子育て・育児

どうやって子どもの心に火をつけるのか?-子どもの成長の原動力を生み出す3つの経験

野球のコーチと子ども

なぜ、その仕事に就いたのですか?

会計士として活躍しているH氏に、「なぜ、その仕事を選んだのですか?」と聞いたら、「野球をやっていたため」との回答。会計士と野球、結びつきませんね。

紅白歌合戦でメジャーデビューしたKさんに、「サラリーマンを辞めてミュージシャンを目指すことになった理由は」と聞いたら、「素直になれたから」と回答。うーん、どういうことでしょうか。

商社系の上場会社で社長を担っているT氏に、「どうやったら社長になれるのですか?」と聞いたら、「小学生を続ければいいんだ」との回答。意味、わかりませんね。

最初の事例は、こうです。

H氏は、小学生・中学生時代、下手くそでレギュラーになれなかったが、野球は大好きで続けていた。一方、物事を観察し、それを記録し、後に分析するということが得意で、理科の実験ではいい評価を受けていた。そしてある時、スコアラーをやることになり、選手の動きを観察し、記録し、分析してみた。すると、コーチや部員から、「お前、スゴイじゃん、ありがとう」と言われた。

「大好きな」野球を続けていたら、観察・記録・分析という「得意分野」が、スコアラーという「他人に役立つ」ことにつながったH氏は、大学に入り「会社の成績を観察・記録・分析する」という仕事があることを知り、会計の勉強をした。

「どの大手企業に入れるか」ではなく、「どんな会計の仕事が出来るか」で就活をしたH氏は、希望通り大手のコンサルティング・ファームに就職し、今でも第一線で活躍している。

2番目のミュージシャン、20代では「生活のために稼ぐこと」で仕事を選び、30代では「好きな事を稼げることに関連付け」て仕事を選び、40代では「心の奥底にある”やりたいこと”に素直になって」仕事を選び、今に至っている。

3番目の上場企業の社長は、幼児時代から面白い遊びを考えては「この指とまれ」で仲間を集めていた。また小学生時代には自分で野球チームを作り、監督兼選手で地区優勝を果たした。その後も「この指とまれ」を続けていたら、いつのまにか会社の社長になっていた。

「好きな事」x「得意な事」x「役に立つこと」

私の連載は今回で3号目。1号では、教育の目的は「子どもを自立した社会人」に成長させることで、そのために家庭、学校、地域の役割は欠かせない。ところが、教育に良好な状況ではない家庭、学校、地域が増えてきているために、自立の道からほど遠い子ども・若者も比例的に増えている。という話をしました。

2号では、親の過干渉は、我が子を「口を空けてエサを待つペンギン」化させてしまい、結果、我が子が就職できない、あるいは就職できてもワーキングプアになってしまう。子どもが自立した社会人になるためには、自己肯定感、達成意欲、自己効力感の3つが必要で、その中で一番難しいのが「達成意欲」を持たせること。という話をしました。

では、子どもに達成意欲を持たせるにはどうすればいいか?

それは子どもに、「好きなこと」を続けさせ、「得意なこと」を優先させ、「役に立つ」経験をさせることです。言い換えると、「継続できる資質」と、「極めようとする力」と、「貢献したいという欲求」の3つこそ、達成意欲の原動力になるのです。これらを説明した図をご参照ください。

子どもに達成意欲を持たせるにはどうすればいいか

「サッカーで飯が食えるはずはない!」

「いい高校、いい大学、いい会社に入るために、ギターの道は諦めて、塾に行きなさい!」

こんなやり取りをよく耳にしますが、少なくとも中学生時代までは、好きなことを思う存分、子どもにやらせてあげてください。それが例えゲームでも構わないでしょう。「継続できる資質」は、好きなことを続けていく過程で、身に付いていきます。

子どもに達成意欲を持たせるにはどうすればいいか

学校の成績、Aが1教科であとはCの子は「ダメねえ」と言われ、オールBを要求される。部活か教室で活躍できないと、「出来ない生徒」と言われてしまう。でも、全ての子どもに得意分野ってあります。そしてその得意分野を、限界を定めずドンドン極めさせてください。学校の教科はもちろん、それ以外でも構いません。「極めようとする力」は、得意分野でのみ、身に付いていくものです。

子どもに達成意欲を持たせるにはどうすればいいか

幼児なら家庭で、小学生以上なら地域社会や学校で、「役に立つ」経験を、たくさんさせてください。成長の原動力となるのが「~したい」という欲求ですが、その中で「役に立ちたい」は最高位レベルの欲求であり、全ての人に備わっているものです。

仕事と同じ

話は変わりますが、仕事の本質とは何でしょうか?それは、「専門性や得意なこと」を、「継続的に提供」し、社内外の人に「役に立つ」。その見返りとして報酬をもらう、ことです。これ、まさに達成意欲の3大要素と同じですね。

子どもに達成意欲を持たせるにはどうすればいいか

専門性や得意分野はいわゆる科学者とか弁護士だけに当てはまるのではなく、一般的な営業マンだって「セールスの専門家」だし、事務業務だって「処理能力」という得意分野が求められます。この専門性や得意分野を、1回きりではなく、顧客や同僚に、継続的に提供し続ける。すると、提供を受けた側のニーズを満たす、つまり役に立つという結果に結びつく、ということですね。

そして、この「継続(=好きなこと)」と「得意なこと」と「役に立つこと」が重なり合ったところが、職業となるのです。同じように、子どもに「達成意欲」を持たせるには、好きなこと、得意なこと、役に立つことの3要素が大切で、その重なり合ったことが見つかると、達成意欲に火が着き、加速されます。

Author:川島高之
1964年生まれ、1987年:慶応大学卒、三井物産に入社、2012年:系列上場会社の社長就任、「イクボス式経営」で利益8割増、時価総額2倍、残業1/4を達成。2016年:社長退任、フリーランサーとして独立。一方、小中学校のPTA会長(元)、少年野球コーチ、イクメンNPO「ファザーリング・ジャパン」理事、子ども教育NPO「コヂカラ・ニッポン」代表でもある。
子育てや家事(ライフ)、商社勤務や会社社長(ビジネス)、PTA会長やNPO代表(ソーシャル)という3つの経験を融合させた講演が年間300回以上。
NHK「クローズアップ現代」では「元祖イクボス」として特集され、AERA「日本を突破する100人」に選出、日経、朝日、読売、フジTVなど多数メディアに。
著書:いつまでも会社があると思うなよ!職場のムダ取り教科書
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