少年犯罪

罪を犯した少年は、いかにして少年審判で裁かれるのか?-少年は罰する存在ではなく、保護や教育をする存在

少年犯罪

「少年審判」という言葉を耳にしたことはありますか?これは罪を犯した少年たちが受ける裁判のことを言います。

最近では、中学生の覚せい剤事件や少年による殺人事件といったニュースが世間を大きく賑わせました。事件を起こした少年たちが、事件後に実際どのような手続きを通じて、「少年審判」を受けるのでしょうか?

世間一般に知られているような刑事手続きの流れは、成人が罪を犯した場合であり、少年の場合と大きく異なります。少年審判は成人が受ける裁判とは違い非公開となっており、審判がどのように行われるかは、その当事者しか知ることができません。

今回の記事では、罪を犯した少年たちがその後どのような流れで審判を受けることになるのか紹介しながら、「少年」という存在について考えていきたいと思います。

少年事件と成人事件の違いとは?

一般に罪を犯した成人の場合は、警察に逮捕された後に取り調べを受け、検察に送致されます。そして、検察で犯罪の事実について更に取り調べや証拠調べが行われ、犯罪の事実があると十分に認められる場合は検察官によって起訴され、裁判を受けます。これが一般的に知られている刑事手続きの流れだと思います。

少年の場合には、警察に逮捕され取り調べを受けた後の流れが大きく異なります。下記の図が一般的な少年事件の流れになります。

少年事件の流れ

検察に送られるまでは成人と同じですが、その後、全ての少年事件が家庭裁判所というところへ送られます。

家庭裁判所では、家庭裁判所調査官という専門家が少年の罪の事実について調査します。さらに調査官は犯罪の事実だけではなく、少年の性格やこれまでの生い立ち、家庭環境など、少年自身のことやその身の回りのことまで細かく調査していきます。

より詳細な調査が必要な場合、少年を少年鑑別所という施設へ移し、そこでさらに調査していきます。こうして調査を受けた少年は、審判を受けることになります。

審判では調査結果に基づき裁判官がその少年に適当だと考える処分を下します。審判廷には少年の犯罪事実を証明する検察官はおらず、全て家庭裁判所に委ねられます。

家庭裁判所:少年審判について家庭裁判所:少年審判について・PDFリーフレット

このように少年の場合はそのほとんどの役割を家庭裁判所が担うわけですが、なぜ、成人と少年とでこれほどまで手続きが異なるのでしょうか?

少年法の考える「少年」とは?

実は、「少年」に関する刑事手続きは、少年法という法律によって決められており、それが罪を犯した少年の取り扱いを決めています。

少年法で言う「少年」とは20歳未満の者を指し、14歳以上20歳未満の少年が罪を犯した場合は、先ほど説明した手続きで審判を受けることになります。14歳未満の者が罪を犯した場合は、警察で取り調べを受けた後、児童相談所に送致され、その後、必要な場合に家庭裁判所に送られて審判を受けることになっています。

この少年に関する手続きを決めている少年法が考える少年の存在というものが、私たちにとても大切なことを教えてくれています。それが下の3つになります。

①少年はそもそも未熟であり、物事を深く考え、判断することができない存在である。

少年は大人になる過程のまだまだ未熟な存在で、時には間違った行動や判断をすることもあります。そもそも刑罰は、その人自身が考えて行動した結果の犯罪に対して与えられるものだが、未熟で時には間違った行動をとることもある少年に対して大人と同じような罰は与えてはいけない。

②少年はその環境によって、白にも黒にも変わる存在である。

少年は大人に比べて、多くのことを吸収し、大きく変われる可能性を秘めている存在です。そのような環境によって大きく変わる可能性のある少年に対して大人と同じように刑罰を与えるのはかえって少年の立ち直りを妨げることになるため、少年にあった教育は何かを考え、適切な教育をすべきではないか。

③罪を犯した少年は家庭等で適切な教育を受けられなかったことが多く、国が代わって教育をしていかなければならない。

②でも少し述べましたが、少年はその環境に強い影響を受けやすく、罪を犯した少年の中には、様々な事情で家庭などにおいて本来受けるべき教育を受けてこられなかった子が多くいます。そんな子を見捨てるのではなく、国が代わって教育をしていこうという「国親思想」(くにおやしそう)があります。

この3つに共通するのは、少年を罰する存在としてではなく、保護や教育をする存在として捉えていることです。

罪を犯した少年の手続きの多くを検察ではなく家庭裁判所が担っているのは、そのためです。また、少年に対して下される処分はそのほとんどが「刑罰」ではなく、「保護処分」と呼ばれていて、ここからも少年法が少年を保護すべき存在として考えていることがわかります。

少年の立ち直りのために何ができるのかという視点

最近の少年事件では、事件の残虐性や深刻さが大きく取り上げられ、少年に対する厳しい目が向けられています。しかし、事件の事実や背景ばかりに注目が集まり、事件を起こした少年の環境やこれまでの生い立ちについては、あまり知られていません。

もちろん、プライバシーの理由でその多くを知ることができないのは当然ですが、事件の事実以外にもその少年の様々な点に目を向け、考えなければいけないことが多くあります。

最近は、少年に対する厳罰化について様々な議論がなされていますが、罪を犯した少年に対して、私たちはその子を罰することばかり考えるのではなく、立ち直りのために何ができるかを考えることも大切なのではないでしょうか?

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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