子育て・育児

子どもが「自立する」に必要な3つのこと-「過干渉」な親や先生の下で育った子どもの危険

ペンギン

口を空けてエサを待つペンギン

ある小学校での話。

運動会の徒競走で、2等賞になった児童の父親が、「今のはミスジャッジで、我が子が1等賞のはずだ」と、教師にイチャモンを。

ある中学校での話。

暴力やイジメなどではないよくある生徒同士のケンカに、双方の親が介入し、最後は裁判沙汰になった。

ある高校での話。

普通に生活し、普通に友達もいる生徒の修学旅行に、母親が同伴しようとしたものの、教師からどうしても許可を得られなかったので、息子の修学旅行を断念させた。

ある大学での話。

学期末試験の後、職員室は憂鬱な顔の教師で一杯になる。理由を尋ねると、単位を落とした学生の親から、「なんで落としたんだ」と文句の電話がくるのが、珍しくないから。

ある大手企業の人事部の話。

新卒者の採用で、最近、非常に気を使うようになったのが、「不採用通知をもらった学生の親から、クレームが来ないようにすること」らしい。

これらは全て、私の知り合いから聞いた事実です。

前号では、「教育の目的は『子どもを自立した社会人』に成長させることで、そのために家庭、学校、地域の役割は欠かせない。ところが、教育に良好な状況ではない家庭、学校、地域が増えてきているために、自立の道からほど遠い子ども・若者も比例的に増えている。」と言う話をしました。

上述の事例ほどではないにしても、「過干渉」な親の下で育った子どもは、「口を空けてエサを待っているペンギン」や「ひな鳥を怖がるライオン」になってしまいます。

あるいは、習い事や塾をこれでもかというくらいにやらせ、お受験や偏差値が全てみたいな生活を送らされ、サラリーマンよりも過密なスケジュールをこなしている子どもも、自立の術を身に付ける前に疲れ果ててピークアウトしてしまうでしょう。

ネグレクト、虐待、教育格差なども、子どもの自立には悪影響となるでしょうが、紙面の都合上、ここでは割愛します。

自立する先の「就活・仕事」環境

社内会議

一方、子どもが「自立する」先の一つとなる「仕事・会社」の環境はどうでしょうか。

日本の国際競争力が、1990年の1位から2012年は27位に下がっている。アベノミクスに期待はしているものの、日本企業の海外移転は加速する 一方。地方の商店や企業などは、もっと悲惨。楽天やパナソニックのように、大手企業は「外国人」の採用を大幅増。これらから、子どもが就活に一生懸命になっても、「勤める先」が年々減ってきているというのが現状です。

就活で50社に断られ、大学4年生の冬になっても就職先が決まらない、なんていうのは珍しくなくなりました。就職できたとしてもワーキングプアの割合は増えるばかりで、前号でも述べた通り、仕事や就職を理由に自殺する若者が倍増、三倍増しています。また、あるカウンセラーから、「お前は人間力が欠けている!」と人格否定され、ノイローゼになる新入社員が驚くほど増えていると聞きました。

例えば、こんな感じだそうです。

栄えて、就職に成功。しかしいざ入社したら、「お前は何がやりたいんだ」という問いを、上司から投げかけられる。子ども時代に、親や先生から受けていた「言われた通りにやっていればいいんだよ」という指導が、入社したら一転して会社から「自分で決めろ」に変わる。

更に、「何がやりたいか言えず、自分で決めることができない」でとまどっていたら、「お前には”人間力”が欠けている」と非難を浴びせられる。こんな非難を浴びせられるのは本人が悪いんだ、 ということになりますが、そうさせてしまったのは、彼や彼女が子ども時代の大人達であることは、言うまでもありません。

子どもが「自立する」には何が必要か?

繰り返しますが、教育の目的は「子どもが自立した社会人」になることです。言い換えると、就職の環境が厳しくなっても、仕事がグローバル化しても、子どもが経済的・精神的・社会的に「自立」できるように成長することが、子ども教育の目的です。

では、子どもが「自立する」には何が必要でしょうか?

私は、自己肯定感、達成意欲、自己効力感の3つだと思います。

自己肯定感、達成意欲、自己効力感

自己肯定感は、「あなたが産まれてよかった」と度々、親から聞くことに始まり、「~~はダメでしょ」ではなく「~~したほうがいいよ」という指導を受け、勉強やスポーツ以外の分野でも「いいところ」を認めてあげることから、養われるものです。

自己効力感とは、「やればできるんだ!」、「自分は価値ある存在なんだ!」と子ども自身が思うことから生まれてくるわけですから、「やり遂げる」経験、「認められる」経験などが必要となります。

さてもう一つ残った「達成意欲」ですが、実はこれが一番重要だと思います。

達成意欲が無いと、いくら自己肯定感をもっていても成長しません。また、自己効力感を生むような経験をすることも、ほとんど無いでしょう。ところが、今の教育環境だけでは、子どもの達成意欲を高めることは難しいのではと、危惧しています。

では、子どもに達成意欲を身に付けさせるには、どのような教育機会を子どもに与えればいいでしょうか?一言で言うと、「好きなこと」を続けさせ、「得意なこと」を優先させ、「役に立つ」経験をさせるの3つです。

各々についての詳しいことと、この3つを同時に得られる機会は何か、については次号でお話します。

Author:川島高之
1964年生まれ、1987年:慶応大学卒、三井物産に入社、2012年:系列上場会社の社長就任、「イクボス式経営」で利益8割増、時価総額2倍、残業1/4を達成。2016年:社長退任、フリーランサーとして独立。一方、小中学校のPTA会長(元)、少年野球コーチ、イクメンNPO「ファザーリング・ジャパン」理事、子ども教育NPO「コヂカラ・ニッポン」代表でもある。
子育てや家事(ライフ)、商社勤務や会社社長(ビジネス)、PTA会長やNPO代表(ソーシャル)という3つの経験を融合させた講演が年間300回以上。
NHK「クローズアップ現代」では「元祖イクボス」として特集され、AERA「日本を突破する100人」に選出、日経、朝日、読売、フジTVなど多数メディアに。
著書:いつまでも会社があると思うなよ!職場のムダ取り教科書
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