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オンライン学習がもたらす学びの自立化や個別最適化-オンライン学習は休校期間中の授業の代替手段ではない

今後、再び学校休校となった際に子どもの学びを止めないことは最重要課題であり、その手段の一つにオンライン学習があります。しかし、オンライン学習は学校の休校期間中の一時的措置ではありません。「子どもの学び」をもっと大きくとらえた上で、オンライン学習をどのように位置づけていく必要があるのでしょうか。

「オンライン学習」は、今後どうあるべきなのか。筆者は、学校が休校になった際の一時的な措置としてオンライン学習を位置付けるのではなく、オンライン学習を含めて、今後の学習のあり方を確立すべきであると考えます。

理由としては2点あります。1点目は冒頭にも述べたように、新型コロナウイルスの第2波、第3波がやってきた時に、再び学校が休校になる可能性がある点です。

オンライン学習の整備が進まなければ、学校が休校になった際に、再び子どもの学びが止まってしまうことにつながりかねません。

もう1点目は、オンライン学習をうまく取り入れることができれば、学習効率を高めていくことができると考えている点です。

言い換えれば、学習効率を高めていけるように、オンライン学習を取り入れていく必要があると考えます。

例えば、現在、世の中に存在しているオンライン学習システムの中には、動画を配信するだけではなく、児童生徒の動画の閲覧状況をAIが分析し、学習の得意・不得意を把握できるようなシステムになっているものもあります。そうすると児童生徒は、自分の不得意な学習について、くりかえし学んでいくことができます。

学習のペースは子ども一人ひとりによって違います。従来の一斉授業では、みんなが同じ学習ペースで進んでいくことを前提としていましたが、それにより、学習についていけない、または、先の学習に進みたいのに進めないといった状況が発生していました。

「一律・一斉・一方向型の授業」から「学びの自立化」や「学びの個別最適化」を目指していこうと、「未来の教室」という経済産業省の取り組みの中でも、述べられています。

一人ひとりに最適な学びの方法は異なるという前提に立ち、個が自立して学びを進めていくことができるような学習環境を整えていくこと、そのためにオンライン学習を活用していくことが、今後さらに求められると考えます。

子どものオンライン学習

より支援やサポートが必要な子どもに力を注げる

オンライン学習が本格的に導入されていくと仮定すると、「学校」や「先生」の役割やあり方はどうなっていくのでしょうか。

オンライン学習は、個々で効率的に学習を進めていけるメリットがある一方、その前提には「児童生徒の学習への主体性」があります。つまり、児童生徒が学習に対して受動的な状態では、なかなか学習が進んでいかないというデメリットもあります。

一人で学習を進めていくことが苦手な児童生徒は一定数いるでしょう。そのような児童生徒に対してのフォローアップが、今後教師に求められる役割だと考えます。

学習そのものはオンラインで進めていくことができたとしても、学習に向かう姿勢、意欲はオンラインでは支えることができません。児童生徒の意欲を把握し、学習に向かう姿勢を支えていくためには、学校や教師の存在が不可欠です。

余剰時間は、子どもの「興味開発」の時間に

学習の効率化が進むと、今までよりも学習時間が短縮され、余剰の時間が生み出されるはずです。その時間は、子どもの興味関心を広げていくために活用されるべきだと考えます。

子どもたちの中には、学校が終わると放課後は塾に通うような生活を送っているような子どももいます。しかし、オンライン化が進んで学習効率が高まっていけば、日中も放課後も教科学習をする必要はなくなります。

たとえばスポーツや音楽、アート、科学やプログラミングなど、より体験的な学びができるような環境を充実させ、それらへの取り組みを保障していく必要があるのではないでしょうか。

すでに好きなことや得意なことがわかっている子どもは、より深めていくために時間を注ぐことができますし、逆に好きなことや得意なことがまだわからない子どもは、様々な活動にチャレンジする中でそれらを見つけていくことができるかもしれません。

体験的な学びを保障していくためには、学校だけではなく、地域の中でその受け皿を作っていく必要があります。より一層、家庭、学校、地域が連携を図り、子どもの「学び」を横断的に支えていく姿勢が、今後求められるのではないでしょうか。

イラストを描く子ども

子どもにとって必要な学びは何か

子どもの学びを保障していくことは、必要不可欠なことです。ただ、「子どもにとって必要な学びは何か」という問いを抜きにしては、学びの保障を進めていくことはできないと考えます。

目まぐるしく変化する社会の中で、子どもにとって必要な学びも、日々変化している状況です。激動の中で生きている子どもたちが、最終的に社会に出た時に活躍できる力を育んでいくことが、私たち大人に求められている役割ではないでしょうか。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。

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