インドネシア

「グローバル人材」って一体何だろうか?①-就職するために“特別でないといけない”

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タフなグローバル人材

前回の記事では、昨今一人ひとりが考えて自分らしさを求める流れがあり、ストレーターではなく、よりタフな職業選択ができる大学生、社会人に多くの人がなろうとしているという話を書きました。そこで今はじまろうとしているのが、多様性を前提としたグローバル人材教育であるのかもしれません。

平成24年度3月の東京大学の卒業式では、タフでグローバルな人材となることの重要性を濱田総長が何度も伝えるという場面がありました。

これからの社会は変動性が高まり、多様性があり、グローバル社会になっていくと語っています。多様性であるという意味では、もっと多くの人と文化、環境レベルで違う中でそれらをすり合わせ乗り越えていく必要があります。

また、グローバル社会という意味では、多くの企業活動がグローバルに扱われる中で、より社会の中における企業活動の利益が優先されていき、将来起こりうる地球規模での人口増に伴う、食糧危機、水問題、エネルギー問題にどのようにアプローチしていくのかなど、未然に防ぐべき社会課題は一国だけのものではなくなってきました。

なぜ、海外インターンをしたいと思ったのか?

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その意味で、一昨年から去年にかけて自分自身も東南アジアのインドネシアに住み、さまざまな地域を見て、ビジネスの立ち上げを行う準備をしてきました。

要は、自分自身がグローバル人材と呼ばれるものになってみないと次の世代にグローバル人材とは何かを語ることなど到底できないと思ったからです。

実際、私が行った活動の中で、インドネシアの様々な社会起業家と呼ばれる人材が100倍ほどの競争を乗り越えた後、ブリティッシュカウンシル・インドネシアの協力を得て、スタートアップを行っていることは象徴的でした。また、インドネシアでは大企業を中心にCSR(特に環境分野に)を行うことが法律で義務付けらており、NGOなどのプレイヤーも日々増えている状況です。

現地の大学生と話をしていても、社会性を大切にしながらも、ビジネスのノウハウで社会課題解決をより効果的に進めていくビジネスモデルを創りたいという考える学生が増えていました。そんな中、2012年、インドネシアのバンドン近郊に日本から海外インターンプログラムで来ていた大学生6名と話をしたところ下記のような答えが共通して返ってきました。

就職活動をする前に、インターンをしてみたかった。

以前、留学をしていたこともあり、 英語をつかってインターンをしてみたいと思った。

就職活動を控えているので、 ボランティアとはすこし違ったことをしてみたかった。

インターンを通して、仕事について考えてみたいなと思った。

東北のボランティアは人数も多いから、正直就職活動の面接で話をしたとしてもあまり印象に残らないと感じて、海外インターンに3回生の夏に挑戦してみた。

このような海外での体験は、就職活動時に使う1つのエピソードとして使われるものです。

海外で〇〇をしました。多文化の中で自分らしい活動をしてきました。

人がしていないようなことをする、それが自分らしい生き方をするというフォーマットになってしまう。前回の映像でもお話ししましたが、大学卒業で就職でき るのは全体の2/3。就職活動生がその2/3に入るためには自分がいかに特別な人材であるかを説明し続けないといけません。

”特別でないといけない”という葛藤

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つまり、就職活動がより本田由紀さん(東京大学大学院教育学研究科教授)がいうところのハイパーメリトクラシー社会(※wikipedia参照) になる中で、採用側の求めるコミュニケーション能力やグローバル人材力など、評価基準も実際のところあいまいになっています。

ハイパー・メリトクラシー (Hypermeritocracy)
教育学者の本田由紀による造語で、あえて日本語に訳すと「超業績主義」を意味する。日本の近代社会が学歴をはじめとする手続き的で客観性の高い能力が求められてきたという意味でメリトクラシー的であったのに対して、今日では、コミュニケーション能力をはじめとして独創性・問題解決力といったより本質的で情動に根ざした能力が求められるポスト近代社会に移行しつつあるとして、そのような社会をハイパー・メリトクラシーと呼んでいる。 (ハイパー・メリトクラシー – Wikipediaより引用)

とても訓練され、コントロールされた中でタフであるということを自分に言い聞かせようとする学生たちのこの文脈は、”特別でないといけない”という自分自身との葛藤がそのまま現れているようにも感じます。

しかし、海外で生活や活動をすると、価値観が変わるという良い側面もあります。この部分において、私も経験した、そして、現地で暮らす人たちに多く起きうる現象について書いてみたいと思います。

※このバンドンで出会った日本の大学生に対しては、インターンの空いている日に様々な起業家を訪問するツアープログラムに参加してもらい新しい学びを得てもらうことができました。下記のリンクをご参照ください。

Author:松浦真
大阪府出身。2007年にNPO法人cobonを設立し、関西を中心に「こどものまち」事業やアーティストの交流事業を展開。2016年4月に2人の子どもと共に五城目町に移住し、合同会社G-experienceを設立。2020年4月より、秋田県五城目町議会議員。

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