メンタルヘルス

新型コロナによる休園・休校や外出自粛が与える親子への影響とは?-親子ともに急激な環境変化から強いストレスを抱えやすい状況に

自宅学習

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、3月初めより全国一斉休校や外出自粛などの要請が次々に出され、4月7日には「緊急事態宣言」も発令されました。

外出したくてもできず、親も子もストレスを抱えやすい今の状況。それが長引くほど、様々な問題が発生し、さらに深刻化する恐れもあります。

2020年3月に実施された2つの緊急調査などを通じて、家庭内でどのような問題が生じるのか、また、どのような支援先や相談先があるのか、本記事を通して伝えていきたいと思います。

学校が休みになって、子どもが困っていることは?

初めに、小学生~18歳くらいまでの子どもを対象に実施した「『子どもの声・気持ちを聞かせてください!』2020年春・緊急子どもアンケート結果」(主催:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)より、子どもたちの状況を見ていきます。

有効回答数は961件で、回答している子どもを学年別に見ると、小1~小3が46%、小4~小6が24%、中1~中3が16%、それ以上の年齢が13%と、やや低学年の回答が多いです。

「学校が休みになってから、何かこまっていること、心配なことや気になっていることがあれば教えてください。」という質問に対して、集計や分析の結果、回答の割合が多かったのは以下の通りです。

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン:「子どもの声・気持ちを聞かせてください!」2020年春・緊急子どもアンケート結果(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン:「子どもの声・気持ちを聞かせてください!」2020年春・緊急子どもアンケート結果より)

「日常生活が送れていない・外出できない」について、具体的には以下のような回答がありました。(一部抜粋)

・外に出られないためストレスが溜まっている。テレビ、ゲーム以外やることがない。
・毎日学童が疲れる。
・外に出て遊ぶとお年寄りに怒られる。
・子供達だけで集まって、少し話し込んでいるだけで、パトロールの方に注意され、結局自宅で過ごすしかない状況です。

「人に会えない・会いたい」という回答については、具体的には以下のような回答がありました。(一部抜粋)

・みんなといつ会えるのか心配です。
・学童に通っていないと友達と学校がないから会えなくて悲しい。
・月に1度でもいいから友達と遊べる機会が欲しい。

これらの回答により、外に出られないことや、友達に会えないことのストレスを感じている傾向があることがわかります。また、ほんの少し外に出るだけで、周囲の大人から注意を促されてしまう状況下にあり、気をゆるめることができない様子も伺えます。

臨時休校・休園の影響で親が困っていること

次に、保護者を対象に実施した「一斉休校に関する緊急全国アンケート」(主催:認定NPO法人フローレンス)より、保護者の状況を見ていきます。

一斉休校措置に伴い、お子さんの通う学校が休校になった全国の保護者(保育園や幼稚園が休園になった保護者も含む)から、8,339件もの有効回答数を得ている調査です。

「臨時休校・休園の影響として困っていること、心配なこと」の質問に対して、集計や分析の結果、回答の割合が多かったのは以下の通りです。

認定NPO法人フローレンス「一斉休校に関する緊急全国アンケート」(認定NPO法人フローレンス「一斉休校に関する緊急全国アンケート」)

「運動不足」や「子どものストレス・心のケア」が上位にあがっており、子どもの心身面の成長を心配する保護者の姿がうかがえました。

「特に困っていること・心配なことについて、その理由や具体的なエピソードを教えてください」という質問に対しての、具体的には以下のような回答がありました。

・子供のストレスと運動不足が気になります。これまでなかった些細なことで怒ることがあり、心配です。子供の心の声を聞いてあげられる親以外の存在が欲しいです。
・環境の変化についていけず、元々あったパニック障害が余計にひどくなりました。
・家庭が荒んで、こどもをかなり強く怒鳴りつけてしまいました。あと少しで手が出るところでした。この一線を超えてしまう親もいるのではないかと思い戦慄しました。
・全てがストレスだけど、環境が変わるのが1番のストレスです。今回の休校で虐待しそうになる精神状態ギリギリの人は増えると思います。

親自身の仕事環境なども大きく変化していることから、ストレスを感じている子どもに対して丁寧な関わりをすることが難しい人もおり、その結果として、子どもに対して手が出てしまいかねない状況が、浮かび上がってきました。

