2014年12月4日、アルカディア市ヶ谷にて「学校再創生~教育制度の柔軟化の推進」(新しい学校の会・第9回シンポジウム)が開催されました。
新しい学校の会は、構造改革特区の制度を利用し、学校経営を行う株式会社(=学校設置会社)が集う連盟です。
本シンポジウムでは、通信制高校の生徒および保護者3,600人から集めたアンケート調査結果発表、通信制高校生徒・保護者の体験談発表、そして有識者によるパネルディスカッションが行われました。
本記事では、本シンポジウムで公表された通信制高校の生徒および保護者3,600人から集めたアンケート調査結果について事務局よりレポートいただきました。
不登校生は増加傾向。中学3年生時点で最も増加
今、全国の小中学校の不登校生の数はほぼ横ばい、特に2012年から2014年にかけては小中学校を合わせて6,928名の増加という結果が出ています。少子化で子どもの全体数は減っていることを考えれば、全体から見て不登校の子どもは増えていると言えます。
現在、通信制高校は、不登校生が進学や転編入先に選ぶことが多い学校として知られています。
今回「新しい学校の会(以下、新学会)」加盟校(通信制高校)の協力を得て集計したアンケート調査では、「不登校の経験がある」とした生徒は59.2%、保護者は68.3%という結果が報告されています。
生徒自身が「自分は不登校だった」と認める割合が6割、保護者が「うちの子は不登校だった」としている割合は7割という高い数値が出ています。また、不登校となった時期は「中学3年生」が6割と最も高く、次点が「中学2年生」でした。
通信制高校も登校する。通信制高校の仕組みとは?
なぜ、通信制高校が不登校生の進学先として選ばれているのでしょうか?下記のグラフを見てみましょう。
生徒と保護者で各項目の順位が異なるのも興味深いですが、両者とも1位は「通信制の登校スタイルが自分(保護者の場合は、我が子に)合っている」ということ。
そこで、おや、と思われる読者もいらっしゃるかもしれません。
「通信制高校とはその名の通り、通信教育による自学自習を主とした学校なのではないか?それなのに登校スタイルとは?」と。
実は、通信制高校は多様化が最も進んでいる教育分野の一つで、登校のパターンがいくつもあります。大まかに分類すると、
・週5日、全日制と同じスタイルで通う
・週5~1日、あるいは月に1回のペースで通う
・年に1~2回程通学(集中スクーリング)し、主に通信教育で学習する
となります。学べる内容・生徒の受け入れなどにも学校ごとの個性があり、普通教科以外の好きな分野について学べたり、大学受験に力を入れていたりと様々です。
生徒・保護者のニーズに応じて工夫を凝らし、個性豊かな選択肢ができた
どうしてこれだけ選択肢があるのでしょうか?
学びリンク株式会社では、通信制高校が集まって合同で行う「通信制高校・サポート校 合同相談会」を全国の主要都市で主催しており、進路や転編入先探しに悩む生徒・保護者が多く来場しています。
来場者(多くは保護者です)のお話を聞いていると、「発達障がいに手厚い学校があると聞いたが、どの程度だろうか」「体調に不安があり、休みがちになったときには学習・メンタル面ともに配慮が欲しい」「全日制高校に通っていたが、いじめを受けて通学できなくなり、転入を考えている。本人は全日制高校に未練があり、全日制と変わらない環境を特に望んでいる」など、抱えている悩みは本当にいろいろです。
不登校問題から少し逸れますが、「経済的に苦しいので、極力学費の少ない高校を知りたい」という声もあり、通信制高校の自由時間の多さを活かして、生徒がアルバイトで学費を稼ぎながら卒業を目指せるタイプの学校も注目を集めています。
不登校解決に特効薬はない。一人ひとり異なる”ぴったりの学校”
アンケート結果や現場の声を通して見えてくるのは、不登校には一人ひとり異なった理由があり、一人ひとり違う個性があるということです。そして、進学先となる通信制高校の特色も一校ずつ異なっています。
例えばですが、不登校だったAさんがうまくいった学校だったら、同じく不登校だったBさんもうまくいくハズ・・・などという保証はありません。
もちろん、クチコミは信頼性の高い情報ですから、検討する価値はあります。ただ、本当に大事なのは学校と当人とのマッチングです。
アンケート調査でも、学校ごとに集計をしてみるとA校は「ユニークで楽しい」B校は「PC・タブレット授業がわかりやすい」と、満足度が高い項目は学校が特色として打ち出している部分とほぼ合致していました。
学校が最も力を入れている部分と、子どもが最も求めている要素が重なること。それを本人に選び取らせること。
言葉にすると単純ですが、学校選びの際に必ず守っていただきたい2点です。転編入も入学も、定員になっていなければ冬以降も受け入れている学校は多いので、本人も周囲も焦らずにぴったりの一校を探してください。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。