2020年から社会に大きな影響が出始めた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
NPO法人ADDS(以下、ADDS)は、福祉制度に則った障害児通所施設を直営で3箇所運営しており、施設のアルコール消毒やマスク着用、利用者親子への説明やケアにまず追われました。
さらに、「感染予防のため外出を自粛していて通所が難しい」という利用者向けのオンライン支援プログラムの整備、経営の維持、雇用の維持、利用者親子とスタッフの安全確保、などの観点から様々な行政対応や意思決定に目まぐるしく追われました。
療育は、保育園とも習い事とも違い、生活全体の中で刻一刻と変化するお子さんの発達をダイレクトに支え促進するものです。1、2ヶ月と言えども、発達支援のニーズのあるお子様への療育支援が滞ることは、とても大きな発達の機会損失になります。
「コロナ禍でも、お子様とご家族への支援を途絶えさせない」
そういった強い思いと、自身にも家族がいる中、感染リスクを伴い出勤することへの葛藤を抱きながら、多くのスタッフが現場で踏ん張っています。全国の事業者の方々が、同様の状況で日々奮闘していることと思います。
親のストレスが高まり、虐待につながる可能性も
コロナが長期化する中で、このようなニュースを目にするようになりました。
記事の中では、お子さんが学校へ通えないために生活リズムが崩れてしまうことや、集団生活を学ぶ機会を失うこと、衝動性が強いために家族だけで容易には外出ができず、家の中で負担を抱え込むことへの不安や困り感が綴られています。
発達障害があるお子さんの中には、家族でも意思疎通が難しい場合も多く、長い自粛生活の中で虐待につながるケースが増えるリスクなども指摘されています。
(NPO法人ADDSが2020年5月の緊急事態宣言時に公開した「発達障害のあるお子さんのSTAY HOME ヒント集」)
発達支援ニーズの「気づき」の機会も失われる
また、小さなお子さんの発達状況をチェックする重要な機会である乳幼児健診も、多くの自治体で休止されました。
自治体のホームページ等では、健診の休止とともに、気になることがある保護者は電話相談などができるという記載が多いですが、自治体の窓口に自ら問い合わせるのは、保護者にとってかなりハードルが高いのが現状です。
こちらの記事では、乳幼児健診の休止に対して医師らが警鐘を鳴らすとともに、家庭で最低限チェックしてほしいポイントをまとめて公開するといった取り組みも報じられました。
日本では、母子保健法を根拠として、市区町村は1歳6か月児及び3歳児に対して健康診査を行う義務があります。厚生労働省「平成29年度地域保健・健康増進事業報告」によると、その受診率は1歳6か月児健診96.2%、3歳児健診95.2%と、非常に高い受診率を誇る日本の優れた母子保健のシステムと言えます。
この重要な発達支援ニーズの「気づき」の機会が、コロナ禍で脅かされました。
オンライン発達相談サービス“kikotto”がスタート!
コロナ禍で困り感は増大する一方、相談や支援機関に繋がりづらい状況は、親子の孤立や、発達の機会損失、また虐待などの様々なリスクにも繋がります。
発達障害やグレーゾーンも含めた要支援ケースの出現割合は、出生数の10%程度とされています。
その2割にあたる年間1万6千件(月間1,300件)の相談を受け入れる体制を作り、自治体や企業との連携を通して、お子さんの発達が気になった時、誰もが気軽に相談し、スムーズに具体的な支援につながることのできる社会を実現させたいー。
そんな思いを実現すべく、昨年、「みてね基金」様、「新型コロナウィルス感染症:拡大防止活動基金」様より助成をいただき、更に、クラウドファンディング「コロナに負けない!駆込み発達相談プラットホームを立ち上げたい」にて、136名の支援者の方からのご支援をいただき、相談システムの開発を進めてきました。
お子様の発達についてLINEやZoomで気軽に発達支援の専門家に相談できるオンライン発達相談サービス、それがkikotto(きこっと)です。
全国どこからでもLINEやZoomで専門家に相談できる!
