初等教育中等教育

東京都23区児童・生徒一人当たりの学校教育費ランキング-義務教育の地域間格差!小学校で約3.1倍、中学校で約4.7倍の差があり!

小学生

「日本の公立小学校・中学校は、どこも同様の教育水準である」と思われている方は多いのではないでしょうか?

教育基本法の中では、教育の機会均等が記載されていることから考えれば、公教育の内容・程度について水準の維持向上が図られているはずです。公立の小学校・中学校の教育は、税金を財源に行われ、どこに住んでいるかによって左右されず、どこでも同様の教育が受けられると考えられていますが、各自治体の税収・財源によって左右されていることはないのでしょうか?

学校教育費の財源は、国(国庫補助金)、都道府県(都道府県支出金)、市区町村(市町村支出金)、地方債などから成り立っています。それぞれが占める割合は、都道府県によって異なりますが、東京都の場合、平成26年度(平成25会計年度)からその割合を算出すると、国:11.38%、都:56.80%、市区町村:28.68%、地方債:3.14%となっています。(※市区町村の支出には、地方交付税や家族から徴収された授業料、入学金、検定料等が含まれます)

では、同じ東京都内の23区内で児童・生徒一人当たりの学校教育費に差があるのでしょうか?ランキング形式で調べました。23区内でも大きな地域間格差があることが明らかになりました。

学校教育費の支出の種類

学校教育費は、消費的支出、資本的支出、債務償還費の3つの支出から成り立っています。今回のランキングでは、平成26年度(平成25会計年度)地方教育費調査報告書を基に、児童・生徒一人当たりの学校教育費を算出しています。

なお、直接的に教育水準とは関係の少ない「債務償還費」は、除いて算出しています。「資本的支出」は、新しく学校を建設する場合など一時的に費用で多くなる傾向がありますので、その点を考慮してご確認ください。

<消費的支出:経常的に支出される経費>
・人件費(本務教員給与・兼務職員給与・事務職員給与・その他の職員給与・共済組合等負担金・恩給費・退職死傷手当等に要した経費)
・教育活動費(特別活動費・教授用消耗品費・旅費・その他の教育活動等に要した経費)
・管理費(修繕費・学校警備費・消耗品費・光熱水費・その他の維持費・旅費等に要した経費)
・補助活動費(給食活動・衛生活動・寄宿舎運営等に要した経費)
・所定支払金(地代・借料・校長会・研究会費負担金・分担金等に要した経費)
<資本的支出:新たに財産を取得、増加又は補充するために支出される経費>
・土地費・建築費・設備備品費・備品に類する図書の購入費等に要した経費

<債務償還費>
・教育施設建設や退職手当等のために起債した地方債の元金の返済、利子の支払及び手数料に要した経費

小学校の児童一人当たりの学校教育費ランキング-上位区と下位区では、3.1倍以上の開きがある。

小学校の児童一人当たりの学校教育費ランキング

小学校の児童一人当たりの学校教育費ランキング

上記の図表は、小学校の児童一人当たりの学校教育費です。

教育費の総額では1位の中央区と最下位の台東区で約3.1倍の差があります。消費的支出の差は約2倍ですが、資本的支出による開きが約24倍となっており、資本的支出によって大きな差が生まれていることがわかります。

資本的支出が多い区を見てみると、一概に「地価が高いから資本的支出が多い」とは言えないことがわかります。年度によって変化の少ない消費的支出だけ見てみると1位の中央区と最下位の江戸川区で約2.6倍の差があるということは、教育活動に違いが出てくるのは容易に想像できると思います。

中学校の生徒一人当たりの学校教育費ランキング-上位区と下位区では、4.7倍以上の開きがある。

中学校の生徒一人当たりの学校教育費ランキング

中学校の生徒一人当たりの学校教育費ランキング

上記の図表は、中学校の児童一人当たりの学校教育費です。教育費の総額では1位の港区と最下位の大田区で約4.7倍の差があります。小学校よりも中学校の方の差が大きくなっています。

消費的支出だけで見てみると、支出の最も少ない世田谷区と最も多い港区を比べると、約4.5倍の差があります。消費的支出だけ見ても小学校よりも中学校の方の差が大きくなっていることがわかります。

子どもの数が少なく、税収の多い区が教育にお金をかけられる傾向

東京都が子どもの数に応じて教育費を負担したとしても、財源の約3割は市区町村の負担となっています。必ずしも子どもの多い区の税収が潤沢にあるわけではありません。

もちろん、限られた税収の中でも政治の判断によって教育に投じるお金の増やすことはできます。しかしながら、税収額にも大きな差がある中では、様々な工夫を凝らしたとしても、子ども一人にかけられる費用に差が生まれてしまう可能性は高いでしょう。

実際に児童一人当たりの消費的支出の多い区では、30人以下学級の割合も高い傾向があります。「教育費」=「教育水準」ではありませんが、数倍以上の差がある中で影響がないとも言えません。教育費の負担割合が都道府県や市区町村に求められる割合が増えるほど、義務教育の地域間格差の問題は、より深刻化していく可能性があります。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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