厚生労働省によれば、全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数は、児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べ、平成26年度は、88,931件で7.6倍に増加しています。これは全国均一ではなく、都道府県ごとにも地域間での差があります。(全国都道府県・2014年児童虐待相談対応件数)
今回の記事では、東京都児童相談所が公表している資料から東京都23区内の児童虐待の状況について、ランキング形式で調べました。23区内でどこの区の虐待件数が多く、5年前と比べてどこの区の児童虐待件数が増加しているのでしょうか?児童虐待が急増する区では、5年間で4倍以上に増加していました。
23区内を管轄する6つの児童相談所
東京都児童相談所が毎年公表している事業概要では、都内をいくつかのエリアに分け、11カ所の児童相談所の相談の内訳についてデータを掲載しています。なお、23区内では、6つの児童相談所があり、下記のように管轄エリアが分けられています。
・児童相談センター:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区、練馬区
・江東児童相談所:墨田区、江東区、江戸川区
・品川児童相談所:品川区、目黒区、大田区
・世田谷児童相談所:世田谷区
・杉並児童相談所:中野区、杉並区
・北児童相談所:北区、荒川区、板橋区
・足立児童相談所:足立区、葛飾区
各区の2014年度児童虐待相談対応の状況
児童相談所では、養護相談(虐待・養育困難など)、保健相談(健康管理など)、障害相談(身体・発達障害など)、非行相談、育成相談(育児・不登校など)、その他の相談の6種類の相談業務を行っています。
全て種類の相談件数のデータについては、区ごとに公表されていますが、虐待に特化したデータは、児童相談所ごとにしかわかりません。
児童相談所ごとの相談対応件数のうち、虐待相談対応に関する割合から各区の虐待相談対応件数を推定しました。以下の数値・図表に関しては、あくまでも計算上、算出された推定値となります。
区ごとに18歳未満の人口は異なりますので、18歳未満人口1,000人あたり対応件数も算定しました。件数が多いほど割合が高いことを示しています。(※東京都総務局統計部人口統計課「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」平成27年1月1日現在による)
「児童虐待相談対応件数」から見ると、18歳未満の人口の多い区が上位に入ります。上位区となっている足立区、江戸川区、世田谷区、練馬区などは、10万人前後の子ども達が在住しています。18歳未満人口1,000人あたりの児童虐待相談対応件数から見ると地域間の差がより明確にわかります。
5年間(2009年度・2014年度)の児童虐待相談対応件数の変化
2009年度と2014年度の児童虐待対応件数を比較し、近年、どこの区の児童虐待相談対応が増えているのでしょうか?下記の図表では、件数と増加率(倍)を示しています。
2009年度と2014年度を比較すると、23区内ほぼすべての区で2倍以上の相談対応件数となっており、全体としても増加が著しいことがよくわかります。増加件数だけでみると、そもそもの件数が多い区が上位になっていますが、変動が他区と比べて少ない傾向が見てとれます。しかしながら、増加率で見ると上位にくる区が様変わりし、近年、急増している地域がわかります。
児童虐待は、家庭の経済状況、夫婦関係の不仲、養育のサポートが得られる環境かなど、いくつかの複合的な原因から生じていると言われています。一概になぜ、これらの区で児童虐待が増加しているか説明することは難しいのですが、従来から虐待の多かった地域に加え、新たに急増している地域が生まれてきていることは、東京都23区内の児童虐待数をさらに押し上げる理由になっています。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。