EdTech

EdTechサービスは、本当に教育を変える“救世主”なのか?-普及しないのは、先生のITリテラシーのせいではない

EdTech

EdTechという言葉、ご存知ですか?EdTechとはエデュケーション(教育)とテクノロジー(IT)という言葉を組み合わせた造語を意味します。

現在、シリコンバレーを中心にIT×教育「EdTech」サービスが黎明期を迎えており、日本ではもっぱら「ICT(Information and Communication Technology)教育」と言われています。

日本国内でEdTechが盛り上がりを見せ始めたのは、2020年までに小学校・中学校で1人1台タブレットを支給するという文科省の方針のためです。

国内の教育市場の中でも大きいマーケットとして期待されています。また、旧態依然とした教育業界をが変えてくれる”救世主”としても注目されています。

海外のEdTechとは?

では、日本より先を行く海外ではどのようなEdTechサービスがあるのでしょうか?代表的な2つのサービスをご紹介します。

Kahn Academy

Kahn Academy

ネットを通して高水準の教育を、誰にでも無償で、どこででも受けられる動画サービス。初等教育から大学レベルの講義まで、物理、数学、生化学から美術史、経済学、ファイナンスまで、内容は多岐に渡っている(wikipediaから引用)

Kahn Academyは、子どもがどこでつまづいているのかであったり、学習状況の進捗を把握することが可能です。子どもは家で授業を受け、学校では一人では分からない点についての補習を行う、”反転学習”というスタイルがアメリカの一部の学校で取り入れられ始めています。

反転学習はTechnologyやContentsに帯する賞賛の声が多いですが、家で動画を見て授業を受けるわけですから、保護者と学校との関係性が非常に重要なポイントになるらしいです。

Edmodo

Edmodo

生徒、教員、保護者をつなぐ学校専用SNSです。教員が招待した子どもだけが使用できるサービスとなっており、オンライン上で宿題の提出や先生への質問等が可能です。ドキュメントや映像等をライブラリーとして共有したり、採点結果を通知することもできます。

日本ではEdTechの機能やコンテンツに重きが置かれることが多いのですが、EdTechの何よりの強みはデータ管理です。その他の海外・国内のEdTechのまとめについては、次のサイトをご参照ください。(日本・海外のIT×教育系サービス総まとめ

問題なのは先生のITリテラシーじゃない

日本のEdTech普及の鍵を握るのは3つの要素があると思います。

1. インフラ環境の整備
時間の問題ではありますが、日本の学校現場では未だに1人1台パソコンが支給されていない学校や、ネットにつながるパソコンが学校に合計数台しかないといった現状も耳にします。しかし、これは時間の問題だと思います。

2. 先生のITリテラシー
学校の先生のITリテラシーが高いか低いか、どちらかというと間違いなく低い部類にはなるでしょう。しかし、スマートフォンが普及している今、パソコンやネットというのはより身近な環境になりつつあるため、こちらも同じく時間の問題だと考えています。

3. 企業が作るプロダクト・サービス
今までデジタル教育の名の下、様々な試みがされてきましたが、いまだ普及には至っていません。上記2点の問題もありますが、使用する人が使いたいと思える洗練された本質的なサービスを作ることができていない企業側の責任が大きいんじゃないかと思います。

今のEdTechサービスでは、教育を変えられない

EdTechは、旧態依然とした教育業界を変えてくれる”救世主”として一部でもてはやされていますが、結論から言うと、今のEdTechのままでは教育を変えるのは正直難しいと思っています。

今のEdTechサービスのほとんどが、その先にいる子ども・先生の顔が浮かばない、体温のないサービスばかりだからです。

学校現場で働く先生達に話を聞いてみても、ごく一部の先生を除いて先生の口からEdTechサービスの名前が出てくることはありません。ちなみに、学校向けのサービスは子ども向けであっても先生を経由して生徒に届くので、先生がどう考えるかはとても重要です。

そもそも教育という括りが大ざっぱすぎるのかもしれません。1つのサービスで全てを解決するのは無理なはずなのに、「うちのサービスはあらゆる問題を解決できます」と標榜するサービスが多いのです。

現場に立つ先生からすればそんな簡単に解決しないことは分かり切っているので、そういう話を聞くたびにガッカリしかしません。先生たちの企業への不信感は異常に強いのです。

ある先生がぼそっと言った言葉が印象に残っています。

「僕たち教員向けに作られているサービスのはずなのに、そこに僕たちがいない」

EdTechサービスの未来は深層心理にどこまで踏み込めるか

教育は誰もが通る道なので誰でも語れることが厄介な部分でもあります。自分がしてきた体験だけで教育を語るのは、とても危険だと私自身いつも注意しています。

例えば、「チャレンジって素晴らしいよね!」という考えは成功体験に恵まれた人の考え方であり、これまで成功体験を積んで来なかった子どもからしてみれば、「チャレンジしても意味がない」というのが当然の価値観です。

しかし、教育にはたくさんの可能性があり、想いが強い人が多いため、いつの間にか目的と手段が入れ替わって自分たち至上主義となっているケースが少なくありません。

自分の価値観が正解ではなく、とにかく相手の価値観とその価値観がどういう背景で形成されたのか、深層心理を探ることがEdTechサービスの未来だと思っています。恥ずかしながら私たちもまだまだ核心には至れていません。

それでも、サービスを開始するまでに1年半徹底的なリサーチを進めて、1,000名以上ヒヤリングしたため、先生から高い評価を受けられるようになってきました。教育とテクノロジーがどう絡み合い、子どもたちの学びや学校現場にどう影響してくるのか楽しみです。

Author:浅谷治希
2011年ベネッセコーポレーションに入社。女性向け大型ポータルサイトの集客業務に従事。2013年2月に株式会社ARROWSを設立。World Econimic Forum運営のGlobal Shapersに2015年選出。2014年公開の小中高の先生向けプラットフォーム「SENSEI ノート」は日本最大規模へ成長。Google・大塚製薬・集英社等の大企業の若年層向けブランディング案件を多数手掛ける一方、省庁や自治体の仕事も手掛ける。「先生から、教育を変えていく」をビジョンに掲げ、日本最大の先生向けプラットフォーム「SENSEI ノート」を開発・運営。Googleや行政など幅広い領域も手掛ける。
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