小児肥満・メタボは怖い!10人に一人は肥満状態!
肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、大人だけの話ではありません。小児肥満やメタボという言葉をご存知ですか?
小児肥満やメタボは、その約70%が大人になってもその状態を継続してしまう可能性があると言われ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす予備軍にもなります。
平成24年度学校保健統計調査によると、近年は減少傾向にあると言われていますがそれでも肥満度20%以上の者の割合が男子児童(11歳・小学6年生)全体の9.98%と言われており、約10人に一人が肥満状態にあります。
同調査では、「①都市部の方が相対的に肥満傾向児の出現率が低い傾向が見られる」、「②男子は女子に比べ、肥満傾向児の出現率が相対的に高い傾向が見られる」と指摘しています。
つまり、都市よりも地方、女の子よりも男の子の方が肥満児傾向が強いということになります。
原因は、生活習慣(生活リズム、食、運動)の積み重ねにあります。
朝食を欠食し、間食が多く、夕食時間、睡眠時間も遅くなることが小児肥満やメタボを促進させる要因であることが分かっています。また、室内でのテレビ視聴やゲームの時間が長く、外で体を使った運動や遊びをしていないこともその要因となっているようです。
30年前よりも体格は良いが、体力・運動能力が低い!
自分が子どもの頃と比べて、今の子どもの体力・運動能力はどのようになっていると思いますか?
平成24年度「体力・運動能力調査」(新体力テスト)の結果によると、「新体力テスト施行後の15年の合計点の年次推移をみると、小学校高学年以上の年代では、緩やかな向上傾向を示している」と述べられています。
しかしながら、もっと長期的に見ると基礎的運動能力(握力及び走、跳、投能力にかかる項目)は、体力水準が高かった昭和60年頃と比較すると、一部を除いては依然として低い水準になっています。
30年前の親世代と比較すると、身長や体重など体格は良くなっていますが、体力・運動能力に関するほとんどの項目で下回っています。
東京都が行った調査では、30年前の小学生の1日の平均歩数は、約27,000歩であったことに対して、小学生が11,382歩、中学生が9,060歩、高校生が8,226歩という結果が出ています。
文部科学省では、この低下の直接的な原因として、下記のものを挙げています。
②空き地や生活道路といった子ども達の手軽な遊び場の減少
③少子化や、学校外の学習活動などによる仲間の減少
各自治体や学校などでも子ども達の体力や運動能力の向上を目指して様々な取り組みが行なわれていますが、上記の原因を考えても学校などに頼るだけでなく、家庭や地域でできることがたくさんあるように思います。
最大の問題は、二極化にあり!
統計データなどは、平均化することで比較することがよくありますが、これによって問題がわかりにくくなってしまうことがあります。
子どもの体力・運動能力に関して、最大の問題は、運動する子としない子が二極化していることにあります。
当たり前ですが、運動しない子が増えれば増えるほどデータの平均値は下がります。
上記の図は、文部科学省が発行している「子どもの体力向上のための取組ハンドブック」から抜粋した図ですが、1週間の総運動時間を表したものです。ここには掲載しませんが、運動時間が少ないほど、体力・運動能力も低くなります。
ここで驚くのは、小学生の女の子で約4分の一、中学生の女の子で約3割が学校外で1週間の総運動時間が60分未満であり、その中では、体育の授業以外で運動をすることがない子も少なくありません。
中学校では、900分前後がボリュームゾーンになっていることを考えれば、運動する子としない子の差は歴然としています。
中学校・高校では、運動系の部活をしているか、文化系又は部活動をしていない子の差が大きいと考えられます。
スポーツ選手を育てることよりも重要なこと
2020年には東京オリンピックが開催されることになり、今後、日本からも一流の選手を輩出することができるようにより一層スポーツが奨励されるようになると思われます。
確かに運動が得意な子をもっと伸ばすための対応も必要だとは思いますが、そもそも運動が嫌いで競技スポーツなんてまっぴらごめんという子に対しても対応を図り、体力・運動能力の底上げを図っていくことが重要です。
では、運動が嫌いな子はどうすれば良いのでしょうか?
運動が嫌いな子がいきなりスポーツをすることはありえません。まず第一に目指すべきは、体を動かすことに対して、「楽しい」「嬉しい」というポジティブな感情をたくさん経験して好きになることです。好きになることで自分から体を動かそうとする自発性を育むことができます。
それには、スポーツよりも外遊びが一番効果的です。平均的なレベルまで体力や運動能力を高めるために、人並み外れたトレーニングが必要なわけではなく、走ったり、跳んだり、投げたりなどの基本的な運動動作を繰り返し継続的に行うことで伸ばしていくことができます。
全くやっていない子に関しては、少しでもやれば現状よりも確実に能力は上がります。昔ながらの鬼ごっこもドッジボールもそういった動作を遊びの中で繰り返し行なっているのです。
「やらされている」という気持ちになればなるほど、子どもにとっては逆効果になってしまうので段々と取り組んでいくことが大切です。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。