性教育の出張講演等を行っているNPO法人ピルコン(東京都、理事長・染矢明日香/以下、ピルコン)は、日本財団からの助成を受け、2022年2月8日に、日本で初めてとなる教員向けの包括的性教育教材ポータルサイト「ライフデザインオンライン」(以下、本サイト)を公開しました。
本サイトは、性教育や人権教育を授業や学校づくりに取り入れたい学校教員のための登録制の教材ポータルサイトです。
掲載されている教材は、ユネスコが中心となって作成した「国際セクシュアリティガイダンス」をベースとしており、探求型学習のアプローチを実現する教材として、学校の授業で実践的に利用することができます。人権やジェンダー、コミュニケーションについても取り扱い、性教育以外でも人権教育やキャリア教育、健康教育、総合学習の授業など、様々な場面で活用できる教材になっています。
本サイトのオープン時は、以下の6つの授業を実施するための動画教材やスライド教材を提供しています。
ピルコンは、今後、有償にて教員以外も登録できる会員制度をリリースし、性教育を教えたい人向けの研修なども充実化させていく予定だとしています。
「ライフデザインオンライン」ができるまで
ピルコンは、これまでに性の健康とリレーションシップについて、誰もが気軽に学び、語り合い、相談でき、支援につながれるきっかけづくりをミッションに、若者向け、保護者向け、医療・教育に関わる方向けの講座の開催や情報発信を行っていたNPOです。
本サイトの制作の背景には、①新型コロナウィルスの感染拡大の影響、②性教育を行う学校教育の現場からのニーズがありました。
▼コロナ禍における学生の性教育を受ける権利を支える
学校の長期休校などの影響を受け、ピルコンに寄せられる10代の妊娠不安の相談が急増し、またコロナ禍で今後の状況が不確かな状況下でも、学生への性教育を受ける権利を確保できる仕組み作りが急務となったことが制作の背景にあります。
▼多忙な学校教員が利用しやすい教材が必要
包括的性教育の注目が集まる中で、「性教育をどう教えていいか分からない」「勉強会に参加したいが時間がない」などの声が学校教員から多く挙がっていおり、その一方、情報がバラバラでまとまっておらず、多忙な教員が情報を集めていくことが難しい状況でした。また、「性教育」という言葉から来るイメージが様々であり、管理職や他の教員の理解を得ることへのハードルがあることも課題に挙げられました。
上記の課題を解決するため、これまでのピルコンが取り組んできた知見を活かし、性教育に関わる専門家や若者との連携のもと、包括的性教育のプログラムを開発し、そして、本サイトの制作に取り組んでいます。
「ライフデザインオンライン」を通し、これから歩んでいく人生で、自分自身そして他人を尊重し対話をしながら、自分らしく生きられるように生徒・学生をエンパワーメントすることを目指し、下記の5つの特徴があります。
①動画コンテンツが充実:各テーマで、ライフデザインに関する知識を解説する講義動画や若者のインタビュー動画を豊富に取り揃えています。
②対話的な学習プラン:知識提供だけではなく、自分の気持ちや経験に向き合い、他のメンバーとの議論やワークショップを含む学習デザインにしています。
③多様な性のあり方を尊重:プログラム全体を通して、男女の2つだけではない多様な性のあり方を尊重する表現を目指しています。
④専門家が監修:性教育・ジェンダー教育の専門家やワークショップデザイナーが監修に携わり、また様々な専門家のアドバイスを得てプログラム開発を行いました。
⑤講演依頼にも対応:「ライフデザインオンライン」を運営するNPOピルコンでは、学校や施設を訪問、もしくはオンラインでの講演のご依頼もお受けしています。
また、「ライフデザインオンライン」のデザインは、社会問題をやさしく伝える活動をしているチャリツモ、サイト制作は性教育サイト「命育」が担当し、分かりやすく親しみやすい表現を目指しました。
制作:NPO法人ピルコン
プロジェクトディレクター:染矢明日香
プログラムプランナー:金ハリム、高橋宏美
監修:埼玉大学 基盤教育研究センター 准教授 渡辺大輔
ワークショップデザインアドバイザー:湘南工科大学 特任教授、一般社団法人アプライドインプロファシリテーター協会代表理事 樋栄ひかる
デザイン・アートディレクション:チャリツモ
サイト制作:性教育サイト「命育」
助成:日本財団
本記事は、山田友紀子・岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。