こども食堂

「子ども食堂」は、「おとな食堂」になっていないか?-大人の理想と都合で開店して閉店!子どもの声なき声に耳を傾けて!

公益財団法人「あすのば」(子どもの貧困対策センター)の子どもサポーターの三宅正太と申します。

2015年2月から大学の仲間と「はちおうじ子ども食堂」をはじめ、2016年4月から「あすのば」に関わりました。「子どもの貧困」課題点・問題点に対して、当事者出発ではない自分に何ができるのかを日々悩みながら活動をしています。

まだメディアなどで大きく報じられる前から子ども食堂に関わり、今、現場で一番強く感じるのは、昨今の子ども食堂の全国的な拡大を一時的なブームで終わらせずに、子どもにもっと寄り添える社会の流れにつながってほしいということです。

子ども食堂を「やりたい!」から「はじめました!」へ

「子ども食堂をやりたいです」と言ってくださる方は、昨年から今年にかけてたくさん増えました。一昨年では、考えられないくらいに「子ども食堂をやりたい!」が「子ども食堂をはじめました!」となって、とても嬉しいです。

それまで「日本に子どもの貧困があるんだ」と問題を知った人たちが、「何かしたい」という気持ちを持っても、実際に何をすればいいのかわからずに、行動に結びつかなかったこともあったかと思います。それが子ども食堂という形で具体的な取り組みになったことは、日本全体で一歩進めたということです。

子ども食堂が増えて欲しい大きな理由は、実際に子どものために動く人を増やすことであり、その先に、子どもが様々な出来事で困っている時に対応してくれる場所が増えていくことです。

はちおうじ子ども食堂:地域の大人、大学生ボランティア、時には子どもと一緒にご飯をつくってます。(はちおうじ子ども食堂:地域の大人、大学生ボランティア、時には子どもと一緒にご飯をつくってます。)

子ども食堂は、手軽にはじめやすく、やめやすい

子ども食堂が支援モデルとして広がることは嬉しいですが、同時に危険性も感じています。子ども食堂は、調理と食事ができるスペースを一時的に借りることができれば、手軽にはじめられます。

逆にやめることのハードルが低いことも事実です。全国に広がっていく一方で、担い手や場所、資金の問題から子ども食堂の取り組みをやめているところもすでに出てきています。はじめることは簡単でも、継続していくことはとても難しい活動です。

多くの子ども食堂がボランティアによって担われている中で、社会貢献をしているという充実感はあっても、子どもの貧困対策としての効果がすぐに表れることもありません。

多くの子ども食堂は、「貧困状態にある家庭向け」というラベルがあると、参加し難くなるために目的をあまり強調しないようにして、誰しもが参加しやすい食堂づくりを目指しています。

そうなっていけばいくほど、多くの方が食事に来て、人・資金・物が不足し、本来的に支援を必要としている経済的に困難な家庭にどれだけ支援を届けられたかもわからなくなります。子ども食堂のジレンマが存在するのです。

子ども食堂のオープンは、誰しもが喜びます。しかし、一度できた子ども食堂がつぶれてしまうと、大人が「仕方なかったね」「短かったけどがんばった。お疲れ様!」と割り切ることはできても、そこを必要としていた子どもほど悲しい経験になります。

大人は長い年月生きてきただけあって、学生時代からの人間関係や、職場の人間関係など、ひとつ居場所が奪われてもほかの選択肢があります。しかし、子どもにとっては、第三の居場所といわれるように、基本的に家と学校以外で新たな居場所をつくることは難しいのです。

貧困という状況で、ただでさえ、居場所が奪われているというのに、せっかくできた居場所がなくなるのは、厳しい状況に追い打ちをかけているようなものです。やめる理由は、運営の資金や人手の問題などやむを得ない理由なのかもしれませんが、子どもにとっては、それはただの大人の都合であって、大人の都合でしんどさを被っている子どもにそんな言い訳は成り立ちません。

はちおうじ子ども食堂:子ども食堂の玄関。毎回手書きの看板を前に出しています。毎回みんなでつくる子ども食堂を意識しているため。(はちおうじ子ども食堂:子ども食堂の玄関。毎回手書きの看板を前に出しています。毎回みんなでつくる子ども食堂を意識しているため。)

「子ども食堂」への期待の高まりが、子どもを参加し難くさせる

子ども食堂が子どもの貧困対策としてできることはなんでしょうか?十分にご飯が食べられない状況に、食事・食料を提供することで、貧困のしんどさを和らげることでしょうか?もしくは、居場所として地域の中に子どもが頼れるつながりを作ることでしょうか?大人は無意識のうちに子どもに理想を押し付けてしまいます。

