2022年は食料品、日用品、電気、ガス、ガソリンなど、日常生活に必要な物価の高騰が続きました。この物価高騰は今後も続く可能性があると、各報道機関で報じられています。
この物価高騰は、子どもがいる世帯にどのような影響を与えているのでしょうか。本記事を通して、物価高騰が少子化や子育てに与えている影響について、整理していきます。
子育ての必需品についても、大きな影響
初めに、明治安田生命相互保険会社が2022年9月に実施した「子育てに関するアンケート調査」を参照していきます。こちらは、0歳から6歳までの子どもがいる既婚男女1,100人を対象として行われました。
子育て世帯の男女に、物価高による子育ての費用への負担について尋ねた設問では、「負担を感じている」と回答した人の割合は85.2%でした。
項目別で見ると「食費(ミルク代やベビーフード、お菓子等も含む)」と回答する割合が58.4%で最も高く、次に「電気・ガス代」で36.5%、次に「日用品(おむつ代等)」で35.7%でした。子育ての必需品についても物価高の影響が大きく表れていることがわかります。
(引用:明治安田生命/2022年9月「子育てに関するアンケート調査」)
次に、子育て費用(月額)の変遷を見ていきます。2022年は39,299円と、昨年から2,505円増加しています。2019年に幼児教育・保育が無償化したことにより2020年~2021年については一時減った可能性があるものの、物価高により再び増加していることが推察されます。
(引用:明治安田生命/2022年9月「子育てに関するアンケート調査」)
子どもが欲しくても金銭面的に難しい
また、子どもを望む気持ちについての項目です。男女別で見ていきます。まず男性について、子どもを「さらに欲しい」と回答した割合は、昨年は23.8%、今年は26.4%と上昇しています。過去5年間で見ると、男性の「さらに欲しい」という気持ちは、年々上昇していることがわかります。
(引用:明治安田生命/2022年9月「子育てに関するアンケート調査」)
次に女性です。子どもを「さらに欲しい」と回答した割合は、昨年は33.6%、今年は32.5%で、若干減少しています。また、「欲しいが難しい」と回答した割合は、昨年は29.8%、今年は34.4%で上昇しています。
(引用:明治安田生命/2022年9月「子育てに関するアンケート調査」)
理由をみると、「将来の収入面に不安がある」が55.6%で最も多く、次いで「教育費がかかる」が48.7%、「生活費がかかる」が46.6%と、金銭面により「欲しいが難しい」と感じている女性が多いことが読み取れます。これらの3つの理由の回答割合は、昨年よりも増加しています。
(引用:明治安田生命/2022年9月「子育てに関するアンケート調査」)
削られる食費、保護者は食べられないことも
次に、認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむが2022年11月に実施した「ひとり親家庭の物価高による影響調査」を参照していきます。こちらは、シングルマザーサポート団体全国協議会の所属団体の会員約2,800名を対象として行われました。
回答者の98%がシングルマザーであり、就労している人が88%、職種は正規職員が30.5%、パートとアルバイトで36.7%でした。また、80%の方が児童扶養手当を受給している状況です。
調査内容中の9月の収入について尋ねた設問では、1万円未満が12.7%、1~5万円未満が6.1%、5万円~7万5千円未満が6.8%、7万5千円~10万円未満が10.8%、10万円~12万5千円未満が12%と、月収が12万5千円未満が約50%という割合でした。
まず、物価高の方が新型コロナウイルスより家計への影響が大きいかと尋ねた設問では、大きいと回答した割合は約60%、同じくらいの影響だと回答した割合は約32%でした。物価高の状況の方が、家計を圧迫していることがわかります。
(引用:認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ/2022年11月「ひとり親家庭の物価高による影響調査」)
次に、食費や食事に関する設問を見ていきます。
対象物を買えないことがあったかどうかを尋ねる設問について、買えないことが「よくあった」「ときどきあった」を合わせて「あった」とすると、「米などの主食」については56%、「肉や魚」については76%、「野菜」については74%と、普段の食事を成り立たせる食材を、高い割合で買えないことがあった状況があることがわかりました。
