親から子へ「貧困の連鎖」を生じさせないために重要なのは、「教育」だと言われています。教育機会に恵まれなかったことで低学力・低学歴になってしまった子どもは、大きくなったときに所得の低い職業につかざるを得なくなってしまうからです。「日本では、小学校や中学校など学校教育も整えられており、子どもたちの教育機会は平等にあるのでは?」と考えられている方も多いと思います。
しかしながら、現実的には、塾・予備校や習い事などの学校外での学習機会において、大きな差が生じています。塾・予備校や習い事などに行くためには、家庭での費用負担が必要となり、親の所得や経済力によってその機会に差が生まれます。実際に親の年収が低いと、学校外教育支出も低くなる傾向が明らかになっています。
高校受験や大学受験のために、塾・予備校に通った、または通わせた経験のある方であれば、毎月の月謝に夏季・冬季講習とまとまった費用が必要になったことがあるのではないでしょうか?
経済的な理由で塾に通えない中学3年生の支援の募集を開始
(左・公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介代表/中央・渋谷区の長谷部健区長/右・NPO法人キズキの安田祐輔代表)
こういった学校外での教育格差の問題をなくすために、経済的な理由で塾に通えない高校受験生・中学3年生に対して、寄付金を原資にしたクーポンを提供する試みがスタートしました。
「親の所得格差=子どもの教育格差」とならないようにと、趣旨に賛同した団体や企業が協働で「スタディクーポンイニシアティブ」という取組みを立ち上げました。(プロジェクト運営:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン、NPO法人キズキ/パートナー:新公益連盟、NPO法人ETIC./サポーター:スマートニュース株式会社、株式会社Campfire)「教育格差」の問題の解決を目指して、行政・NPO・企業・市民などの多様なセクターが連携して取り組む全国初のモデルとなります。
第一弾のプロジェクトとして渋谷区と連携し、渋谷区内の低所得世帯の高校受験生・中学3年生に対して、学習塾などで利用できる「スタディクーポン」を提供するため、2017年10月12日より寄付金の募集をはじめ、1,000万円を目標に個人や企業から寄付を募ります。2018年4月~2019年3月の期間で使用できる「スタディクーポン」を、一人あたり20万円分を提供し、33名程度(寄付金額によって変動)を支援する予定です。
(動画:「スタディクーポン・イニシアティブ×渋谷区」合同記者会見の様子)
クーポンという形で、使途限定・幅広い選択が可能に
今回のプロジェクトでは、クーポンという形で提供されることにより、教育サービスに限定した形で使われ、寄付が確実に子どもの教育のために使われます。クーポンは、幅広い事業者で利用可能となり、子ども自身が選択できます。また、大学生が定期的に子どもたちと面談し、子どもたちに寄り添い、クーポンの利用をサポートしていくことになっています。
今回の寄付は、プロジェクトの事務局を担っている公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが受け入れ、「寄附金控除」「税額控除」の対象となります。集まった寄付は、65%をクーポン費に使い、残り35%を学生ボランティアによるサポートや子どもの募集等の運営費用に使用されます。
10月12日には、合同記者会見が行われ、今回のプロジェクトに関わる行政・NPO・企業が集まり、スタディクーポンに関する説明が行われました。
「スタディクーポンイニシアティブ」代表の今井悠介氏は、「本プロジェクトを通じて、日本で親の所得が子どもの教育格差にならないようにしていきたい。」と語りました。または、渋谷区の長谷部区長は、「渋谷区内にも就学援助を受ける世帯も公立学校で3割程度いる。親の所得によって、自分の夢を諦めることはさけて欲しい。そうならないようにサポートしていきたい。」と語りました。
なお、本プロジェクトに関する問い合わせは、下記の事務局で受付けています。
スタディクーポン・イニシアティブ事務局(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン内)
TEL:03-3681-2258
Email:studycoupon@cfc.or.jp
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。