休校期間が続く中で「子どもの学びをどのように保障するのか」という点が、問題となっています。
年齢ごとに必要な学びのあり方は異なりますが、今の高校3年生からは、大学受験をむかえるにあたっての不安の声があがってきています。
前編に引き続き、後編の記事では、高校生をとりまく現状の中で課題となっていることを引き続き整理しつつ、必要な支援や対策について考えます。
経済的困難を抱えている家庭も
新型コロナウイルスの感染拡大や外出自粛の影響で、経済的な困難に陥っている家庭もあります。
病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたちや、親が重度後遺障害で働けない家庭の子どもたちを物心両面で支える民間非営利団体「あしなが育英会」では、高校3年生の奨学生がいる世帯の保護者に対して、現在の生活状況を尋ねるアンケートを実施しました。(あしなが育英会奨学生保護者アンケート)対象は全国で、回答期間は4月1日~10日、回答数は281でした。
質問ごとに、回答内容をいくつか抜粋して紹介します。
●質問:今、一番困っていることは何ですか?
・長男は6年制の大学の4年生で次男は高3の受験生です。これから5年~6年はお金がかかります。どこまで持ちこたえられるか不安でたまりません。
・勤め始めたばかりである為、コロナ禍による解雇をされないか不安。収入が減った事で、学費を納められなくなるのではないかという大きな不安。
・子供たちにも家計を助けてもらっていますが、バイトも休むよう学校から指示があり、高校生と大学生の2人合わせて10万円弱のバイト代が入りません。
●質問:今後、不安なことは何ですか?
・4月の前半には高校生の息子の諸経費を入金しなくてはいけない。正直言って払えません。
・このまま日本経済が大きな不況に陥り、奨学金受給者が増えた場合、何処までの支援が受けられるのか。
・学費支払いができないこと。4月は学費が大量にかかりますが引き落とし不能の状態です。 高3なので受験にかかる費用も心配です。今一番困っているのはお金がなく頼る人もいないことです。
もともと経済的な困難を抱えていた家庭が、さらに苦しい状況に追い込まれてしまっていることがわかります。生活をしていくために、そして、子どもの学びの機会を保障していくために、より一層の充実した支援が求められると考えます。
前編からの内容を踏まえて、高校3年生やその世帯に対して、どのような支援や対策をしていくことが望ましいのでしょうか。
学校側でできること
まずは、学校間の授業整備の格差をなくしていくことだと考えます。学校の判断で、いち早くオンライン授業等の整備を進めている学校もありますが、現状として進んでいない学校もあります。特に公立校は、他の学校と足並みを揃えることを求められるため、私立校に比べると独自の対策を取り難いという現状があると思います。
同じ学年、同じ受験生間で、本人たちの不可抗力で学力に差がついてしまう状況は、良い状況とは言えません。学校ごとに柔軟な判断ができるようにしたり、ICT機器の導入に関する財源を確保したりすることが早々に求められると考えます。
オンライン授業の整備とともに、学校や教師と高校生の双方向のコミュニケーションがとれる環境を整えることも必要になってくると思われます。
もちろん、友人間でコミュニケーションを取っている高校生も多いですが、進路が違うため学習している科目が異なり、学習に関する相談はし難いという声もありました。
「わからないことがあった時に聞ける」「頼れる先がある」ということは、高校生たちの安心感につながると思います。
今後の入試に関する部分については、早い段階で方針が決定されることを願うばかりですが、最新情報を受験生にいち早く届けるような体制も必要ではないでしょうか。学校が休校となり、受験に関する情報が入ってこなくなったという不安の声もありました。
もちろん、自分自身で情報を集めていくことも必要ですが、高校生たちが受験に集中できるような周囲のサポート体制の構築は、今後さらに求められると考えます。
経済面への支援
今年の4月から高等教育の修学支援制度(高等教育無償化)が始まっています。一定の要件を満たすことができれば、授業料等の減免や、給付型奨学金などの支援が受けられます。
要件の一つに、世帯の所得(目安年収)があります。通常は前年度の年収をもとに審査されますが、新型コロナウイルス感染症の影響で、世帯(父母等)の収入が大きく減った人は、「家計の急変」として申し込むことができるようになっています。
申し込みは随時(急変事由の発生後3か月以内に申し込み)、支援開始時期も随時(認定後速やか)となっており、現在は申請日の属する月から支給開始できるように運用が拡充されているので、家計の急変により学費の工面が難しくなっているご家庭は、ぜひ、ご活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
※文部科学省:新型コロナウイルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ
誰も経験したことのない状況に、対応が追いついていない現状も一定理解できます。ただ、「たまたま今年高校3年生だった」というだけで不利益を被ることがないように、各方面での支援や対策が十分進められていくことを切に願います。
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。