(引用:認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ/2022年11月「ひとり親家庭の物価高による影響調査」)
食事の量や回数への影響について尋ねた設問では、「大人の食事の回数や量を減らした」が62%、「子どものおやつを減らした」が36%、「子どもの食事の量や回数を減らした」が7%でした。子どもを優先し、保護者が食べられないケースが多くあると推察できます。
(引用:認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ/2022年11月「ひとり親家庭の物価高による影響調査」)
自由記述の欄では、下記のような声がありました。
・もう食べたからと嘘を言って、自分は食べないで子供の食事を見守っていた(高校生1人、その他(職)、パート)
・米野菜肉の一回分の食事量が少なく、体の成長が他の子より遅れ気味。(就学前1人 小学生1人、無職)
・自分の食事を減らし、できる限り安いものを買って対処している。(就学前1人、販売職、派遣社員)
・魚も食べさせてあげたいけど高い 朝はおなかいっぱいお米を食べさせれない(就学前1人 中学生2人、サービス職、パート)
家計を心配し、子どもは遠慮がちに
次に、食費や食事以外の項目について見ていきます。
対象物を買えないことがあったかどうかを尋ねる設問について、「靴や衣類」について買えないことがあった状況は81%、「子どもの玩具・文具・学用品」については64%でした。
(引用:認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ/2022年11月「ひとり親家庭の物価高による影響調査」)
自由記述の欄では、下記のような声がありました。
・学校の靴や上履きが買えず足が痛いと言っていたけど我慢して履かせてます(就学前2人 小学生1人 高校生1人、運搬・清掃・包装等従事者、パート)
・服や靴、学用品が買えなくて古いので、学校で惨めな思いをしていると思う 。(就学前2人、サービス職、嘱託)
また、光熱費等への影響も大きくなっています。「暖房を入れない」と回答した割合は69%、「入浴回数を減らしている」の割合は34%、「トイレを流す回数を減らしている」の割合は19%でした。電気料金、水道料金を滞納している割合も全体で19%弱おり、生きるうえで必要なライフラインが脅かされている状況がわかりました。
(引用:認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ/2022年11月「ひとり親家庭の物価高による影響調査」)
(引用:認定NPO法人しんぐるまざーず・ふぉーらむ/2022年11月「ひとり親家庭の物価高による影響調査」)
家計ひっ迫は、子どもたちの様子にも大きな影響を与えています。自由記述欄の声を見ていきます。
・子供が学校で使うノートやえんぴつを買うのも遠慮をする。必要なものなのに、大人の顔色を見て、欲しいと訴えることを我慢する。自分の家は貧乏なのだと引っ込み思案になる。お友達との交流も減る(小学生1人、無職)
・食べたい物やほしい物を買ってあげられなく我慢をさせたことで、最近全てのことに対して遠慮がちな発言をするようになった。(小学生1人、事務職、アルバイト)
・お菓子や嗜好品を我慢させることが増えイライラするように実際になった。(小学生2人、生産工程職、正社員)
・古くてボロボロの靴を履いたりして、いつもうつむいている。恥ずかしい思いをしているのだと思う。(就労中やその他お子さん1人、その他(職)、自営業主)
物価高騰は子育て家庭への影響大、とりわけ深刻なのは
長引く新型コロナウイルスの影響に加えて物価上昇が重なり、家計をひっ迫している現状が明らかになりました。その影響の大きさはどの家庭においても、とりわけ、もともと経済的な困難を抱えているひとり親家庭や、非正規雇用で家計を支えている家庭への影響が甚大であることがわかりました。
食費や日用品費、水道光熱費など、生活必需品に関する費用を削らざるを得ず、今この瞬間も、健康に毎日を過ごすことが難しいご家庭もいらっしゃいます。
物価上昇の影響はこれからも続きます。日本国憲法の第25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と国民の生存権を規定していますが、その生存権を脅かされている家庭が多くあることを深刻に受け止め、社会全体で支えることに力を注ぐ必要があると考えます。
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。