カナダ

「子どもの貧困」問題の解決を目指すカナダの若き首相-家庭の収入に応じて年間数十万円の児童手当の支給を開始

canada child benefit

日本国内の「子どもの貧困」問題の存在について、メディアなどで多く報じられるようになり、以前よりも多くの方が認知するようになってきました。そして、その解決に向けて法案も成立し、官民問わず実態調査や施策が検討されています。

「子どもの貧困」問題は、日本だけの問題ではありません。その形態は様々ですが同様の問題を抱えている国は、他にも多く存在しています。

今回は、カナダで留学支援と教育システムの研究・広報活動を行っている細越美和さんからカナダの「子どもの貧困」問題の現状と対策についてお伺いしました。

カナダの「子どもの貧困」問題の現状

世界の人が集まって暮らす国として有名なカナダですが、「子どもの貧困」は、とても重要な問題です。

貧困で苦しむ子どもは、18歳未満でカナダ全土において約546,000人いると言われ、特にファーストネーションと呼ばれる原住民の子どもの約40%、ひとり親の約21%が貧困状態だと言われています。十分な食事や教育がないことは、子どもの成長にも大きく影響します。現在、カナダがどのように「子どもの貧困」問題に取り組んでいるかご紹介します。

長年、カナダ政府は「子どもの貧困」を解消しようと政策を打ち出してはきましたが、実行まで行き着いてないのが実態でした。

しかし、2015年にカナダの若くして首相となったジャスティン・トルドー首相が問題解決に向けて大きく政策を前進させました。ジャスティン・トルドー首相は、2015年に43歳の若さで第29代カナダ首相となりました。1982年に国籍、性別、身体、年齢で差別してはいないという法律を作り、カナダの英雄とされたピアー・トルドー元首相の長男です。

首相に就任後、内閣も男女同じ15人ずつにし、様々な人種の政治家を入れ、多国籍文化を尊重し、教育と福祉は万人に平等な社会を象徴するカナダらしい内閣を作りました。

「子どもの貧困」問題の解決に向けて、”Canada Child Benefit”プログラムがスタート!

トルドー首相は、早速、「子どもの貧困」対策を最重要視して、1年で300,000人の子どもを貧困から助けると約束し、”Canada Child Benefit”プログラムを2016年7月20日にスタートさせました。昨年首相になったばかりで、すぐにこういった政策を打ち出して高く評価されています。

このプログラムでは、年収$30,000の家庭で、6歳未満の子ども一人あたり年$6,400、6歳以上17歳以下の子ども一人あたり年$5,400を最大で手当を支給します。障がいのある子どもに対しては、一人あたり$2,730の税額控除が追加されます。

1カナダドルを80円で換算すると、年収240万円の家庭で6歳未満の子どもで年512,000円・月42,666円、6歳以上17歳以下の子どもで年間432,000円・月36,000円が支給されることになります。

幼稚園から高校まで学費は無料で、90%以上が公立へ通う!

政府からの手当は、すぐに役立つ政策としては一番だと思いますが、貧困状態にある子ども達の成長に欠かせないのが教育です。

以前から何回かにわたってカナダの教育制度についてお話をしてきましたが、カナダでは90%以上の人が小学校から高校まで公立に通います。その教育の水準も大変に高く、子どもの将来にとても大事だと思います。(「カナダ」に関する記事の一覧)

カナダの小学校では様々な五感を使う勉強をすることで、脳や体を育てます。中学校では自尊心を高めるために人間教育と先生が学生を認めて自信をつけることに重点を置いています。

高校では、社会に出る準備をするところで高校1年から人生設計・ライフプランのクラスがあり、キャリア相談のカウンセラーも常駐していて、自分の好きなことや能力に合った職業を選んでいきます。物理を勉強するのにリニアモータカーやロボットを作ったり、生物を勉強するのに畑を作ったりするので、かなり実践的ですし、内容も深い勉強をすることができます。

学費は、公立の幼稚園から高校までは無料です。そのため、家庭の収入に関係なく、質の高い教育が受けられます。大学も国の教育ローン制度が充実しているので生活費も学費も国から借りることができます。勉強が苦手な学生さんには、学校で補習を受けることができます。

家庭で問題がある場合は、教育委員会に常駐しているユースワーカー(青少年ケースワーカー)やソーシャルワーカーが地域の機関とつながって、家族に必要なサポートや支援を行政とやっていきます。

「食」を支えるフードバンク!寄付をするのも文化の一つに!

