少年犯罪

思春期・反抗期の子どもとの接し方で注意したいこと-非行少年・少女と面接する保護司が大切にしている4つのこと

非行少年・少女と面接する保護司が大切にしている4つのこと

「子どもに同じことを何度言っても聞いてくれない」「子どもがいちいち自分の言うことに反発して困っている」こんな悩みをもつ親や学校の先生もいらっしゃるのではないでしょうか?そういった子どもとの関わり方に悩みを持つ人に参考となる「保護司」が実践する子どもとの関わり方を紹介したいと思います。

そもそも「保護司」とは、どこの地域にも必ず一人はいます。罪を犯してしまった少年たちと関わり、更生を助ける活動をしている人たちのことです。

保護司が関わる少年たちは、これまで非行をしてきた子ばかりなので、もちろん一筋縄ではいきません。少年と面接をすれば反発されたり、言うことを聞かなかったり、そもそも面接に来なかったり、と悪戦苦闘の連続です。そんな保護司が日々実践する少年との関わり方を紹介しながら、子どもとつながるために大切なことは何かを考えていきたいと思います。

「保護観察」とは?

保護司が行っている保護観察とはどのようなものなのでしょうか?保護観察を受けることになる少年は、大きく2つに分けられます。

一つは、罪を犯し、家庭裁判所で審判を受けることになり、そこで保護観察処分を下された少年。そしてもう一つは、同じように家庭裁判所で審判を受け、そこで少年院送致の処分が下された少年です。

少年院送致となった少年は少年院でおよそ半年から1年ほど教育を受け、少年院を出ることになります。これを仮退院と言いますが、仮退院後は20歳になるまでの間、社会で保護観察を受けることになります。

では、保護観察となった少年は何をしなければならないのでしょうか?

保護観察が始まると、まず少年が住む地域に在住の保護司が担当として選ばれます。そして少年には保護観察期間中、守らなければならない約束(これを「遵守事項」と言います。)が課せられ、それを守りながら社会で生活していくことが義務付けられます。(この約束を破った場合には、少年にとって不利益な処分が待っています)

この遵守事項と呼ばれるものの中に「保護司と面接を受けること」という事項があります。これにより、少年は毎月決まった回数(一般的に月2回程度が多い)保護司の自宅等に行き、面接を受けることになります。そして面接では、生活状況を話したり、保護観察になることになった事件について振り返ったりしていくことになります。

保護観察対象者

保護観察面接の難しさ

このように保護司は、少年と面接することになりますが、実際には先ほども述べたように難しいことがいくつもあります。

一つは、少年に保護観察の面接を受ける意思がほとんどないことです。当然ながら保護観察の面接は少年自ら望んで受けるものでなく、処分の結果として強制的に受けさせられるものです。そのため一般のカウンセリングとは異なり、自分から進んで話をしたり、悩みを打ち明けようと思う子は多くありません。中には、面接は受けるものの、保護司の質問に「はい、いいえ」の返事をするだけで、話を全くしない少年もいます。

それに加えてさらに、保護司が面接で少年に話したり、指導することが少年の心に届きにくい、時には反発されることが挙げられます。

これが仮に少年院であった場合、はじめは指導に反発するかもしれませんが、施設の中という限られた場所で生活を余儀なくされる少年は嫌でも指導に耳を傾け、自分と向き合わなければならなくなります。しかし、保護観察は施設の外、つまり社会の中で行われるため、そういった強制力はなく、少年院のように上手くいきません。

こういった難しい状況の中で、保護司はどこから解決の糸口をつかむのでしょうか?これから実際に保護司が少年との面接の中で大切にしている4つのことについて紹介していきます。

保護司が大切にしている4つのこと

1.決めつけない、レッテルを貼らない

子どもに限った話ではありませんが、「どうせ、君は○○だから」「また○○しただろ」というような決めつけやレッテル貼りはタブーです。それは「彼らに自分という存在を見てほしい」「受け入れてほしい」という思いがあるからです。決めつけやレッテル貼りをすることは、暗に子どもの本当の姿を見ようとしていないことを彼らに伝えていることにもなります。

2.拒否や否定をしない

もし、少年が時間に遅れてきたり、暴言を吐いたりするなど、間違ったことをしても、まずはそれについて否定や拒否をしないことです。素直に言うことを聞かなかったり、間違ったことをする子は、それがいけないこととわかった上であえて、それをしている子が多くいます。

周りの大人がどう反応するか、そして、この大人は自分のことをわかってくれる人なのかと大人の反応を見て子どもは判断します。否定的な言葉は子どもたちの心を閉ざし、大人の言うことに抵抗するようになります。

3.子どもが話す時間を多くとる(自分は話さない)

否定や指導したい気持ちを抑えて、まずは彼ら自身に多くのことを話してもらい、彼らが普段どんなことを考えているのか知ることが大切です。大人が一方的に話したり、説教をしても、子どもはただ聞いているだけでこちらの言いたいことは伝わりません。

具体的には、イエスやノーで答えられるような質問ではなく、子どもが自由な言葉で語ることができる質問(オープンクエスチョン、例えば「普段どんなことをしているの?」「○○のことはどう思う?」など)をしてみたり、その子の関心のある話題や雑談から始めるなど、その子の世界に入ることから始めると、より彼らに近づくことができ、正直な思いを聞くことができるかもしれません。

4.誉める

子どもが自信を持ち、自己肯定感を高めるためには誰かから誉めてもらえること、認めてもらえることが必要不可欠です。そして誉めるときに、「○○できたね、偉い。」と誉めるより、「〇〇をしてくれて、私は嬉しい。」というように、子どもがしてくれたことに自分が感謝していることや感情を伝えてあげると、より気持ちが伝わり、子どもとの関係も深くなるきっかけになります。

あるがままを受け入れる(自己肯定感と居場所)

こういったことを大切にする保護司がまず何よりも一番に考えていること、それは少年という一人の存在の「あるがままを受け入れる」ということです。

保護観察を受ける子の多くは、これまで家庭でも学校でも上手くいかず、誰にも自分の存在を認めてもらえなかった過去を持っています。そんな体験が「どうせ自分なんて」という自己否定の気持ちを生み、それが更に彼らを自分の殻に閉じ込め、誰かと繋がることを困難にしています。

そういった子が求めているのは、自分という存在を受け入れてもらえること、そして存在を認めてくれる居場所です。保護司は少年たちに必要なものが何かを彼らと関わる中で身をもって体感する中で、彼らを受け入れ、繋がるために日々こういったことを大切にしています。

非行少年に関わらず、全ての子どもにとって、自分という存在を認めてもらえること、そして受け入れてくれる居場所があること、この2つは必要不可欠であり、問題を抱えている子の背景には必ずこういった問題が潜んでいます。家庭や学校で子どもたちと関わる親や先生はこういった視点から一度子どもと関わってみてはいかがでしょうか?

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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