思春期や反抗期の子どもの関わり方に関する書籍やウェブサイトをよく拝見します。
国語辞典(大辞林)で意味を調べると、思春期は、「児童期から青年期への移行期。もしくは青年期の前半。第二次性徴が現れ、異性への関心が高まる年頃」(大辞林)、反抗期は「自我の発達過程において、周囲のものに対して否定的・反抗的態度が強く表れる時期。自我が発達してくる三、四歳頃のそれを第一反抗期、自我の独立を求める青年期初期のそれを第二反抗期という。」と出てきます。
子どもが小学校高学年や中学生に差し掛かったあたりから段々と「これまでと違うぞ」と感じる機会が増え、乳幼児期の次に親が悩みを抱えやすいのがこの時期なのだと思います。
私はこれまでに不登校や非行など思春期に課題を抱えて悩んでいる多くの子どもや親と出会ってきました。
書籍やウェブサイトでは、「こうやって対応すれば良い」というような小手先のノウハウがよく書かれていますが、思春期や反抗期に対する根本的な理解がないままに、実践してもけして上手くいくことはありません。
子ども達は賢いので、親がそういった情報を見て自分の対応をしていることをよくわかっています。そういった親を見て「本当にうざい」「気持ち悪い」と言う子ども達の声をたびたび聞くことがあり、よく親と子どもの齟齬を感じます。
今回の記事では、身体的な成長だけではない、子どもの成長過程に思春期や反抗期がある本当の理由についてご説明したいと思います。
思春期・反抗期は、距離感を再構築する
子どもは、段々と年齢を重ねるごとに親から離れ、経済的・精神的にも自立していきます。「ずっと自立しないで私に依存して欲しい」という親は、まずいないでしょう。
乳幼児期に比べ、思春期に差し掛かってくれば、親が関わらなくても自分のことが自分できるようになってきます。子ども自身も中学校、高校と年齢を重ねるごとに、自分に「自立」が求められていることは段々とわかってきます。
周囲の友人からも親とあまりにべったりであれば、主に男子ですが「マザコン!」とバカにされることがあるように、自立していくべきであるという風潮は自然に現れてきます。それに伴って、親と子どもの関わり方も変化が求められてくるのです。
思春期や反抗期は、「自立に向けて親と子どもの距離感を再構築するために、両者が試行錯誤する準備期間」だと考えてください。
子どもは、自立へ向かおうとする一方で、まだ現実には経済的・精神的に完全に自立することができない状態である矛盾を抱えることになります。
親としては、自立していって欲しいけど、全てを信用して任せることはできないという矛盾を抱えることになります。
そんな矛盾を抱えて気持ちが不安定になりやすい者同士がどちらか一方ではなく、互いに距離感を上手く取ろうと試行錯誤しているので、コミュニケーションが難しくなるのです。
もちろん、その距離感にはグラデーションがあり、いつも一定ではなく日々の成長の中で移り変わっていくものですし、兄弟・姉妹でも異なります。よって、何度も何度も両者の試行錯誤が必要となってしまい、様々な葛藤が生じやすくなってしまうのです。けして、この葛藤はマイナスのものではなく、子どもが自立をしていくために必要なステップなのです。
葛藤が表面化して生じているならまだ良いのです。どちらかが距離感の模索を止めて向き合わなくなり、相手の前で適当に取り繕うようになり、抱えている課題が潜在化していってしまうことの方がよほど深刻なのです。
大切なのは、共に適切な距離感を模索し、向き合い続けていくことです。このことを理解せずに、小手先のノウハウで対応して一喜一憂することは、何年も続く思春期においては両者の疲弊を招くだけです。
思春期・反抗期は、第三者の介入が効果的
互いに距離感を試行錯誤する中で、時に当事者同士だけでは、なかなか解決できない状態になってしまうことがあります。
大人の世界でも当事者同士だけの話で済むのであれば、裁判所も弁護士も要りません。そんな時は、互いの考えや気持ちを理解し、通訳・仲介してくれる第三者を入れていくことが大切です。
第三者が介入することは、何ら恥ずかしいことでもダメなことでもありません。問題が複雑化していなければ、専門家でなくでも良いのです。不思議なもので、親から言われると腹が立つことも、従兄のお兄さん・お姉さんから言われると「そんなものか」と妙な納得感があったりします。
逆に、子どもに言われると腹が立つことも、同世代の子どもを持つ親の友達に言われると「そんなものか」と妙な納得感があったりします。
距離が離れていくほど、子どもも親に話しにくい話題も増え、親も子どもの気持ちが分かり難くなっていくのは必然であり、そういった側面からも理解ある第三者の存在は重要なのです。
近年、なかなか親と子の互いの言葉を通訳してくれる第三者が身近にいないのが、思春期に生じる課題を当事者間で閉じさせてしまう理由なのかもしれません。
子どもの小さいうちから、こういった良き理解者となってくれる第三者を身近に持つことは、親子にとって有意義なことだと思います。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。