就職・就労

「世界で最も革新的な企業」が行う若者の就労支援プログラムとは?-企業の社会貢献活動・CSRの新しいあり方

BizAcademy

「将来は、IT企業でアプリケーションの開発に携わってみたいと思っています。」

トレーニングははじまる前とは、全く違う姿の8名の参加者たち。14日間のプログラムでここまでの変化があるとは誰も予想していなかったのではないでしょうか?これまでの研修での学びを振り返り、将来の夢や目標をプレゼンテーションする姿に、大きな拍手が鳴り響き、メンターとして彼ら・彼女らと一緒に並走してきた社員は涙ぐむ場面が何度も見られました。

「1%モデル」を実践するグローバル企業

これは、米Forbes誌にも3年連続「世界で最も革新的な企業」の第1位に選ばれているセールスフォース・ドットコム社が新たにIT業界への就労を目指す若者を対象とした就労支援プログラム”BizAcademy”の最終発表会の一幕です。

セールスフォース・ドットコム社は、世界最大のクラウド型のCRM/顧客管理システムを提供し、SFA/営業支援を行っている企業です。世界10万社以上に提供しており、国内でも飛躍的な成長をしており、官民問わずそのサービスを活用している企業・団体・自治体は多くあります。

セールスフォース・ドットコム社は、2000年7月には、数百万ドルの資金を有する国際的な非営利団体「セールスフォース・ドットコムファンデーション」を設立し、さらには製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を地域社会に還元する、「1%モデル」を考案しました。その先駆的な社会貢献活動・CSRの取組みは、非営利セクターではとてもよく知られた存在です。

無業・非正規の若者の正規就労を支援する

salesforce

今回、セールスフォース・ドットコムファンデーションでは、メインパートナーとしてNPO法人ETIC.と連携し、世界中の拠点ですでに実施されている”BizAcademy”の日本版を8月下旬から新たにスタートさせました。

このプログラムでは、現在、正規雇用で就業しておらず、これから正規雇用を目指している若者(大学既卒者・第二新卒者、ニート・フリーター、再就職希望者など)に対して、就労機会へつながる支援を行うものです。

具体的には、ビジネスマナーやITに関する基礎講座、CRM(顧客関係管理)プラットフォームであるSalesforceの管理者向けトレーニングなどの講座を開催し、修了後には、セールスフォース・ドットコムのビジネスパートナーを中心とするIT企業等が受け入れ先となり、実践研修を行う機会も用意されています。

プログラム期間中は、セールスフォース・ドットコム社の社員が数人一組で、参加者のメンター役となり、わからない点をサポートしたり、今後のキャリアに関する相談なども行っています。

海外の拠点では、これまでに200名以上の卒業生を輩出、パートナー企業や非営利団体での実践研修修了後に正規雇用につながった事例もあります。今回のプログラムは日本版の初年度となり、正規雇用を目指す8名の若者が参加しています。

若者に対する就労支援のプログラムは、これまでも行政やNPOなどが様々な形式で実施してきていますが、IT分野での支援では、日本マイクロソフト株式会社と認定NPO法人育て上げネットが実施している「若者UPプロジェクト」(ITを活用した若者支援プロジェクト)、一般社団法人アスバシ教育基金とアクセンチュア株式会社が実施しているCTACプログラム(IT基礎講座)などがありますが、まだまだ数も限られています。

IT分野は、将来的に成長が見込める業界でありながら、慢性的な人材不足となっており、正規雇用を目指している若者がこのようなプログラムでITスキルを身につけ、正規就業につながるステップになります。

参加者にとって、社員にとって、価値のある社会貢献活動・CSR

“BizAcademy”は、企業の社会貢献活動・CSRの観点からも優れたプログラムであり、本業での高い専門性を活かし、その国の制度や文化に合わせて展開しようとしています。支援対象としている若者の支援の分野で成果を出しているNPOと連携して行っていることもあり、事前に関係者に対する指導も行われ、参加した若者からもとても好評でした。

このプログラムの一番特徴は、社員がメンターとして実際に参加している若者と一緒に並走する点です。

通常このようなプログラムでは、何らかの困難を抱えている若者が参加する関係もあり、NPOの専門スタッフが中心に関わることが多く、プログラムを提供する企業側は、裏方の運営に徹したり、講師として指導する場合が一般的です。

“BizAcademy”は、一定の指導を受けたうえで多くの社員がメンターとして直接関わり、参加者の言葉に耳を傾け、時にアドバイスをしていきます。参加者にとっては、心強い自分の応援団になり、社員にとっても大いに学びのあるプログラムであることが感想からもよくわかりました。

最終発表会時のプレゼンテーション、プログラムの修了証が渡された時、参加者以上に社員のメンターが感動している姿はとても印象的でした。

BizAcademy

最後に株式会社セールスフォース・ドットコムの川原均取締役社長兼COO(最高執行責任者)より挨拶があり、その中でこのプログラムをさらにブラッシュアップさせ、継続への強い意欲を見せていました。今後、プログラム実施後の自社内での就労についても検討していきたいとお話されていました。

実際の正規就労につなげていくことができるのかが大きなポイントとなりますが、単なるパフォーマンスではない成果を上げる社会貢献活動・CSRの取組みとして期待が高まります。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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