2016年3月11日で東日本大震災の発生から5年目を迎えます。震災直後から官民問わず多くの支援が入りました。
時間の経過とともに、必要としている支援内容や方法も次々と変わってきており、その様子を本ウェブマガジンでもたびたび取り上げてきました。
建物の損壊やケガなどの震災による直接的な被害だけが問題なのではなく、震災によって仕事を失ったり、親族を失くした子どもの心身の健康問題などの二次的な被害というのは複雑化し、外から一見してもわからなくなっています。
自力で生活再建できる状況の方ばかりではなく、今もなお震災に関連した被害に悩んでいる方は多くいます。誰がどのようなことに困っているのかということは、必ずしも表面化しているのではなく、むしろ潜在化し、分かり難くなっているのが現状です。
では、東日本大震災によって被災した家庭の子どもたちは、今、どのような状況にあり、何を必要としているのでしょうか?
限られた資源で最大限の効果を上げる支援を行っていくうえでも、潜在化している課題を浮かび上がらせるためにも調査は不可欠です。震災から五年が経つ今だからこそ、調査から得られたエビデンスを基にニーズに合った適切な支援を再考する必要があります。
子供の教育支援に取り組む公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」では、東日本大震災の被災家庭2,338件へのアンケート調査結果をまとめた白書を2015年11月30日に発刊しました。
東日本大震災被災地・子ども教育白書2015
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンは、被災した子どもたちの現状をより明確にすべく、2014年に被災家庭2,338件に対してアンケート調査を実施。
本白書では、このアンケート調査の結果をまとめ、被災地の「子どもの貧困」や教育格差の実態を明らかにしている。
また、データの公表に加え、災害や 教育の専門家が白書のデータより明らかになった被災地の課題を解説する。
2,000件以上の被災家庭や子どもの定量的なデータを元にした白書の発刊は、日本初となる。
目次
第一章 東日本大震災被災地の子どもの概観
第二章 「被災地・子ども教育調査」からみえる子どもたちの実態
1.親の就労・経済状況の変化について
2.子どもの学習について
3.子どもの進路について
コラム「被災地特有の『新たな貧困層』の発見」秋永雄一(東北大学)
4.子どもの生活・悩み事について
第三章 専門家の視点からみた被災地の今後
1.被災地の子どものメンタルヘルスについて
「大震災後の子どもの環境とメンタルヘルス」髙橋聡美(防衛医科大学校)
2.大規模災害と子どもについて
「大災害が与える子どもへの影響」津久井進(弁護士)
3.被災地の子どもの貧困について
「ハイリスクな子どもへのアプローチ」道中隆(関西国際大学)
第四章 被災地の中長期的な課題と子どもたちの支援
~チャンス・フォー・チルドレンからの提案~
付録
~「被災地・子ども教育調査」の詳細~
・アンケート回答者情報
・基礎集計データ
・アンケート調査表見本
書籍情報
単行本:123ページ
出版社:株式会社バリューブックス (2015/11/30)
言語: 日本語
ISBN-10:4990866304
ISBN-13:978-4990866303
発売日:2015/11/30
著者プロフィール
今井悠介(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事)
1986年生まれ。2009年に日本公文教育研究会に入社。東日本大震災を契機に退職し、チャンス・フォー・チルドレンを設立。同法人代表理事に就任。東日本大震災で被災した児童・生徒に対する学校外教育バウチャー提供事業を行う。
奥野慧(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事)
1985年生まれ。19歳の時に新潟県中越地震を経験。関西学院大学在学中、NPO法人ブレーンヒューマニティーで国際交流事業に関わる。2011年3月から東日本大震災緊急支援活動に参画。その後、チャンス・フォー・チルドレン設立・代表理事に就任。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。