教育格差

家庭や地域による学校外教育費の格差が鮮明に-学歴・勉強を重視し、早期化の傾向が強まる

水泳

昨今、子どもの教育費に関する調査について、文部科学省(平成28年度子供の学習費調査)、ベネッセ教育総合研究所(学校外教育活動に関する調査2017)、ソニー生命保険株式会社(子どもの教育資金に関する調査2018)など、官民問わず次々と結果が公表されています。

教育費というと、主に学校に関する「学校教育費」と、塾や習い事に関する「学校外教育費」の2つに分けられます。

学校教育費が公立か私立かによって、負担が大きく異なるということは広く知られています。また、学校外教育費についても、家計の大きな負担となっていることが各調査からも指摘されています。学校外教育費は、家庭の世帯年収や居住する自治体の人口規模によって、大きな差が生じています。

ベネッセ教育総合研究所:学校外教育活動に関する調査2017(ベネッセ教育総合研究所:学校外教育活動に関する調査2017

学歴や勉強を重視する親の意識が高まっている

ベネッセ教育総合研究所の調査によれば、「子どもにはできるだけ高い学歴を身につけさせたい」と考える親は年々増加しており、64.4%の親が「とてもそう思う」と「まあそう思う」と回答しています。

また、ソニー生命保険株式会社の調査によれば、「子どもの学力や学歴は教育費にいくらかけるかによって決まると感じる」という質問に対しては、65.6%の親が「非常にあてはまる」と「ややあてはまる」と回答しています。

ベネッセ教育総合研究所:学校外教育活動に関する調査2017(ベネッセ教育総合研究所:学校外教育活動に関する調査2017

ソニー生命保険株式会社:子どもの教育資金に関する調査2018(ソニー生命保険株式会社:子どもの教育資金に関する調査2018

上記に対応する形で、ベネッセ教育総合研究所の調査では、「運動やスポーツをするよりももっと勉強をしてほしい」「音楽や芸術の活動をするよりももっと勉強をしてほしい」という勉強を重視する親の意識は高まっています。

ソニー生命保険株式会社の調査でも、2017年から2018年の「スポーツや芸術などの習い事」が月額費用は減少している一方で、「教室学習費用」の月額費用は増加しています。「早期の知育や英才教育は子どもの将来のために重要だ」と考えている親も約7割となっており、早期化する傾向も強まっていくと考えられます。

ベネッセ教育総合研究所:学校外教育活動に関する調査2017(ベネッセ教育総合研究所:学校外教育活動に関する調査2017

ソニー生命保険株式会社:子どもの教育資金に関する調査2018(ソニー生命保険株式会社:子どもの教育資金に関する調査2018

学歴によって生涯年収が大きく変わることは広く知られています。実際に、「子どもの貧困」問題に対する施策として、各自治体で学習支援に力を入れられています。親としては、将来の社会の見通しが不透明な状況の中で、できるだけ早くから確実性の高い教育として塾などの学習費用に支出をしていることがわかります。

入試改革に備えた学力を身につけさせておきたい

2020年度(2021年度入試)より、高大接続(大学入試)改革が実施される予定です。

従来の大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト(仮称)」では、従来の知識を重要視した形式ではなく、「思考力・判断力・表現力」(マーク式問題だけでなく、記述式問題を加えるなど)、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(大学入学前の学習や多様な活動等に関する評価の充実:調査書・提出書類等の改善)も加えて評価する形式へと変わっていきます。

大学入試センター試験

特に英語については、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を適切に評価するため、民間の資格・検定試験を活用することになっています。まだ、どのように変わるのか明確になっていない部分もありますが、従来の暗記中心よりも、多面的な学力を身につけている必要が出てきます。

このような今後の方向性から考えても、学校だけに頼らず、対応の早い民間の塾などを活用して「よりしっかりとした形で学ばせる必要がある」と親が考えるのは、自然な流れだと思います。

多様な体験から育む資質・能力がより一層重要に

2024年度に新学習指導要領を前提としたさらなる改革が行われることにもなっています。

新学習指導要領では、新しい時代に求められる資質・能力を子供たちに育む「社会に開かれた教育課程」が重視されてます。この中では、他者と協働して課題解決に取り組んだり、豊かな感性や道徳心などが求められており、教科学習からだけで育むことが難しく、スポーツや芸術、体験活動などの多様な経験が必要となります。

従来のAO入試もより一層広がり、大学の教育目標や特色を活かした個別の入試も多く出てくると考えられます。小論文、グループディスカッション、プレゼンテーションなどの試験を考えても、本人がしっかりとした意見を述べられるだけの基礎的な経験が必要です。

どれも入試だからといって一朝一夕に伸ばしていくことが困難な資質・能力となり、子どもの適性や意向を踏まえ、バランス良く学びの機会を設けていくことが大切です。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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