カナダ

幼稚園から高校までプログラミング教育を行うカナダ(前編)-国全体でSTEM教育を推進し、新しいカリキュラムを導入

次世紀に向けてカナダでは、STEM教育(サイエンス、テクノロジー、エンジニア、数学の分野における実践的な教育)が必要不可欠であると考えています。カナダの産業省も将来、カナダの国家を担う青少年のコンピューター、テクノロジー技術は国際的にも経済的発展のためにも不可欠と判断しています。

特にプログラミングやロボテイックスの知識においては、2016年頃より幼稚園から高校3年生までの義務教育のカリキュラムに導入するように取り組みを進めており、実際に導入に成功している教育委員会も多数あります。

ちょうど新しいカリキュラムが導入されたばかりで、その実現に向けてカナダがどのように取り組んでいるのか、今後日本の教育現場においても必要になってくる分野となっており参考になると思います。それでは具体的な取り組みについてご説明します。

First Robotics Society:EDMONTON EXPO at NAIT(First Robotics Society:EDMONTON EXPO at NAIT)

教育委員会や企業、NPOが連携して推進

カナダは、机上の勉強だけでなく、より学生が興味をもってSTEMの分野で学び、そして、その知識を活かして社会問題の解決や、新しい技術開発に向けた想像力を伸ばすことに力を入れています。実践的に他の学生と共同で取り組むことから、コミュニケーション力や協調性の向上も目指しています。

実際の教育現場においては、大きく分けて二つの取り組みが開始されました。

一つは、教育指導要領の改定にともない、教育委員会のカリキュラム自体で幼稚園から高校3年生までにプログラミングを教える方法。もう一つは、2017年より始まったCanCodeといってカナダ政府がSTEM教育の実現に伴い49億円近くの資本を使って、教師陣の研修や、生徒への実践的指導、STEM教育の教材を提供しているチャリテイー団体や非営利組織を支援していることです。

こういった団体を支援することで100万人以上の生徒と6万3000人の教師の育成に貢献できると考えています。こういった組織は国から認可を受けて、教育委員会や学校の先生と協力して学校でプログラミングを教えたり、ロボットの大会を開催したり、夏休みの期間集中的に勉強できるサマーキャンプといったクラスを実施しています。

カナダ政府からの資金援助だけでなく、Google やマイクロソフトといった大手企業もこういったチャリテイー団体をバックアップしています。専門家や専門分野の大学生が指導にあたり、最先端の教育方法で実際にロボットを作ったり、プログラミングの基礎をかわいらしい人形や模型を活用して学んだり、生徒が興味をもって達成感も促すような教育を行っています。

Robotics tomorrow:The FIRST Robotics Competition(Robotics tomorrow:The FIRST Robotics Competition)

どの学生もプログラミングを学ぶ機会が得られるようにする

カナダの教育における指導方針は国家が決めますが、実際の運営においては各州にある文科省が管理しています。実際の指導要領に幼稚園から高校3年生までにプログラミングやロボテイックスのクラスも多く取り入れられています。

幼稚園から小学生は勉強するというより楽しく興味を持てるように、プロジェクトベースの授業となっています。幼稚園や小学校では、先生次第でどういったプロジェックトをやるか、どういった教材を使うかも異なりますが、CodingやRoboticsのプロジェクトを実際の授業でやる先生の数は増えています。

ブリティッシュコロンビア州では、2016年9月より義務教育のカリキュラムの一環としてプログラミング教育が開始されました。将来的には、どの学生もプログラミングを学ぶ機会を得ることを目的にしています。

課題としては、そんなにたくさんのコンピューターや教材、そして、プログラミングやロボテイックスを教えることが出来る教師が少ないのにどうやって実現するのかということが課題となっています。文科省も対策として1億の予算を投資して、年間6日間先生の研修の機会を開設することになりました。

以下の動画は、バンクーバー教育委員会の取り組みでは小学6年生が先生にお願いしてロボットの教材を導入し、クラスメイトや他のクラスでもそれを使って指導している様子です。

教師陣の研修は、プログラミングを先生が実際にできるようになるというだけでなく、生徒がより実践的に最先端技術を学ぶための教材を揃えたり、専門家にワークショップを依頼することも技術指導では大変効果のあることです。実践的なプログラミングの教室や、教師陣の指導を行っているのは認可を受けたチャリテイー団体が主に実施します。

