初等教育中等教育

全国学力テストで平均正答率ランキングよりも大切なこと-日本の子どもの現状を知る③

勉強する子ども

先日の8月下旬に平成25年度全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果(以下、全国学力テスト)が文部科学省より公表されました。毎年、全国の小学6年生と中学3年生に対して、算数・国語の二科目について、抽出又は悉皆調査が実施されています。(※平成25年度は悉皆調査)

学力テストが公表されると必ずといっていいほど、「◯◯県が一番!」、「◯◯は最下位だ!」と都道府県の平均正答率ランキングの話題が上がります。確かに良い結果を出している事例から学び、活かしていくことは大切なことです。しかしながら、この平均正答率ランキングの話題が大きすぎて、日本の教育を捉えるうえで重要な結果が忘れられてしまっています。

今回の記事では、前回の記事、前々回の記事に引き続き、そのもう一つの結果について検証していきたいと思います。

コミュニケーション能力

Q.友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか?

友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意ですか?

Q.友達に伝えたいことをうまく伝えることができますか?

友達に伝えたいことをうまく伝えることができますか?

Q.友達と話し合うとき、友達の話や意見を最後まで聞くことができていますか?

友達と話し合うとき、友達の話や意見を最後まで聞くことができていますか?

Q.一人一人の人間には考えや性格などに違いがあるということを大切にしていますか? 

一人一人の人間には考えや性格などに違いがあるということを大切にしていますか?

コミュニケーション能力に関する調査としていますが、あくまでも自己理解・認識の報告です。「友達の前で自分の考えや意見を発表することは得意」と回答している子は、小学6年生・中学3年生ともに約半数となっています。

また、「友達に伝えたいことをうまく伝えることができる」と回答している子は、小学6年生で約73%、中学3年生で約67%となっており、若干減っていることがわかります。「友達と話し合うとき、友達の話や意見を最後まで聞くことができている」、「一人一人の人間には考えや性格などに違いがあるということを大切にしている」という子は、小学6年生・中学3年生ともに約9割を超えています。

将来に関する意識

Q.将来の夢や目標を持っていますか?

将来の夢や目標を持っていますか?

Q.将来の夢や目標を実現するために努力していますか?

将来の夢や目標を実現するために努力していますか?

Q.将来なりたい職業はありますか?

将来なりたい職業はありますか?将来なりたい職業はありますか?

Q.あなたには「あのような人になりたい」と思う人はいますか?

あなたには「あのような人になりたい」と思う人はいますか?

Q.家の人と将来のことについて話すことがありますか?

家の人と将来のことについて話すことがありますか?

「将来の夢や目標を持っている」と回答している小学6年生は約87%、中学3年生で約73%となっており、学年が上がるにつれて1割以上が夢や目標を持てなくなっています。

この傾向は、「将来なりたい職業がある」という質問に対しての回答も同様であり、小学6年生は約85%、中学3年生で約70%となっています。また、それに対して実現に向けた努力をしている小学6年生は約80%、中学3年生で約65%となっており、実際の努力をしている子は若干少なくなっています。

「あのような人になりたい」と思う人がいると回答している小学6年生は約76%、中学3年生で約69%となっています。日本では、夢=職業と思われがちですが、目指したい大人や先輩などのロールモデルを持っていることも子ども達が将来を考えるうえで有益です。家の人と将来のことについて話すことがあると回答している小学6年生・中学3年生ともに約6割という状況になっています。

自尊意識

Q.ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがありますか?

ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがありますか?

Q.難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦していますか?

難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦していますか?

Q.自分には、よいところがあると思いますか?

自分には、よいところがあると思いますか?

「ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがある」と回答した年度による変化はなく、小学6年生・中学3年生ともに一定して9割を超えています。「自分には、よいところがあると思う」と回答している小学6年生で約75%、中学生で約66%となっています。

「難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦している」と回答している小学6年生は、調査開始年度以降、若干の増加傾向にあり、平成25年度で約75%に達しています。中学3年生についても平成22年度から増加傾向にあり、平成25年度で約66%に達しています。

規範意識

Q.学校のきまり・規則を守っていますか?

学校のきまり・規則を守っていますか?

Q.近所の人に会ったときは、挨拶をしていますか?

近所の人に会ったときは、挨拶をしていますか?

「学校の規則を守っている」と回答している小学6年生・中学3年生ともに約9割を超えています。特に中学3年生においては、調査開始年度以降、増加傾向にあります。また、「近所の人に会ったときは挨拶をしている」と回答している小学6年生・中学3年生ともに約9割を超えています。

特に小学6年生においては、調査開始年度以降、若干の増加傾向にあります。あくまでも子ども自身からの回答ではありますが、規則をまもったり、近所の人への挨拶をする子どもは、 調査開始年度の頃から徐々に増えてきていると思われます。

Q.友達との約束を守っていますか?

友達との約束を守っていますか?

Q.いじめは、どんな理由があってもいけないことだと思いますか?

いじめは、どんな理由があってもいけないことだと思いますか?

Q.友達が悪いことをしたときは注意しますか?

友達が悪いことをしたときは注意しますか?

友人関係では、「友達との約束を守ってる」と回答した小学6年生・中学3年生ともに95%を超えています。また、「友達が悪いことをしたときは注意する」、「いじめは、どんな理由があってもいけないこと」と回答した小学6年生で約78%、中学3年生で約71%となっています。

特に「いじめは、どんな理由があってもいけないこと」だと考える中学3年生は、調査開始年度以降、増加傾向にあります。

Q.人の役に立つ人間になりたいと思いますか?

人の役に立つ人間になりたいと思いますか?

「人の役に立つ人間になりたいと思う」と回答した小学6年生・中学3年生ともに9割以上となっており、平成23年3月11日に発生した東日本大震災後に行なわれた平成24年度の調査で増加しています。若干ではありますが、震災による報道を見た子ども達に影響があったと推測されます。

全三回に渡って全国学力・学習状況調査の結果についてご紹介してきました。あくまでも今回ご紹介できたのは公表されている単純集計・各年度推移ですが、各項目をクロスさせながら統計的な分析をしていくことで、より多くのことがわかってくると思います。

都道府県の平均正答率ランキングなどの表面的な結果に着目するのではなく、子ども達の現状についてきちんとした分析を行い、施策に役立てていく必要があります。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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