高校中退

高校中退後に就職して働きたいと考えているアナタへ-高校中退者が採用され難い理由と就職活動の留意点とは?

就職活動

高校中退者・不登校などのサポートを始めて5年。様々な状況の方々と出会いながら学習支援(TOB塾)としての中身は、少しずつ整ってきています。一方で「仕事を紹介して欲しい」という声をもらうことがあり、新たに就職支援(TOBIT)の取り組みを少しずつ進めています。

これまでに業種に偏りがありつつも200社ほど企業を訪問し、そこから見えてきた「高校中退後からの就職」を考えたいと思います。

キーは、「高校中退」のイメージを払拭できるかどうか

まずは、企業目線の一般的な採用活動について考えてみたいと思います。もし、あなたが会社の社長さんで、経験の浅い若者や未経験の人を採用しようと思った時、どんな人を採用したいと思うでしょうか?挙げればきりがないと思いますが、どこの企業でも下記の点は共通して必要としている要素です。

1.基礎的な社会性がある(コミュニケーション力)
2.お仕事できる能力がある(頭の良さや資格)
3.長く働いてくれる(困難を乗り越える気力)

そして、これはそのまま高校中退者が採用され難い理由にもなります。なぜなら、一般的な「高校中退」のイメージでは、このようになります。

1.基礎的な社会性がある(コミュニケーション力)
→集団生活ができなさそう(人間関係に難がありそう)

2.お仕事できる能力がある(頭の良さや資格)
→高校すら出ていない(学力がなさそう)

3.長く働いてくれる(困難を乗り越える気力)
→すでに辞めた事実がある

以上のようにどの項目も否定されやすいです。それをクリアしていることが伝われば、採用される可能性は高まります。問題は、それをどのように証明するかということです。昨今、企業の人材不足が問題となっていますが、従来より就職が難しいとされてきた人が容易に就職できる状況になったということではありません。

企業はより効率よく条件に合う人を探そうとしている

就職活動

就職活動をしている人は、「一人ひとりのことを丁寧に見てくれればいいじゃないか」と思うかもしれません。そして、企業側も能力も人間性もじっくり見ながら本当に自社に合う人を採用したい気持ちもあります。

ただ、採用に莫大な時間をかけている余裕があるところばかりではありません。より効率よく条件に合う人を探そうとしています。一般的に「学歴」や「資格」は、そのための最も分かりやすい条件でもあるのです。

もちろん、この考え方は善良な企業の考え方です。「書類や面接でじっくり見るより、大量に人を採用して、残る人だけ残ればいい」「残れない人のことなどどうでもいい」というような採用活動をしている企業も中にはあります。

この採用方法だと、上記の条件の「1.基礎的な社会性がある」だけで採用されますので、中退であろうとなかろうと比較的容易に採用されるでしょう。そして、入社後、相当なタフさを求められることになるので、この道を進むにはかなりの覚悟が必要です。

第一のハードルは「学歴」よりも「年齢」

「高校中退」という学歴の問題ではなく、単純に年齢が18歳未満だと厳しいケースが圧倒的に多いです。それは、多くの企業にとって、「そもそも採用経験がない」「運転免許はほしい」という分かりやすい理由もありますが、以下の2点について懸念していることが多いからです。

若さゆえの“ノリ”

若者のコミュニティでは、“ノリ”を最重視したコミュニケーションが好まれます。その場の感情が直結するこのコミュニケーション手法は、どうしようもない困難を背景に抱える人たちとっては一種の防衛でもあると感じています。

“ノリ”のコミュニケーションでは“着実な”仕事とはかみ合いません。“着実な”コミュニケーションのためには、論理的思考が必要なのですが、勉強の機会に恵まれていない場合、このような抽象化のチャネルが育ちにくいのです。

若さゆえの“自己中心”

若い人は自分中心になりがちです。もちろん、プライベートでは良いでしょうが、仕事となると相手を中心に考えることも必要になります。自分のために生き、他人との接触によって自分を知っていくものです。しかし、今日、他人との接触は、“ノリ”で最小限にとどめられるため、自己中心的な考えからなかなか脱却できず、他人の視点をイメージしにくいように思えます。

就職活動

これらは、中卒就職が最も離職率の高い理由とも通じるもので、だからこそ統計的にもすぐに辞めてしまうと数字で示されている若い人は敬遠されやすい状況があります。

結果、自分の“ノリ”で生きていくことになるため、1つのことを続けることも苦手なままで、目標を据えることも難しく、資格や実績などが手に入らないまま、現場などの目に見える分かりやすい職を転々とする日々が続いてしまいます。

高校中退者が就職できる企業はあるのか?

