自然体験

夏休みを重要な学びの時間に!子ども向けキャンプのすすめ-自然体験活動にどんな教育効果があるのか?

サマーキャンプで虫取り

もうすぐ夏休みです。現代の子ども達は、いろいろな大人の都合に巻き込まれて、ただでさえ少ない子どもたちの自由な時間がますます少なくなりつつあるようです。普段とは違う場と機会を創出しやすく、じっくりと試行錯誤を繰り返すことができるのが夏休みであります。

そんな夏休みを有効に過ごすための方法のひとつが、「子ども向けキャンプ」だと思っています。動物や植物の活動が勢いを増し、分厚い防寒着がなくても動き回ることができる夏は、子どもたちが野外での活動を展開するには最適な時期です。

多様化する「子ども向けキャンプ」

「子ども向けキャンプ」といっても、いろんな手法があります。「キャンプ」というと、テント泊やたき火で炊事、みたいなことだけを想像するかもしれません。現在は、簡易的な宿舎を使ったり共同調理による食事提供など、質素な衣食住空間を活用した屋外活動と広義的にとらえた方がしっくりきます。

その子ども向けキャンプの内容も、多岐にわたっています。

自分の住んでいる町から近いところで地元の素材を使った日帰り活動から、全国津々浦々のキャンプサイトへ飛行機を使って移動し、20泊以上するような壮大な活動、何日分もの食材を背負って登山縦走をするようなものから、「なんにもしない!やりたいことは自分で決めて!」というようなフリースタイル、様々な国々の人たちと過ごすものから科学実験や生態観察、田舎のオジさんたちと一緒に農作業や家畜の世話に明け暮れるようなものまで、いろいろあります。

子どもサマーキャンプ:海水浴

キャンプ・自然体験活動の教育効果

こう並べてみると、楽しそうですね。でも、これらに参加するには、大なり小なり参加費がかかる訳です。となると、それを支払う保護者としては「そんな遊びにお金を払って、なんかいいことあるの?」という費用対効果が気になるようです。

英語の塾に行けば、英語がしゃべれるようになるし、スイミングス クールにいけば、泳げるようになるでしょう。じゃあ、「キャンプに参加させたら、どんないいことがあるの?」というところでしょうか。確かに「子どもにとって、自然体験活動は良いことだ」と何となくは思っているけど、じゃあどの部分がどう役に立つのか、といわれると、一言で説明するのは難しいです。

自然体験活動が子どもにどう影響を与えるかについては、平成11年に文部省が発表した調査結果を筆頭に、様々なデータが蓄積されています。

特に最近では、 不幸にも突然外で遊ぶことを制限されてしまった福島の子どもたちに、夏休みに屋外での長期自然体験活動を提供する「ふくしまキッズ」という活動が、どのよ うな教育的効果があるかを調査した結果は、対象者のすべてが図らずも一様に外で遊ぶことができなくなったという点においては信憑性が高く、自然体験活動が 子どもたちのどこに効果があるのかを客観的に表しているといえます。

この調査結果を見ると、自然体験活動は、身体的能力の向上だとかスキルの取得という具体的な効果よりも、「がんばる」とか「どうにかする」といったメンタリティの向上に寄与する、ということが伺えます。それらは、ピアノや水泳のように、目に見える成果としては示しきれないところもあるので、先ほどの保護者 の率直なコメントもうなずけるところです。

つまり、自然体験活動は、これまでの知恵の結晶を注入し、技能や情報を取得していく学校型の学びを目標とするのではなく、「まずやる」「とにかくやる」そ して「成功する」「失敗する」という、まずは予備知識もなしでどーんと取り組み、そのあとに「じゃあどうする」と振り返るそのプロセス・・・うまくいった という達成感とか、失敗して悔しい、という感情を揺り動かすところに学びの目標があります。

子どもサマーキャンプ:森での活動

抗生物質ではなく、漢方薬のような効果

その学びは、抗生物質のように即効性はありません。むしろ、後々の人生に効いてくる漢方薬のような効能だと表現することもできます。さらにいえば、 子どもたちにとっては、その両方が必要なのだともいえます。

学校だけでもだめだし、自然体験活動も万能ではありません。その両輪が備わって、初めて子どもたちは前に進めるのだとすると、普段の生活・・・放課後や土日の中に自然体験活動の機会が少なくなった現在では、夏休みや冬休みといった長期休業中にそれを効果的に展開する必要があると思います。

と考えると、「夏休み」の「休み」という言葉が、どうも日本人には「休み→サボり」に捉えられてしまって、そこが「学び」につながらないようです。

夏休みこそ、子どもたちのもう片方のタイヤを形作る重要な学びの時間であり、我々はこの夏休みに展開される自然体験活動・・・キャンプこそ、現代に生きる子どもたちのいろんな課題を解決する有効な手段だと確信しています。

が、一口でキャンプといっても、全国津々浦々で様々なキャンプが展開されており、その実は玉石混交といいますか、中には「なんとなく面白いからやってる」 「10年前とおんなじことをダラダラやってる」というものもあります。

ただでさえ少ない貴重な夏休みを有意義に過ごすわけですから、そのキャンプがどんな目的で、どんな体制で実施されているのかを十分に確認し、お互いに思いの共有できるキャンプを見つけることがコツでしょうし、提供する我々も、万全の体制を整えて活動を提供していきたいと思っています。

Author:上田融
NPO法人いぶり自然学校・代表理事。昭和48年生まれ。平成8年より北海道の小学校で6年間勤務。平成14年より4年間、登別市教育委員会社会教育グループで社会教育主事として、ふぉれすと鉱山の運営に携わる。平成18年よりNPO法人ねおすの活動へ参画し、道内各地の自治体と協働し、第一次産業の取り組みを子どもたちに体験的に伝え、学ばせるプログラム開発および協議体の設立に関わる。平成20年より苫東・和みの森運営協議会副会長。平成27年より現職。プロジェクト・ワイルドファシリテーター、小学校教諭1種、幼稚園教諭1種等の資格を持つ。

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