カナダ

いじめを個人ではなく社会の問題とするカナダ-いじめ撲滅運動を全土で展開!いじめを減らす仕組みとは?

カナダのピンクシャツデイ(by Province of British Columbia)

昨今、日本でも青少年による悪質ないじめのニュースが続き、社会的に大きな問題となっています。もちろん、いじめ問題はどこの国にでもある社会問題です。カナダでもいじめ問題が起こっているのが現実です。

しかしながら、近年におけるカナダ国家をあげての積極的な調査組織の発足、いじめを受けている当事者、傍観者がオンラインで校長、並びにスクールカウンセラーへ直接報告できるシステムの導入、そして「ピンクキャンペーン」と呼ばれるいじめ撲滅運動における取り組みがいじめ問題の軽減につながっていると言われています。

いじめを個人の問題ではなく社会の問題として捉える

Prevnet.ca」、カナダの大学教授達が作った組織で、カナダのいじめ問題の研究者達や青少年の支援団体の協力から成り立っています。

こちらの組織が発足するまでは、地域や各学校がそれぞれの方針でいじめ問題へ対応してきました。この組織が出来たことで、実際のいじめ問題に関しての調査報告、原因の追求、最先端の対策方法に関する情報発信が行われ、効率的にいじめ問題に対応出来る体制が作られました。

カナダはいじめ問題を個人の問題ではなく、社会全体の問題としてとらえています。

「いじめ行為は不健全で、社会全体に悪影響があること」「いじめ問題は人間関係の問題であること」「健全な人間関係を構築することは社会全体の責任であること」を軸にいじめ撲滅運動を推進しています。

カナダのピンクシャツデイ(by Province of British Columbia)

カナダ全土へ広がる”いじめ撲滅運動(Anti-Bullying Day)”

2007年にカナダで中学3年生の男の子がピンク色のTシャツを着ていた事でいじめられたことをきっかけにはじまった運動です。

最初はいじめ撲滅に賛成した学生が50枚のピンク色のTシャツを着て、運動をはじめましたが、それから州の政治家達が、いじめ撲滅の日を設定するなどカナダ全土にその運動が広がりました。今では、カナダだけでなく25カ国がこの運動に参加しており、国連も正式に2012年に、5月4日をAnti-Bullying Dayとしました。

この撲滅運動では、学校でも集会が行われ、徹底的にいじめというのはどういった行動を指すのか、いじめが人の成長や社会全体にどれだけ悪影響を及ぼすか、そして仲間がいじめられていたら助ける重要性も教育します。地域の警察も学校での講演や、テレビコマーシャルを通じていじめも犯罪となることを伝え、どれだけ良くない行為か教育します。

学生間でもたくさんの討論が行われ、一人一人のいじめに対しての理解を促します。こういった活動は青少年達に「いじめが悪いことだ」という認識を強く定着させ、予防につながります。

傍観者がいじめを積極的に止めるようになったそうです。傍観者が止めに入ると10秒以内にいじめが止まるという報告もあります。

重要な点としては、具体的にいじめられている学生や傍観者がどうやっていじめ を止めたらいいのか、どこに相談したらいいのか、関係している大人達もどのように対応していったらいいのか対策方法を教育し、早期に発見、介入を促している事です。

いじめを誰でも報告できるウェブサイト

いじめを誰でも報告できるウェブサイト

Stop a buylly.ca」というウエブサイトが作られ、このサイトを使って誰でもいじめを報告出来るようになりました。確実に校長先生、スクールカウンセラーといった協力者に連絡がいくようになりました。相談を受けた先生、校長、カウンセラーにとっても一連の対応策が確立されました。

カナダでは、机上の読み書きの勉強と同じぐらい、社会性を伸ばし、健全な人間関係を構築するスキルは青少年にとって大事なことだと考えられています。

いじめる側もそのままにしておくと、支配欲や攻撃性をコントロールすることが出来ない大人となり深刻な問題に発展すると指摘しています。どのように自分の感情をコントロールするか、問題をどう解決するか、どうやって自分の行動に責任をとるか教えることが重要としています。

いじめられる側も傍観者にも責任ある行動をとることの重要性を教えることにより、ただの被害者、傍観者ではなく、正しい判断が出来、問題解決能力があり、人間性のある大人に成長していくと考えています。

競争社会といじめ

私は大学で競争社会の孤独について学んできました。競争社会で勝ち続けることはとても大変なことです。そういった環境の中、いじめ自体は不健康ではありますが、人を見下す行為や言動をとることから、自己顕示欲、支配欲、攻撃性を満たす行動につながります。

ただし、世界はどんどんグローバル化が進んでおり、日本もこの波に乗って行く必要があります。世界の人と協力して大きなプロジェクトを遂行出来る人材育成は不可欠です。いじめで日本人通しお互いを潰し合っている場合ではありません。相手の事を考えず自分の欲求だけを満たす人、支配欲、権威欲だけが強い人が世界から認められることはありません。

日本もそろそろ競争社会から、共生社会へもう少し価値観をシフトする時期にきているのではないでしょうか?

競争だけでなく協力すること、大きな時限で社会に必要なプロジェクトを遂行できるような人間性やリーダーシップ力を育てることは、今後の日本の教育において、最重要事項の一つであると考えます。

Author:細越美和
Westcoast International Education Consulting in Canada Ltd. 代表。
2004年にカナダ・バンクーバーにカナダ留学を支援するウエストコーストインターナショナルを設立。質の高い英語教育、多文化理解、才能教育に力を入れ、これまでに4,000人以上の留学生をサポート。15年間に渡り、発達障害や視覚障害を持つ留学生もカナダのインクルーシブな教育環境で支援経験あり。
さらに、カナダの教育システムの研究・広報活動として、カナダ州立教育機関の正式な日本窓口としてカナダと日本の教育機関の提携業務や日本の教育者向けのカナダ教育機関見学ツアー、カナダ大使館フェアでの州立教育機関のサポート等を行っている。

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