新型コロナウイルスの流行に伴い、ここ3か月間、私たちは人と会わない生活を余儀なくされてきました。生活上の機能が次々とオンラインへと移行し、今やオンラインで会議をしたり、イベントを実施したり、友人間で飲み会を開催したりすることは、ごく自然なことになりつつあります。
急速にオンラインの普及が進む社会の中で、子どもたちの生活にも変化が起こっています。学校が休校になってから約3か月間、「子どもの学びを止めるな」というフレーズとともに、オンラインでの教育や学習環境の整備が急ピッチで進められてきました。
コロナ禍において、オンライン学習環境の整備が急務であることは間違いありません。現在は学校が再開されていますが、今後コロナウイルスの第2波、第3波がやってきた際に、いつまた学校が休校になってもおかしくない状況です。
しかし、「オンライン学習」という言葉が一人歩きしてしまい、そもそもオンライン学習とは何なのか、オンライン学習を導入することのメリットやデメリットは何なのか、などの整理がされていないために、自治体ごと、または学校ごとの実践には、かなりバラつきがあるように思います。
本記事では、今の社会に存在する「オンライン学習」の種類と、それぞれのメリットデメリットを整理しながら、これからのオンライン学習、ひいては子どもたちの「学び」「学習」はどうあるべきなのかについて、述べていきたいと思います。
オンライン学習の種類とは?
そもそも「オンライン学習」とはどのような定義なのでしょうか。
「オンライン」は「インターネットにつながっている状態」という意味ですが、「オンライン学習」という正式な用語は存在せず、「オンライン授業」「オンライン教育」「eラーニング」など、同義語が多く存在しているようです。
ここでは「インターネットを利用しながら行なう学習」「ICT(情報通信技術)を利用しながら行なう学習」を「オンライン学習」と定義したいと思います。
これらの定義にもとづきながら、オンライン学習の種類にどのようなものがあるのかを整理したところ、大きく分けると以下の2つがあることがわかりました。
1.ライブ配信型
教師・講師がリアルタイムで授業を実践し、児童生徒が参加する形の学習スタイルです。メリットとしては、双方向のやりとりが可能である点です。授業を聞いていて不明な点があれば、その場で教師・講師に質問することができます。
デメリットとしては、教師・講師側の授業準備の負担が大きい点や、リアルタイムで進行していくため、児童生徒が授業についていけなくなった際にフォローアップが難しい点などが考えられます。
2.動画配信型
予め授業を録画したものを、児童生徒が閲覧する形の学習スタイルです。テレビ放送やケーブル放送のように決まった時間にしか配信されないものもあれば、好きなタイミングで閲覧可能な学習コンテンツもあります。
メリットとしては、くりかえしの閲覧が可能である点です。放送時間が決まっている動画であっても、録画されて後から閲覧できるタイプが多いのではないでしょうか。デメリットとしては、教師・講師との双方向のやりとりはできない点です。
休校期間中は「教科書・紙の教材活用」がメイン
文部科学省が4月中旬に発表した「新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について」という調査結果を見てみます。(臨時休校を実施した学校数は25,223、設置者数は1,213で、回答の単位は設置者数となります。)
調査結果によると、臨時休業中に実施された家庭学習の割合は、下記となります。
②テレビ放送を活用した家庭学習:24%
③教育委員会が独自に作成した授業動画を活用した家庭学習:10%
④上記以外のデジタル教科書やデジタル教材を活用した家庭学習:29%
⑤同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習:5%
⑥その他:12%
「ライブ配信型」に当てはまるのが⑤、「動画配信型」に当てはまるのが②③④となり、ライブ配信型を実施している学校は5%にとどまり、「動画配信型」の方が高い割合でした。しかし、全体的な傾向としては、「教科書・紙の教材活用」が100%と、圧倒的な割合でした。
分散登校から通常登校への移行
現在は、休校期間が明けて、文部科学省の発表によると、6月1日時点で全国の幼稚園~高校の98%が学校再開となっています。6月当初は分散登校をしていた学校も、7月現在では、ほぼ通常登校に移行した学校が多いと思われます。
以前と同じく対面型の授業を実施している学校もあれば、部分的にオンライン学習を取り入れながら学習を進めている学校もあると思いますが、これについては具体的な調査がされていないため、はっきりとした傾向はわかりません。
ただ、おそらく休校期間中の学習の遅れを取り戻すことを最優先とし、ひとまず従来の対面型のスタイルで授業を進めている学校が多いのではないかと思われます。
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。