ボランティア教育格差

渋谷スタディクーポンのブラザー・シスター養成研修に行ってきた!-面談を通じて子どもたちの可能性を引き出す!

今井悠介・氏(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)や安田祐輔・氏(NPO法人キズキ)

「渋谷スタディクーポン」は、東京都渋谷区内の経済的な理由で塾に通えない高校受験生・中学3年生に対して、登録された学習塾等で利用できる20万円分のクーポンを2018年4月1日より提供します。

2017年10月・11月にクーポンの原資となる寄付を募り、731名から14,053,500円の寄付が集まりました。その後、2018年1月~3月で渋谷区内の中学校を通じてクーポン利用希望者を募りました。また、同時期からクーポンの利用先となる教育事業者の募集を開始しました。

「渋谷スタディクーポン」では、ブラザー・シスター(大学生・社会人ボランティア)がクーポンを利用する中学3年生と毎月面談を行い、進路や学習の相談に応じます。ブラザー・シスターは、様々な背景をもった子どもたちと信頼関係を築いていくために必要な知識やスキル、考え方を学んだり、ブラザー・シスター自身が活動をするうえで生じた不安や悩みを解消し、安心して面談に取り組むために、専門家によるサポート体制(=研修制度)を整えています。

2018年1月・2月にブラザー・シスターの募集があり、今回は、3月3日に行われた養成研修に伺いました。養成研修は、スタディクーポンの寄付を集める際に、クラウドファンディングの協力を受けた(株)CAMPFIREのオフィスで行われました。

クラウドファンディングの協力を受けた(株)CAMPFIREのオフィス

スタディクーポンのミッションと課題の背景

午前の前半は、プロジェクトの中心となっている今井悠介・氏(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)や安田祐輔・氏(NPO法人キズキ)からスタディクーポンの目的や経緯、活動内容などプロジェクト全般について説明がありました。

親の経済力によって、子どもが学習塾などの学校外教育費にかけられる費用に格差が生じています。この格差が社会全体の応援で埋めていくことができることであり、今回の取り組みがそのモデルとなります。参加者の多くが過去に学習塾や予備校などに通っていた経験があり、親の所得によって機会が左右されることに問題意識を感じていました。

各団体が行っていたこれまでの支援の経験から低所得世帯の子どもたちの具体的な状況についても話がありました。「低所得世帯の子ども=○○である」という画一的なものはなく、それぞれの子どもたちによって、十人十色の状況があり、抱えている悩みや問題も違い、一人ひとりの寄り添っていくことの大切さが強調されていました。

ブラザー・シスターの活動

午前の後半では、実際のブラザー・シスターの活動について、どのような流れで行われるのか、また、活動上での注意すべき点、規定・規約などについて、マニュアルに沿って説明されました。養成研修以降も2ヶ月ごとに定期研修が行われ、継続的な活動のサポートが行われる予定です。

【ブラザー・シスターとは】
ブラザー・シスターは、子どもが将来自ら望む生き方が得きるようにクーポンの利用サポートや学習・生活相談等を通じて、子どもたちの可能性を引き出すお兄さん、お姉さんです。

【ブラザー・シスター(BS)の5つの行動規範】
1.BSは子どもたちを否定せず、ありのままの彼・彼女たちを受け入れます。
2.BSは子どもたちと共に喜びを分かち合います。
3.BSは子どもたちが苦しいときや助けを求めたときは、冷静に受け止め仲間やスタッフに共有します。
4.BSは子どもたちの置かれている状況に応じた情報や選択肢を提供します。
5.BSは悩みや困難を抱えているBSがいるときには声をかけ、共に支え合います。

マインドセットとコミュニケーションを学ぶ

午後からは、「子どもの孤立」という社会課題に対して、コミュニティユースワーカーの養成などに取り組んでいるNPO法人PIECESから小澤いぶき・氏(代表理事・児童精神科医)、斎典道・氏(理事・社会福祉士)、青木翔子・氏(理事)が講師を務めました。ブラザー・シスターとして、子どもたちとの面談を行う際に、重要となる考え方を学び、コミュニケーションのトレーニングを行いました。

コミュニティユースワーカーの養成などに取り組んでいるNPO法人PIECESから小澤いぶき・氏(代表理事・児童精神科医)、斎典道・氏(理事・社会福祉士)、青木翔子・氏(理事)

まずはじめに、ブラザー・シスターの根底となるマインドセットに関する説明を受けました。子どもと打ち解け、信頼関係を構築することが第一であり、それが出来たうえでの進路や学習の相談だということが繰り返し伝えられました。

ブラザー・シスターは、遊びや学習などのプログラムを行うことなく、対面での個別面談のみを行います。限られた面談活動の中で、充実したコミュニケーションを行えるように、共感やリフレーミングなどのポイントについて、実際の面談場面を想定したワークを交えながら学びました。

次に、今回、支援の対象となる中学3年生の理解を深めるため、思春期の子どもたちがどのような特徴があるのか講義がありました。表面的に見えている状態や言動は、氷山の一角であり、その背景に目を向けることが大切です。身体は大人と変わらない状態であったとしても、自分の感じたことや気持ちを言語化するには、未熟な面があります。

また、家庭や学校の状況によって、心身がより不安定な状況になる可能性があります。こういった前提を理解することは、面談を行ううえでの留意点となります。

ブラザー・シスター養成研修

最後に、面談でのコミュニケーションをより良いものとしていくためには、事後のふりかえりを通じて、客観的な視点で改善に繰り返し取り組んでいく重要性が伝えられました。

実際に面談のロールプレイを行いながら、どのようにふりかえりを行っていくと良いのか、参加者のグループでワークを行い、フィードバックをしました。実際にやってみることで感じた難しい点も多かったようですが、それ以上に面談を行っていくうえのでの大切な気づきがあったようです。

4月からは、実際にクーポンの提供とブラザー・シスターによる面談がはじまります。対象となる中学3年生たちの良き兄や姉として、サポートができるように定期研修などを通じて、プロジェクト全体で指導を行っていくということです。本ウェブマガジンでも引き続き、スタディクーポンの取り組みの経過を取材していきたいと思います。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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