では、高校中退者が就職するためにはどうすれば良いのでしょうか?ここまでは不利な面を中心にお伝えしてきましたが、有利な面もあります。

例えば、以下の2点が挙げられます。

①高卒就職のように一人一社制に縛られない(いろんな会社を見られる・就職のプロに助けを求めても良い)

②新卒一括採用の枠組みではない(膨大な競争相手がいるわけではない)

これを最大限活かし、さらに自分自身に本当に働く気持ちがあれば、就職の道は見えてきます。参考までに、これまで飛び込みで200社回った感覚では、高校中退でも就職できる可能性のある企業は全体の約10%(20社程度)あり、以下はその内訳です。

※飛び込みでの企業訪問であり、お話ができるハードルは高い状況での割合です。

・若者の成長を願って協力的(約2.5%)
・エージェントの推薦があるなら面接はしてくれる(約2.5%)
・別の資格や経験があれば来てほしい(約2.5%)
・「基礎的な社会性がある(コミュニケーション力)」をクリアしてたら歓迎(約2.5%)

当団体のような就職活動を支援してくれるエージェントを利用すると、「中退でも就職可能性はあるか?」「条件は何か?」「条件を満たしてない場合はバイトからでも良いか?」など、それぞれの企業が面接してくれるまでのハードルを事前に確認してもらうことができます。

また、ちゃんとした企業であればあるほど、入社に当たっての制度や手続きなども色々ありますので、就職活動をするにあたって相談できる大人がいるということは重要です。無料で相談できるところも多いので、近くに利用できる就職紹介があればぜひとも利用してみてください。

就職面接

就職活動と働くうえでの留意点

高校中退後、これから就職活動をして働きたいと考えている方は、以下の点は確認しておいましょう。

●高校卒業の条件は、高卒認定で代用ができる場合が多い。

求人情報で学歴について高卒以上としているところに、「高卒認定でもいいですか?」と聞いたところ、「高卒認定で良い」と返答を頂いてところがほとんどでした。まずは、問い合わせて確認してみることが大切です。実際に面接までいけたら、感謝の気持ちを伝えましょう。

●採用面接は、一緒に働く仲間探しの場

就職活動は、恋愛に例えられることもよくあります。「年齢」のハードルと合わせて考えると分かりやすいですが、若い時は付き合ったり別れたりのサイクルが早いものです。恋愛も仕事も同じです。相手の良いところを見つけるようにしましょう。

●100社あれば採用方針は100通り

世の中に色々な人がいるように、色々な会社があります。人との良い出会いが難しいように、良い仕事と巡り合うことも難しいことです。しかし、いろんな会社の中にはあなたを見てくれる会社も必ず存在します。ただ、あなた自身も会社に見てもらえる努力は必要です。

●理想の状態には一歩一歩近づいていくもの。

「高い給与」がもらえる「正社員」など、仕事に求めるものが一気に全て手に入ることはほとんどありません。アルバイトなどで様子をみながら始めて、働く側と雇う側、お互いの意向を聞きながら社員登用される道もたくさんあります。人生には修業期間も必要です。

●自分の理想通り、何の不満もない職場など存在しない。

不満や困難を自分自身の成長の種と思えるかどうかは大切です。人間は「やらない理由」を探すのが得意なものです。「やらない理由」に振り回されないようにしてください。ただし、明らかに異常、病んでいくと感じる職場はすぐに辞めて次を探しましょう。

ちゃんと育てようとしてくれる企業もあります。人生を進めてみて、そこで起こることや湧いてくる感情をしっかりと受け止め考える。それを繰り返していくと、私というもの、そしてその人生が少しずつ形になっていきます。応援しています。

Author:山口真史
1981年奈良県生まれ。一般社団法人new-look代表理事。関西学院大学大学院 文学研究科 総合心理科学専攻 学校教育学領域 修了。「型にはまらないで考えよう。常識を打ち破ろう(Think Outside theBox)」を掲げる、高校中退・不登校向けの個別学習サービス、TOB塾代表。 2歳で父を大韓航空機撃墜事件で亡くし、母子家庭で育つ。奈良工業高専の中退経験と、中学・高校の教員経験(担任・学年主任・人権教育主任など)のほか、大手人材紹介会社やNPO法人での勤務経験を持つ。さまざまな仕事や人との出会いの中で「覚悟を決めればどの道も正解」・「もっと自由に生きていい」ことを知り、高校中退からの生き方にスポットをあてるため、new-lookを設立した。
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