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日本の教育の大転換!?義務教育の多様化・自由化がはじまる!-学校だけが義務教育の担い手ではない時代へ

ランドセルを背負った小学生

義務教育=小学校、中学校が担うという時代が終わろうとしています。一定の条件をクリアすれば、家庭学習やフリークールでの学習活動が義務教育課程での学びとして認められるようになろうとしています。

NPO・市民団体が大小と問わず自由に学びの場を作り、義務教育を担うことができるようになる日も近いかもしれません。これは、日本の戦後教育の大転換といっても良いほどの出来事です。

なお、これまでのフリースクールの状況を知りたいと言う方は、以前の記事をご確認ください。(2014年12月号 vol.22:目指しているのは、再登校か?オルタナティブ教育か?-日本のフリースクール・フリースペースの現状と課題)

昨年9月には、安倍首相がフリースクール「東京シューレ」を視察し、文部科学省には「フリースクール等プロジェクトチーム」が設置されました。

昨今では、超党派の両議連での動きも活発化しており、議員立法としての制定も現実化しつつあります。今回の記事では、現在どのような仕組みが構想され、どのような可能性と問題点があるのか整理したいと思います。

多様な機会を確保するための新しい仕組みとは?

現在、自民党の河村建夫衆議院議員が顧問、同党の馳浩衆議院議員が座長を務める超党派両議連の立法チームが「義務教育の段階における普通教育の多様な機会の確保に関する法律案(仮称)」・略称「多様な教育機会確保法(仮称)」を検討しています。

素案では、多様な教育機会を認めていく方針で、本人や保護者が、学校以外での学びの場を選択した場合、フリースクールを運営するNPO法人や学校などのアドバイスやサポートを受けながら「個別学習指導計画」を作成し、市町村の教育委員会に提出します。教育委員会は「教育支援委員会」を設けて、計画の審査・認定します。

認定を受けた計画に基づき、スクールソーシャルワーカーや市町村教育委員会の支援委員が定期的に訪問し、学習に関するアドバイスやサポートをするなどの支援を行い、学習の質を保証します。計画通りに学習が修了すると、学校からの卒業証書に代わり、教育委員会から修了認定証・高校受験資格が与えられるようになります。

従来の枠組みとどのように違うのか?

現状の枠組みの中でも小中高校において在籍している学校長の裁量で、フリースクール等の民間施設に通った期間を、学習指導要録上出席扱いでき、進級・卒業も可能です。

しかしながら、学校長の裁量にも幅があり、「個別学習指導計画」の作成や「教育支援委員会」による審査・認定を行うことで、より明確な流れで手続きを行うことができるようになります。

また、従来では、学校を長期に欠席していても、現実には出席扱いにして卒業させる「形式卒業」もあり、実質的な学力の質を保証できていないなどの問題もありました。これまで暗黙的に許容していた状況に対して、より明確な踏み込んだ対応を公式に行っていこうというのが今回の法案のポイントです。

従来であれば、私立学校のように運営する法人に対して一定条件を加えて審査を行い、認可を受けるという流れになりますが、フリースクールなどに対して一定条件を加えて審査を行っていくことは、趣旨としている多様な教育機会を設けることに反することになります。

重要なのは、子ども自身が必要な学力を身につけていく過程・計画、その履行状況に対して、審査・認定を行っている点です。これによって、義務教育としての一定のスタンダードを共有しながら、様々な形での教育を受けることができるようになります。従来の公立私立の学校だけが義務教育を担ってきた時代も終わり、多様な担い手が義務教育を担うことができるようになります。

多様な機会の費用を公的支援できるか?

しかしながら、費用負担の面では、まだまだ課題があります。現状のフリースクールでは、財政上の公的支援はなく、塾と同様の保護者の全額負担となります。

素案の中では、国や自治体に対して、多様な学習機会を確保するよう希望した家庭に対して、財政上の支援を行うように書かれていますがあくまでも「努力義務」にとどまっています。フリースクールなどが義務教育の一つの担い手となったとしても、学校のように財政上の公的支援がないのは大きな問題です。

財政面の支援のあり方についても、従来の学校の運営組織に補助していくものではなく、バウチャー制度(利用者にクーポンのようなチケットでサービスを利用し、その費用の負担を発行者が代行する仕組み)で利用する家庭に対して公的支援を行っていく形が良いと考えられます。あくまでも行政機関が多様な教育の審査を行うのではなく、利用する家庭にその審査をゆだねていくことの方が適切です。

素案に対し、自民党内の一部には「義務教育はきちんと学校が引き受けるべきものだ」との反対意見は根強くあります。また、メディアの一部では、「まず、学校を良くする施策こそ優先すべきだ」という主張もあります。

日本国民は、法律の定めるところにより「教育を受ける権利」「教育を受けさせる義務」の双方を有していることから義務教育が設けられています。現在、小学校と中学校を合わせて約12万人を超える子ども達が不登校となっています。子ども達が学力を身につけていくことはとても大切なことですが、みんなが同じ方法で身につけようということの方が無理のあるのではないでしょうか?

近い将来、子ども自身が自分に合った学び方を選択できるようになり、いつしか不登校という言葉すらなくなる時代もやってくるかもしれません。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。

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