全国どこにお住まいの方でも(海外からもお申込みいただいております!)、お家でできる工夫をご提案したり、地域の情報を相談員が一緒に調べたりすることで、最適な支援につながるまで伴走します。
kikottoの相談員は、ADDSのメンバーを中心に経験豊かな専門家(臨床心理士・作業療法士・保育士等)が担当しています。回答案の作成にあたってはADDSの10年超の活動から蓄積された相談事例データベースも活用しています。
メインサービスとなる「kikotto LINEチャット相談」は時と場所を選ばす、使い慣れた「LINE」からテキストで専門家に相談できるサービスです。初回15分の無料Zoom相談(聞き取り)を行っており、オンラインでご相談者様とのFace to Face対面に近い形でのコミュニケーションを通して信頼関係を築くことを大切にしています。ご利用者様から「話しやすかった!」というご感想をいただいております。
※相談者様側はご希望によりビデオをオフにしての相談も可能です。
β版リリース記念として2021年3月末までLINEチャット相談が初月980円でご利用いただけます。ぜひ、この機会にお試しください!
(kikottoでの相談イメージ。LINEのチャットや、ZOOMを使っての気軽に相談することができます。)
ADDSの原点は、ある自閉症の男の子とご家族との出会い
ADDSは、以下のミッションを掲げて活動しています。
発達支援を必要とするすべての人が自分らしく学び、希望をもって生きていける社会をともに実現する
活動の原点は15年前。自閉症がある4歳の男の子とそのご家族との出会いがきっかけでした。そのお母様からある時いただいたお手紙があります。
“日本に帰って一番辛いことは、我が子への療育環境がアメリカでいた頃のようには整わないことかな、と思っていました。でも、帰ってきたら違いました。私がアメリカで体験して学んだようなことを、子どもが幼稚園に入るような年齢まで知らない人が数多くいて、多くのお子さんの可能性が失われていることが、一番辛かったです。今も、そのことが一番辛いです。”
日本は欧米に比べて、効果が実証されている療育を受けられる環境が不足しています。
「有効な支援の情報も、支援者も、支援機関も、圧倒的に少ない現状を変えたい」
「すべての子どもに効果的な療育支援を届けたい」
その思いを胸に、2009年の団体設立から10年超走り続けてきました。
(NPO法人ADDS:理事メンバー)
質の高い支援が地域に根付くことを目指して
発達障害あるいはその疑いのあるお子さんとその保護者向けの療育(治療教育)プログラムと、それを提供できる人材育成プログラムを、現場と大学院などの研究機関と連携して開発し、効果検証を行いました。
法人内で有効性が認められたプログラムは、ITの活用などで再現性を高め、全国各地の連携機関に実装していただき、他機関でも提供できるモデルを確立しました。2020年4月からは、江戸川区発達相談・支援センター事業の運営を受託しています。
そういった長年の活動を通して繋がることのできた連携機関の方、研究者の先生方、臨床医の先生方などとネットワークをつくりました。研究領域と各地域の現場が連携して、質の高い支援が地域に根付き、発達が気になるお子さんとご家族が困らない社会の実現を目指していきたいと思います。
NPO法人ADDS共同代表、慶應義塾大学社会学研究科訪問研究員・博士(心理学)慶應義塾大学大学院心理学専攻博士課程修了。
専門領域:応用行動分析、前言語期コミュニケーション、発達心理学に基づく発達障害児の早期療育、ペアレントトレーニング、療育と育児ストレスとの関連、人材育成プログラム開発など
保護者が家庭でできる療育プログラムの研究開発と効果検証を進め、28年度科学技術振興機構研究開発成果実装支援プログラムに最年少で採択。「エビデンスに基づいて保護者とともに取り組む発達障害児の早期療育モデル」の責任者として全国で療育モデルの実装に取り組む。
著書:「できる」が増える!「困った行動」が減る! 発達障害の子への言葉かけ事典
「できる」が増える!「困った行動」が減る! 発達障害の子への言葉かけ事典
療育現場や親御さんの間で、絶大な効果があると今、大評判!画期的方法論ABA(応用行動分析学)をもとに、その子の特性に合わせた教え方、伝え方を大公開!
本書ではこのABAをもとに、様々な声かけやアイデアをご紹介していきます。著者の2人は、これまで約20年にわたり、現場で実際に取り組み培ってきたプロ中のプロ。あらゆる状況を想定した、そのノウハウはどれも説得力があるものであり、かつ、効果があるものばかりです。