CanCodeがスポンサーしているチャリテイー団体の取り組み

カナダでは子どもが興味を持つこと、そして、その取り組みが評価される機会を増やすことが大切と考えています。

そのため、カナダのロボテイックス教育では、様々な大会や自由にロボットをつくる機会、そしてプログラミングやロボテイックスを専攻している大学生が実際に多くの幼稚園や小学校に出向いてメンターとなり、プログラミングの楽しさを教えたり、専門分野で活躍している方々から学ぶ機会を作ったりしています。

また、教師への研修も数多く実施していて、先生がプログラミングをできるようになる教育というよりは、効果的にプログラミングを学ぶことができる教材や教育ソフトの導入のやり方を教えたり、実際にタイアップして授業の一貫として学校でワークショップを開催しています。具体的に二つの団体をご紹介します。

”Acutua”

Acutua

Acutuaは、チャリテイー団体で、実際のワークショップやクラスは、無料で学生さんに提供されます。指導するのは主にテクノロジーやエンジニアの大学生です。プログラミングやロボテイックスが大好きな先輩から実践的に楽しく学ぶことができます。

実際の教室はAcutuaの活動に賛同している大学やカレッジのキャンパスで運営されています。最先端技術の教育がまだ実施されていないような郊外にある教育委員会にも出向いてワークショップを行います。

また、企業とのタイアップでグーグルの実際のエンジニアがワークショップを開いたり、実際のプログラムの監修を行ったりします。多くのエンジニアは大学に入る前にプログラミングをしたり、ロボットをつくったりしていたことから、幼少期からそういった開発の楽しみを経験することが大切と考えています。以下がグーグルとのタイアップの様子です。

”First Robotics”

First Robotics

First Roboticsは幼稚園から高校生が参加できる多くのロボテイックスの大会を開催しています。

技術や開発の分野における学びは、机上でただ物理や数学を教科として学ぶより、実際にある現代社会の問題解決をするためにロボットや、テクノロジーをどういかしたらいいのか専門家の指導のもと実践で学びます。より楽しく、興味を持って学ぶことができると考えています。

この大会に出場することを目標に多くの幼稚園や小学校でも年齢に見合ったレゴロボットや、実際のロボット製作をすることで子ども達が自ら開発の楽しさを学びます。

大会の審査員は有名企業の重役や、大学教授など最先端で活躍されていらっしゃる皆様で、そういった方々から認められることや評価されることは将来的に自信につながり、その分野の取り組みを継続する動機付けにもなります。First Roboticsのユーコン準州の教育委員会での1週間に渡るワークショップの様子です。

カナダのSTEM教育におけるプログラミングやロボテイックスの導入は最先端技術に興味をもつこと、開発を楽しむこと、グループで共同作業をする喜びを学ぶことにつながります。教育委員会と専門知識のあるチャリテイーの団体が協力して青少年用のワークショップや教師陣の研修会を開催していることも特徴です。

こういった体験学習を通じて学んでいる学生さんの感想が思ったよりプログラミングが簡単だったとか、自分でもロボットが作れた、将来そういった分野の仕事についてみたいっと興味を持つきっかけ作りになっています。カナダのSTEM教育の実践は、これからのITやAI技術がより盛んになる21世紀に向けてニーズに見合う人材育成につながる順調なスタートではないでしょうか?

Author:細越美和
Westcoast International Education Consulting in Canada Ltd. 代表。
2004年にカナダ・バンクーバーにカナダ留学を支援するウエストコーストインターナショナルを設立。質の高い英語教育、多文化理解、才能教育に力を入れ、これまでに4,000人以上の留学生をサポート。15年間に渡り、発達障害や視覚障害を持つ留学生もカナダのインクルーシブな教育環境で支援経験あり。
さらに、カナダの教育システムの研究・広報活動として、カナダ州立教育機関の正式な日本窓口としてカナダと日本の教育機関の提携業務や日本の教育者向けのカナダ教育機関見学ツアー、カナダ大使館フェアでの州立教育機関のサポート等を行っている。

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