こども食堂

いかにして経済的な事情を抱える子どもの「食」を支えるか?(前編)-コロナで経済的な困窮が深刻化。感染症対策からこども食堂も苦慮。

経済的な事情を抱える子どもの「食」を支える

コロナ禍で初めて冬を迎え、全国各地で新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が再び急速に拡大しています。この広まりは「第三波」と言われ、増加傾向はしばらく続くと考えられます。

コロナの影響が長期化する中、多くの人が様々なストレスや困りごとを抱えています。特に経済的な困難を抱える子育て家庭の「食」については、急を要する課題です。

「食」は生きていく上で必要不可欠なものです。それが今、長期化するコロナの影響で著しく脅かされている状況があります。本記事では、その具体的な状況や、コロナ禍においてどのように解決していくのか、その具体策について検討していきます。

ひとり親家庭の「食」は、予断を許さない状況

まず、経済的な困難を抱える家庭の多くがひとり親家庭です。労働政策研究・研修機構が平成30年に実施した「第5回子育て世帯全国調査」によると、母子家庭の相対的貧困率は50%を超えています。

ひとり親家庭の支援に取り組む「認定NPO法人しんぐるまざあずふぉーらむ」が今年9月、ひとり親世帯を対象に実施したアンケート結果によると、「収入減」と「収入が0に」を合わせ全体の約7割弱が、収入に関してマイナスの影響を受けていることがわかりました。これは児童扶養手当受給者か否かで、大きな差は見られませんでした。

また、生活状況に関するコメントを何点か抜粋します。

・自分は1日1食、子供はお休みの日は2食。
・子どもの朝ご飯を遅らせて、お昼ごはんをお菓子にしてから、夜ごはんを食べさせている。
・昼ご飯を抜き、ご飯は基本子どもが残したものを食べている。
・9円のうどんと18円のもやし、キャベツをぐるぐるまわしています。

子どもの食事を優先し、親の食事は後回しにしている様子がわかります。また、お菓子や特定の食材が多くなってしまうなど、栄養バランスに偏りのある食事になっていることもわかります。

また、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を運営する「認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン」が、今年の9月に「グッドごはん」利用者を対象に実施したアンケート結果も参照します。

「食事の回数」の「親の食事回数」を見ていくと、1日3回が約4割弱、2回が約5割、1回が約1割強となっていました。1日に1回しか食事ができない親が1割強いるという状況です。

また、「子どもの食事回数」を見ていくと、給食のある平日の食事回数は3回が8割以上となっていますが、給食のない夏休みの食事回数になると、2回の割合が増え、逆に3回の割合が減っています。給食の有無で、子どもの食の状況が大きく左右されることがわかります。

また、実際の食事に関するコメントも見ていきます。

・子供にひもじい思いや、成長期に必要な栄養を欠かす訳にはいかないので、自分の食事は後回しになり、COVID-19以前より体重が20kg以上減った。
・(子どもは)登校できた日だけ、食べる。
・食費を安く済ませる為、インスタントラーメンや、カップ麺などが増えた。

先に紹介したアンケート調査同様、親が食事を制限することで子どもの食事を確保している様子が見て取れます。今後も長期化すると思われるコロナの影響により、食の状況はさらに悪化していくことが懸念されます。

新型コロナウイルスの感染拡大による生活への影響に関するアンケート認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン:新型コロナウイルスの感染拡大による生活への影響に関するアンケートより

これまで通りの形式での再開が困難な「こども食堂」

これまで、経済的に困難な家庭の食を支えてきた「こども食堂」も、コロナの影響で苦しい状況に置かれています。「NPO法人全国こども食堂支援センターむすびえ」が、全国のこども食堂を対象に9月に実施したアンケート結果を見ていきます。

「みんなで一緒に食べる」形でこども食堂を開催している割合は、約15%にとどまっています。感染症対策の観点から、一堂に会する形で実施することが難しくなっていると思われます。

その代わりに、「お弁当の配布」や「食材等の配布」の割合は50%を超えています。現在の状況に合わせ、従来とは方法を変えて食の支援に取り組んでいる団体が増えていることがわかります。

しかし一方で、課題もあります。お弁当は衛生管理が難しく、食中毒も発生してしまっています。できるだけスムーズに提供するため、指定の日時で先着順となっていることが多く、受け取れない家庭が出てくるという課題があります。また、日時が指定されると、どうしても密を作り出してしまいやすい状況になってしまいます。

また、食材配布(フードパントリー)は、賞味期限などの観点から、乾物や炭水化物が中心になっていまい、栄養バランスの偏りが心配される面もあります。

こども食堂の現状&困りごとアンケート結果NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ:こども食堂の現状&困りごとアンケート結果より

危機に瀕する、飲食店の経営状況

一方、まちで「食」を提供する飲食店の状況はどうなっているのでしょうか。

東京商工リサーチが実施した「飲食店の経営状況」の調査によると、2020年1月~8月の「飲食業」の倒産は583件となり、前年同期比13.2%増へと達しました。通年(1-12月)では、年間最多を記録した2011年の800件を大幅に上回る可能性があると言われています。

総務省が実施している「サービス産業動向調査」(2018年版)によると、飲食店に従事している常用雇用者約350万人のうち、正社員・正職員は約67万人、正社員・正職員以外は約286万人であり、8割以上が非正規雇用であることがわかります。

経済的に困難を抱えている家庭の多くは、非正規雇用で働いています。飲食店の経営が厳しくなることにより、従業員の勤務時間の短縮や解雇などが発生し、家庭の経済状況がさらに悪くなってしまう可能性があります。

ここまでお伝えしてきた通り、コロナ禍において子育て家庭の食や、まちの飲食店は大きな課題を抱えています。それに対して、同じ社会で生きる私たちはどのような支援ができるのでしょうか。

後編の記事では、コロナ禍における新たな食支援の取り組みについて、ご紹介していきます。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。

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