ボランティア

子どもを支援するために知っておいて欲しい4つのこと-専門職やボランティアで活躍する先輩から学んだこと

子どもとお兄さん

新しい年度が始まりました。この春から新しい職場で働く人や、新たな活動にチャレンジするという人も多いと思います。

私も2011年秋に転職をし、それまで働いていた企業から、初めてNPOという業界に足を踏み入れました。1年目は被災地の受験生を対象とした学習支援活動、2年目から現在にかけては被災児童や親子を対象とした心のケア事業や、子ども専用フリーダイヤルの運営に従事してきました。

企業とNPOでは、同じ子どもを対象とした仕事であっても、理念も事業内容も方法も全く異なっており、転職してからのこの約3年半の間に、価値観は大きく変わったように思います。

特に、過去につらい経験をした子どもたちや、大きな悩みを抱えている子どもたちに接していると、自分自身が育ってきた経験からは想像できないことに直面することもたくさんありました。

ふさぎ込む子ども

その中で、すでにNPOや子どもに関わる機関で長い経験を持つ先輩たちから、多くのことを教えていただきました。そして、私自身も2つのNPO団体で子ども支援の活動に従事し、実際に子どもたちに接して学んだことや、活動するボランティアの方たちの姿から学んできたことが沢山あります。

新しい節目であるこの時期に、これから子どもを支援する仕事に就く人たちや、ボランティア等の活動を始める人たちに向けて、「支援者」として子どもに関わるために知っておいて欲しいことを、以下にまとめてみました。

あくまでも私の視点でまとめたものなので、広く一般化されたものではないかもしれませんが、少しでもヒントになれば幸いです。

①まず話を聴くことから

子どもに関わるということは、その家族や、住んでいる環境、経済状況等、子どもの周りにあるもの・ことについても目を向けることになります。

情報が多ければ多いほど、また、困難を抱えているほど、ついそうした周りのことばかり目がいってしまいがちです。そこで大切にしたいことは、どんな情報よりも、まずは本人の話をじっくり聴くところから始めるということです。

子どもたちがいかに話を聴いてもらっていないかを、子どもの電話「チャイルドライン」の活動を通じて実感してきました。

「親にも先生にも話したけれど、ちゃんと聞いてもらえなかった」「毎日忙しくて話を聞いてくれない」「おおごとになるだけだから言いたくない」そういった状況の中でも、あきらめずに電話で話をしてくれた勇気に、私たちは感動しながらも、誰か隣でただその子の話を聞いてくれる大人がいたら、どれだけ楽だろう、と思わずにはいられません。

今、目の前にいる子どもが何かを打ち明けてくれたのなら、まずはじっくり聴いてほしいと思います。

親子の影

②先入観を持たない

たとえば、「家族」というものへのイメージは、人それぞれです。それは、自分が経験した家族はたった一つであり、いくつもの家族を経験することはできないからです。

一方で、子どもを取り巻く事件が起きたとき、その親や家族について「親の育て方がよくないから子どももこんな風になる」「父親と母親が揃っていなくて子育てができるのか」など、簡単に批判してしまう人がいます。家族構成などの一部の情報から、イメージでその家族を捉えている状態です。

しかし、一つひとつの家族には、一つひとつの事情があります。話を聞けば聞くほど、外から見ていただけでは気付かないような心情や、過去の経験に行き当たることがあります。

私もこれまでの活動の中で、色々な形の家族を見てきました。子どもを支援する立場にいると、こちらが子どもに一生懸命関わろうとすればするほど、その親に対して、どうして私たちが求めているように子どもに接してくれないのだろう、と思ってしまうこともあります。

それでも、家族の中で起きていることは、どれだけ情報を集めたとしても、第三者が全てを理解することはできません。その家族にしか分からない関係性や感情があります。もしかしたら、まだ知らない事情が他にもあるのかもしれません。

支援者としてできることは、一人ひとりから話を聴いて、理解しようと距離を縮めることだけだと思います。それぞれが持つ家族像から無意識に先入観を持ったり、期待してしまったりすることは誰にでもあることですが、それを認識した上で相手と向き合うことが大切だと思うのです。

チームワーク

③チームとして関わる

他の人には話していないような気持ちや事情を、ふと打ち明けられることがあります。関わりが長くなればなるほど、相手について知っている内容も多くなっていきます。

「あなただから」と頼りにされることは、信頼関係の証であり、とても嬉しいことです。そんなときも、個人として受け止めるのではなく、あくまでも「支援者の立場で関わった自分」として受け止めるということを認識しておくことが大切です。所属している団体や機関の一人であるという立場を忘れないということです。

そうすることで、一人では抱えきれないようなことがあったときには、自分の職場の人にも共有し、チームとして受け止めることができます。一人では解決出来ないことがあっても、複数の人が関わることで答えが見えたり、違い見方ができたりすることがあります。

中には、他の機関や専門家に相談する必要がある場合もあります。的確なところに助けを求められるように、いつもチームで関わることを意識してほしいと思います。

考える女性

④自分を知って向き合う

誰かの経験やトラウマに触れるとき、それに共感する気持ちが強ければ強いほど、受け止めている自分も疲れてしまったり、過去を思い出してしまったりすることがあります。

「共感性疲労」という言葉もあるように、人と向き合うとき、実際に意識できていることだけでなく、自分の無意識の部分にも影響があります。

過去に自分自身が同じような経験をした場合や、身近な人がそうであった場合など、近い経験があればあるほど、相手の話に共感できるというプラスの面と、共感しすぎて疲れてしまったりつらい経験を思い出してしまったりするというマイナス面の両方があります。

いつでもフラットな状態で人に向き合えるようにするためには、まずは自分のことをよく知っておくことが大切です。

例えば、子ども時代に自分自身がいじめられた経験があるという人は、相手からいじめの相談をされると、すごく緊張してしまい冷静に受け止めることができない、という場面もあるかもしれません。

無理に経験に蓋をして対応するということではなく、こういう話のときは、自分はこんな気持ちになるのだ、というように、自分の心理的な傾向や過去の経験を客観的に把握しておくことで、冷静に対応することができます。

対人援助は短期間では終わらない

これらは全て、子ども支援団体の一員として働く中で実感してきたことです。人を支援する活動は、短期間では終わらないことがほとんどです。そして、続ければ続けるほど多くの人に出会い、簡単に結論を出せないからこそ悩むことも多くなっていきます。

今回お伝えしたことをヒントに、これから活動を始める人が少しでも長く活動が続けられること、そして、支援を必要としている人に一人でも多く出会えることを願っています。

NPO法人チャイルドラインみやぎ 岩切千佳

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