ユニセフも警鐘を鳴らしている

新型コロナウイルスの世界中での感染拡大を受けて、ユニセフ(国連児童基金)は「子どもが直面するリスクと行動指針を示した一連のガイダンス」を発表しました。

このガイダンスは、ユニセフと人道行動における子どもの保護のためのアライアンス(Alliance for Child Protection in Humanitarian Action)が共同で発表したものです。

以下は、声明文の一部引用です。(新型肺炎 虐待など子どもに及び得るリスクユニセフ、共同でガイダンス発表

「新型コロナウイルス(COVID-19)流行への対策によって、世界の何億人もの子どもたちは、虐待やジェンダーに基づく暴力、搾取、社会的排除、保護者の同伴がないなど、増大する安全や健康面の脅威に直面します。

(中略)

COVID-19によって、数カ月の間に世界中の子どもと家族の生活は一変しました。休校や移動制限により、子どもたちの日常生活と彼らを支えるシステムが制限されています。また、保護者には、仕事ができないという新たなストレスが加わっています。

COVID-19に関連し、暴力や心理社会的苦痛に対しより脆弱になっている子どももいます。また、女性と女の子特有のニーズや立場の弱さへの考慮を欠いた措置によって、性的搾取、虐待、児童婚のリスクが高まる可能性もあります。」

夫婦喧嘩と子ども

より重点的な支援が必要な家庭もある

厚生労働省から出されている「虐待予防の手引き」の中の「発生予防」のページでは、「より子ども虐待が発生しやすい家庭環境にいる子どもやその保護者に対する支援を充実させていくことも重要である。」とし、子ども側のリスク要因として「乳児期の子ども、未熟児、障害児、何らかの育てにくさを持っている子ども等である。」と記されています。

現在の状況について、普段から乳幼児期の子どもと関わっている保育士の方、発達障害について知見がある臨床心理士の方にお話を伺いました。

都内保育園に勤務する保育士の方はこう述べています。

「初めてのお子さんを育てている方、パートナーの協力を得られずに一人で抱えてしまっている方、年齢の幼い兄弟姉妹を抱えている方などが特に心配です。兄弟姉妹でも、上が小学生以上であればまだいいのですが、どちらも幼いと絶えず目が離せない状況だと思います。今はITツールが充実しているので、うまく利用して、外とつながっていけるといいのかな、と感じます」(保育士・女性)

続いて、都内施設に勤務する臨床心理士の方は、こう述べています。

発達に特性を抱えたお子さんの中には、毎日の学校や家庭での生活を規則正しく送ることで、安心し落ちついて過ごせている子も多くいます。急な予定の変更が続いたり、家庭以外の”ほっとできる居場所”が脅かされたりすることで、本来持っている特性が強く表に出ることも考えられます。現在のような状況が長期化した時に、親子ともに家庭で過ごすことが苦しくならないかが心配です。(臨床心理士・女性)

より重点的な支援や配慮が必要な年齢のお子さん、特性を抱えたお子さんがいるご家庭は、親子ともに、冒頭に紹介したアンケート以上に、より多くの困りごと、ストレスを抱えている可能性があると感じます。

外部機関に出向いていくことがなかなか難しい今、ご近所同士で少しでも気にかけあうことができれば、それがもしかしたら誰かの支えになるのではないかと思います。

電話をかける女性

相談窓口・支援機関のご紹介

子育てに関して不安や悩みを抱えている方、もしくはそのような方が身近にいらっしゃる場合は、ぜひ下記の連絡先をチェック、またはご紹介いただければと思います。

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」

「189(いちはやく)」へかけると、お住まいの地域の児童相談所につながります。虐待が疑われる場合だけではなく、子育てに不安を感じる保護者の方がかけることも可能です。通話料は無料です。

LINE相談「子ゴコロ・親ゴコロ相談@東京」

東京都福祉保健局は、子ども・親双方から相談をLINEで受け付けるサービスを展開しています。「電話はハードルが高い…」と感じる方は、まずはLINEから、気軽に利用してみてはいかがでしょうか。

関東近郊の子育て相談窓口一覧

東京都児童相談センター・児童相談所
千葉県児童相談所
埼玉県児童相談所
神奈川県児童相談所
※お住まいの各自治体にある相談窓口をご参照ください。

コロナウイルスの感染拡大状況は、まだ予断を許さない状況が続いており、学校の休校期間もさらに延長されました。子育てに関して悩んでいる方は一人で抱えこまずに、周囲の人や上記のサービス等をうまく頼り、日々の生活を送っていただけることを、切に願っています。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。

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