「子どもの貧困」問題で、とても大事なのが食事面でのサポートです。しっかりとした食事を食べることができなければ、子どもを健全に成長させることはできません。

日本でも活動が広がっていますが、カナダにも非営利団体のフードバンクがあり、食事に困っている人が無料で食料を調達することができます。冷凍食品や加工食品だけでなく地域産業の支援もあって、健康的な食材も多く入手することができます。ほとんどボランテイアで成り立っており、多くの巨大スーパーが協賛することで、たくさんの食材を調達しています。

フードバンクでは、食材を提供するだけでなく、子どもや保護者に栄養や料理のスキルを教えるクラスを開講したり、コミュニテイーキッチンや、野菜庭園を運営したり、仕事探しのお手伝いや、子供の託児所を運営しているところもあります。毎月850,000人の人が利用しています。

「食」を支えるフードバンク

喜びを分かち合うことの素晴らしさもとても大切な学びとしてカナダでは毎年クリスマスになるとみんなフードバンクに寄付をすることも文化の一つとなっています。 バンクーバーにある私達のオフィスも細やかではありますが、毎年、寄付をさせて頂き、多くの日本人留学生もボランテイア活動を通じて助け合いの心を学んでいます。

首相が変わって、社会政策が一気に前進しているように思えるカナダですが、まだまだ問題は深刻です。取り組みは、始まったばかりです。「貧困の連鎖」は、個人レベルで変えられることではないので、 国家、地域ぐるみの政策が必要だと言われています。実際にカナダでも女性と男性の収入格差も大きな問題となっています。

カナダでは、保護者だけでなく親戚や地域で子どもを支援したり、保育所の増設や、女性の社会参加、自立できるように教育や、地域の雇用を生み出すことも大事だとされています。ただし、すでに平等な教育制度があるので、政策の建て方次第ではかなり前進するように思います。今後の取り組みがとても楽しみです。また有益な情報がありましたら皆様にお伝えしたいと思います。

Author:細越美和
Westcoast International Education Consulting in Canada Ltd. 代表。
2004年にカナダ・バンクーバーにカナダ留学を支援するウエストコーストインターナショナルを設立。質の高い英語教育、多文化理解、才能教育に力を入れ、これまでに4,000人以上の留学生をサポート。15年間に渡り、発達障害や視覚障害を持つ留学生もカナダのインクルーシブな教育環境で支援経験あり。
さらに、カナダの教育システムの研究・広報活動として、カナダ州立教育機関の正式な日本窓口としてカナダと日本の教育機関の提携業務や日本の教育者向けのカナダ教育機関見学ツアー、カナダ大使館フェアでの州立教育機関のサポート等を行っている。

カナダへの海外留学や教育視察ならウエストコーストインターナショナル

ウエストコーストインターナショナルは、カナダ留学専門のエージェントです。州立大学・カレッジ留学とバンクーバーの高校留学ではワンランク上の実績。大学休学認定留学や有給インターンシップ、ワーホリを無料サポート。ビザや語学留学についてはウエストコーストへ!日本とカナダで出発前から留学中まで安心です。

ウエストコーストは、「国際教育を通じて、将来的に国際的な視野を持ち、日本の地域社会の発展に貢献できる温かい心を持った日本人の育成」をミッションとして、日本とカナダの教育の架け橋になれるよう、カナダ留学に興味をお持ちの方のサポートとともに、日本の教育機関や教育者とカナダの教育機関・教育者との交流を推進しています。カナダの教育機関との提携のサポート、カナダの教育を現地で体感するカナダ教育機関視察ツアーも実施しています。

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