・栄養バランスがとれているご飯を食べてほしい
・地域の野菜を食べてほしい
・手洗いや箸の使い方など、食事のマナーを身につけてほしい
・地域の人に囲まれながら、みんなでご飯を食べる楽しさを知ってほしい

食育や地産池消、地域交流、異世代交流などの多様なことを子ども食堂に期待される方はたくさんいます。

しかし、この期待を押し付けることで、子どもの貧困対策として逆効果となることがあります。

「食事前には手を洗ってね」「ここに来たらみんなで一斉にご飯食べようね」「野菜を全部食べてね」と大人から急に「良い子ちゃん」を求められても、経済的に困難を抱えている家庭の子ども達の多くは、自己肯定感が上手く育っておらず、「今の自分が何も出来ていない」「出来ていない自分はダメな子だ」と感じてしまい、居づらくなってしまいます。

大人の理想と子どもの置かれている現実の差が、子どもを参加し難くさせてしまっているのです。

すでに子ども食堂の第一人者も警鐘を鳴らしているように、子ども食堂が子どもの貧困対策としてできることは、実は私達が期待している以上に少ないのです。

子ども食堂が子どもの居場所として機能するには、まずありのままの子どもを受け入れなければいけません。そうなると、子どもを理想に近づけていく過程というのは、とても時間がかかるものであり、貧困で緊急性の高い問題に対処するには更なる工夫が必要になります。

はちおうじ子ども食堂:提供している食事の写真。食器もすべてご寄付で頂きました。なるべく子どもの味覚や要望にあわせて作ってます。(はちおうじ子ども食堂:提供している食事の写真。食器もすべてご寄付で頂きました。なるべく子どもの味覚や要望にあわせて作ってます。)

子どもの貧困対策としての「子ども食堂」

子どもの貧困と向き合ってきた団体や支援者は、日本にはずっと昔から存在します。

「子ども食堂」という名目でなくとも、現在、みなさんが子ども食堂に期待してイメージされている食支援や、居場所支援みたいな取り組みは無数にあったと思います。

名前がつかないような取り組みをやってきた団体や支援者は、現場の子どもに「これでは自分の言い訳で、子どもに何もできていないんではないかと」悩みながらも、真剣に向き合ってきたからこそ、「そこにくればなんとかなる」という、非常に高いレベルの支援を行うことができたと思います。

実際に「そこにくればなんとかなる」というワンストップの支援は、誰でもすぐに簡単にできるものではありません。また、一人ひとりの子どものニーズに「なんとか応えよう」と工夫されてきたことが、子どもに必要とされて、活動の継続性になりました。地道な取り組みなだけあって、多くの人に知られてない活動が多いです。

一方で、歴史の浅く、ノウハウ等の蓄積の少ない子ども食堂をメインの子どもの貧困対策と期待するのは、もう少し待ったをかけたほうがいいと思います。「これまで子どもと向き合ってきた支援者や団体の姿勢やノウハウから、今の自分たちの状況を照らしてみて、自分たちができること」と、「子どもが必要としていること」を合わせて「話し合う・考える」の過程が必要だと考えます。

はちおうじ子ども食堂:近所や地方の支援者の皆さまから様々な食材をご提供いただいています。(はちおうじ子ども食堂:近所や地方の支援者の皆さまから様々な食材をご提供いただいています。)

「子ども食堂」という名の「おとな食堂」になっていないか?

先に述べてきたことを総じて考えると、子ども食堂はある意味「おとな食堂」になっているのかもしれません。大人の理想でオープンして、大人の都合で月に開催される頻度が決まっていて、大人の都合で参加費が決められていて、大人の理想で良い子ちゃんが押し付けられる、やっている大人だけが充実感を感じている。

本当に子どものためを思うのであれば、子どもが本当に必要としているもの、子どもが本当にしたいことにもっと目や耳を向けてほしいと思います。子どもは言葉以外で、メッセージを発しています。

子どものメッセージと向き合うことで、子ども食堂という手段に終わらず、子どもの貧困対策としてさらに一歩先へ進むことができるのではないでしょうか?

これから活動をはじめる方も、すでに取り組まれている方も「自分の今いる地域で子どもに必要とされる場とは何か?」「自分たちも楽しく出来て、子どものために自分たちができることは何か?」を一緒に繰り返し考えながら、子どもにもっと寄り添える社会の流れを共に作っていくことができればと思います。

Author:三宅正太
特定非営利活動法人「山科醍醐こどものひろば」職員。1995年兵庫県出身。大学生時代に「はちおうじ子ども食堂」を立ち上げる。同時期に公益財団法人「あすのば」の設立に関わり、卒業までこどもサポーターとして都道府県ごとのイベントや子ども若者の合宿などの企画を担当。卒業後は滋賀にある特定非営利活動法人「こどもソーシャルワークセンター」で半年スタッフを経験し、現在に至る。

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