢献者表彰。現在は現場の支援に加え現場から見える格差や貧困の現状の発信にも力を入れている。