2018年3月18日にNPO法人ETIC.と文部科学省若手職員有志が事務局を担う「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム:SCHOOL PLATFORM」(以下、SP)の設立総会が永田町GRIDで行われ、官民問わずおよそ170名の教育関係者等が集まりました。
総会は二部制で行われ、第一部では設立趣旨の説明や発起人・アドバイザーの紹介があり、第二部では、「これからの時代の教員像」や「校長による学校経営改革」、「産学官連携の在り方~非認知的スキルの測定とEBPM推進に向けて~」など、テーマごとに分かれての分科会が行われました。
本取り組みは、教育長・校長を中心とする学校現場や国・地方公共団体の教育関係者、産業界、学術界が加わった有志のネットワークです。より良い教育の実現に向けた試行的な取組みを実践し、その成果を全国の教育関係者に共有・展開することを目指しています。
行政等の事業という形ではなく、既存の枠組みを超えて現場をつなぐ、新しい官民連携の有志のネットワークとして、注目を集めています。
今回の設立総会では、先駆的な取り組みを実践している発起人の教育長4名(代理人を含む)と3名の校長、アドバイザーとして2名の大学教員が登壇しました。
(株)リクルート出身で東京都杉並区立和田中学校長や佐賀県武雄市教育監などを務めた代田昭久氏、公立中学校で外部企業や研究者、大学生などを巻き込んだ「オープンイノベーション」にも積極的に取り組んでいる工藤勇一氏などが参画しています。
<発起人>
○教育長
東京都杉並区教育長 井出隆安 氏
※教育長代理:東京都杉並区立済美教育センター主任研究員 山口裕也 氏(写真下段・左)
長野県飯田市教育長 代田昭久 氏(写真上段・左)
埼玉県戸田市教育長 戸ヶ﨑勤 氏(写真上段・中央)
広島県福山市教育長 三好雅章 氏(写真上段・右)
○校長
東京都千代田区立麹町中学校校長 工藤勇一 氏(写真中段・左)
神奈川県横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校校長 栗原峰夫 氏(写真中段・中央)
東京都足立区立皿沼小学校校長 土肥和久 氏(写真中段・右)
<アドバイザー>
熊本大学教育学部准教授 苫野一徳 氏(写真下段・中央)
千葉大学教育学部教授 藤川大祐 氏
福井大学教育学部教授 松木健一 氏(写真下段・右)
SCHOOL PLATFORMが目指すもの
学校現場における様々な問題が指摘される中、全国各地では問題解決に向けた新しい取り組みが行われています。子どもたちにとってより良い教育機会を提供していきたいという志は、多くの教育関係者が共有しているものの「では、どうしたらできるのか?」という手段・方法については、多くの実践と検証が必要です。
これは、一学校や一地域でできるものでありません。「このままではいけない」と既存の枠組みにとらわれない新たなチャレンジが各地の教育現場ではじまっています。ある地域での問題は、すでに取り組んでいる他の地域での実践から得られる知見から解決することができるかもしれません。
新たなチャレンジの点と点を結び、線にしていくことでより大きな波及効果が生まれます。good practice(優れた実践)がスーパー先生による「○○だからできる」という話で終わらないように、学術的な検証や体系化が重要になります。そのため、SPでは、憲章の中で、下記のような点に重きを置いています。
<憲章:SPが尊重する価値>
1.チャレンジする実践者の集まりであること
様々な立場の当事者が協働し、より良い教育の実現に向け、現場における新たなチャレンジに取り組むこと。
2.真の協働者であること
評論家になることなく、様々な立場の当事者が対等な関係を築き、互いの取組について、知り、意見し合い、高め合う関係性の構築を含めた協働がなされること。
3.各種取組の見える化や積極的な情報発信を行う場であること
参加者一人一人による積極的な情報発信を通じて、更なる実践の誘発につなげること。その際、エビデンスが伴う情報発信がより望ましいことから、実践の段階で産学官の協働により可能な限り成果の見える化やEBPM推進の基盤を目指すこと。
※EBPM(Evidence-Based Policy Making):証拠に基づく政策立案
4.開かれた、ワクワクする場であること
地域や世代にとらわれず、幅広く社会に開かれたプラットフォームとして、参加者が新たな出会いやチャレンジに胸を躍らせることができるような場を形成すること。
「目的」から考えて、「手段」を再構築する
「なぜ、学校教育は変わらないのか?」という話について、政治や文部科学省、中央教育審議会の話を指摘する人は多いのですが、学習指導要領に沿っている必要はあるものの、実際の内容や方法については、各自治体の教育長や各学校の校長の判断や裁量に任せられている部分も大きいです。
一方で、行政が前例主義的であったり、教育現場で経験則的な判断が重視され、数年での異動もある状況の中で、新しい試みを行い難い状況でもあったことは、分科会の話の中でも指摘されていました。
テーマの異なる各分科会の中で、共通して触れられていたのは、改めて「目的」から考えることの重要性です。
毎年、当たり前のように同様の授業や行事を行っている中で、手段が目的化してしまっており、抜本的な見直しや改善が進み難い状況となってしまっています。宿題も運動会もあくまでも手段であって、目的ではないということです。社会で活躍する生徒を育てるという目的に対して、ゼロベースで手段を考え直す必要があると強調されていました。
また、学校で様々に行われている調査に関しても、「ビックデータとして多角的に解析していくことは有益ですが、それが教育現場で活きるものでなければ意味がなく、はじめからそれを意図した調査設計が必要だ」という話もされていました。
教員免許更新講習について、目的から考えれば、日常の学校現場から切り離して大学で学ぶのではなく、大学と連携して日常の学校現場に結びつけて学べた方が良いという話もありました。
教育の目的や理念は大同小異です。一方で、教育は「一生懸命に頑張っていること」が評価され、「どのような教育手段・方法が最も効果的なのか?」について考えることは、タブー視されてきた側面があります。
今こそ、このタブーと向き合い、教育を次のステージへ導く取り組みが必要とされており、SPがその最前線を支えていく場となっていくことが期待されています。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。