「高校中退して家にずっと子どもがいる」という親御さんから「子どもとどのように接すれば良いのでしょうか?」というお問い合わせをよく頂きます。
よく言うのは「何でも話せる関係性を保つことを大事にして下さい」ということです。ただ何でも話せる関係性を保つというのは、実際はなかなか難しいことです。今回は、高校中退をしたお子さんのいる親御さん向けに「期待せずに信じて待つ」ことの重要性や関わり方のポイントをお伝えしたいと思います。
「期待せずに信じて待つ」が基本姿勢
子どもが次の一歩を踏み出そうと「こういう風にしようかな?」っていうお話が出てきた時には、親としてはやっぱり期待してしまいます。「やっとその気になったか!」と言ってあれもこれもいっぱい話をしてしまって、「また元に戻ってしまった!」ということもあります。
基本的には、ちょっと進んだら、ちょっと戻って、またちょっと進んだら、ちょっと戻ってを繰り返して少しずつ進んでいくものです。
「どうしようかな?」とか「どうにかしたいな」っていうことは、本人も思っています。もちろん、「ずっとゲームばっかりして!」とか「動画ばっかり見て!」みたいな感じに見えても、本人は「どうにかしないといけないな」ということはずっと思っています。この状態で親から「どうやって生きていきたい?」みたいな話が来た時に、これがなかなかしんどいんです。
もし、これが高校生という状態だったとすると、「どうやって生きていくの?」みたいな話を聞いたら、「こんな風な職業なりたい」というようなかなり先の話をして、現実性を問われないまま終わることが許されます。
しかし、家にいたり、先の見えないままの状態で同じように「どうやって生きていくの?」と聞かれた場合、「どうにかしないといけない」とか、「親にも心配かけているな」とか、「すぐに親を安心させないといけない」みたいなことを思ってしまいがちです。「どういうふうに答えたら良いんだろう?」「答えたことがもし失敗してしまったら親にどう顔向けしたら良いのか?」といったところで迷ってしまいます。
あまりこういう質問はしない方が良いと思います。
家族からの言葉は、至近距離からの肉弾戦!
特に家族というのは距離が近いものなので、至近距離からの肉弾戦のように、逃げ場がない状態での言い合いみたいな話になってしまいます。
本人に返す言葉がなければ、防戦一方になって閉じこもってしまったり、もう言葉にはならないので壁に穴を開けて部屋に戻ったりしてしまいます。ご家族は、本人は「どうにかしたい!」と思っているところを信じてください。
進路の話がポロってしてきた場合に、あまり過度な期待をかけて「次の道はこうだよ!」みたいな話を全部しないで、本人のペース話が進められるようにしておくということが「何でも話せる関係を保つ」っていうところにつながっていきます。
あまり本質的な芯を食った話ばかりすると、なかなか話してくれなくなりますので、雑談をたくさんしてもらえればと思います。
進路の話をしたい時は、特別な場を設定する!
親御さんがどうしても進路の話をしたい時は、この時にどうするのかというと、特別な場を設定することが大切です。
例えば、高卒認定の申し込みのタイミング、年度が変わるタイミングなど、「ちょっと進路の話したいんだけど」ということで、いつものとは全然違う「空気」で、「この場だけ・この時間だけ進路の話をしますよ!」というような形で、特別な空気感で特別な場を設定することをオススメしています。
間違っても日常的に進路の話をずっとするとか、親子さんが不安になった時や思いついた時に、さみだれ式のお話をするのはやめてください。
本人も「いつ進路の話をされるんだ?」と、とてもストレスフルで考えることもできなくなってしまいます。基本的には、「いろんな事を自由に話して良い!」っていうスタンスで話ができるということが大事です。
進路のような本人にとって一大事の話は、半年に一回という期限で区切って特別な場を設定しても良いですし、高卒認定とか年度始め終わりのようなタイミングを見計らってでも良いです。「その話をするとなった時だけする」っていうことを大事にしてもらえればなと思います。
親にできることは情報収集
他人を変えることはとても難しいと言いますが、これはもう家族であっても同様です。それどころか家族であるがゆえに、「変わってもらいたい!」と思って話したことが精神的な殴り合いみたいな状態になってしまいます。
自分の人生を最初からメチャクチャにしたいと思っている人はいません。今悩んでいるそのタイミングは、その本人がどうやって人生をつくっていこうかって考える機会です。そして、その悩んでいる状態を家族だからこそ見せたくない気持ちもあります。そういう時間をある程度見込んでもらえれば良いなと思います。
親御さんにできることは、お子さんと話をした時のために、情報は集めておくということです。ただ1ぐらいの感覚で子どもが話してきた時に、10、20も返すとシュンってなってしまいます。子どもが出してきた情報に対して答えることで十分です。
情報を集めておくというのは、親御さんが安心できるところにもメリットはあります。そういう意味でも情報はたくさん集めておいてもらえるといいなと思います。
親自身も自分の人生を楽しむ
もう一つは、親御さんは自分の人生を楽しんでくださいというお話です。
あまり遠慮し過ぎたり、甘えさせすぎると本人も自分一人でゆっくり考える時間とか安心してゆっくり考える時間がなくなっていってしまいます。親御さんのお友達が「久しぶりに話そう!」みたいなになった時、家に呼んで家でお話しするみたいなとかでも良いと思います。
遠慮しすぎないということが、自然な関わりを意識することにもつながり、「期待せずに信じて待つ」ということが少しずつできるようになってくると思います。
1981年奈良県生まれ。一般社団法人new-look代表理事。関西学院大学大学院 文学研究科 総合心理科学専攻 学校教育学領域 修了。「型にはまらないで考えよう。常識を打ち破ろう(Think Outside theBox)」を掲げる、高校中退・不登校向けの個別学習サービス、TOB塾代表。 2歳で父を大韓航空機撃墜事件で亡くし、母子家庭で育つ。奈良工業高専の中退経験と、中学・高校の教員経験(担任・学年主任・人権教育主任など)のほか、大手人材紹介会社やNPO法人での勤務経験を持つ。さまざまな仕事や人との出会いの中で「覚悟を決めればどの道も正解」・「もっと自由に生きていい」ことを知り、高校中退からの生き方にスポットをあてるため、new-lookを設立した。
動画・new-lookちゃんねる:保護者さんは「期待せずに信じて待つスタンス」で
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