子どもの貧困政治・制度

「子どもの貧困対策に関する大綱」を読み解き社会に活かす方法④-京都府の子どもの貧困対策計画(中間案)から考える

「STOP!子どもの貧困・京都ユースミーティング」の様子(STOP!子どもの貧困ユースミーティング実行委員会・あしなが育英会が主催し、筆者も登壇した「STOP!子どもの貧困・京都ユースミーティング」の様子。)

「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が平成26年1月に施行され、8月には「子どもの貧困対策に関する大綱」が8月に策定されました。この大綱を受け、各自治体では、予算編成・事業計画へと動きはじめています。

私の活動拠点の京都府でも全国に先駆けてこれまでの社会保障政策に子どもの貧困対策の視点も取り入れた京都府子どもの貧困対策推進計画の中間案が公開されました。

現在、パブリックコメントを募集となっておりますので、ぜひ、京都府のホームページからコメントをお願いいたします。

地元紙の京都新聞でも記事になっており、計画を作っていくだけでなく、この動き自体を市民のみなさんにも知っていただくことが大切だとも思います。(2015年1月10日・京都新聞/子どもの貧困対策、学校核に支援チーム京都府が推進計画中間案)

京都府子どもの貧困対策推進計画(中間案)

この子どもの貧困対策に関する大綱を読み解くシリーズの第1回目で、各地域での政策提言などのアクションが必要ですということを書かせていただきました。

子どもの貧困対策の推進に関する法律が施行されたのが、1年前の1月17日。この1年間で動きを形として示せた自治体もあれば、議論止まりであった自治体もあったとは思います。

しかし、2014年はこれまでになく、各自治体が子どもの貧困という言葉を意識し動いた一年になったのではないでしょうか?

2015年は、子ども・子育て支援新制度、生活困窮者自立支援法による支援などが本格的にスタートし、子どもの貧困対策に取り組む環境もさらに具体的なアクションとそれぞれの制度との調整などで慌ただしくなるのではないかと考えています。

さて中間案をご覧になられた方はどのような感想をお持ちになられたでしょうか。理念と基本方針としては、

計画の基本理念と基本的視点

1.基本理念
子どもは「将来を担う社会の宝」という理念に立ち、すべての子どもが生まれ育つ環境に左右されることなく、その将来に夢や希望を持って成長していける社会の実現を目指します。

2.基本的視点
・すべての子どもが生まれ育つ環境に左右されることなく、社会の担い手として活躍できる人となるよう育成するという視点で総合的に推進
・すでに義務教育を終えた社会的自立のできていない若者に対して就労支援など社会的自立に向けた総合的な取組を推進
・貧困が世代を超えて連鎖することの無いよう、子どもの健やかな育ちを確保するために、低所得者世帯に対する包括的支援の推進
・学校を子どもの貧困対策のプラットフォームとして位置づけ、子どもの成長・発達段階に応じた、切れ目のない生活・学習支援を府・市町村はもとより、保育所・幼稚園、学校、施設、NPO等地域団体、ボランティアなどが連携・協働する、社会全体の取組として推進

とあります。①子どもの成長段階に沿って計画が検討されていることと、②学校を軸に取り組みを考えていることは、政府の大綱の影響を受けた部分が大きいと思います。しかしながら、計画概要や重点施策をみると、

計画概要や重点施策

就学前期から青年期まで視野に入れた計画ではありますが、親への直接的な支援がこの計画案にありません。

その理由は、これまで京都府の取り組んできた他の事業が大綱でいう部分の親の就労支援や資金支援と重なっているためです。

また、連携体制の基盤が学校であることからも、就学前期の支援の部分では、地域子育て支援の文脈による直接的な支援があるため、このあたりもどこまで子どもの貧困対策として考えるかは難しい部分です。

もちろん、これまでの取り組み以外や今の施策では、不十分なことはあると思います。

だからこそ、親への直接的な支援方法や就学前期の子どもや親の支援が子どもの貧困対策としてさらに盛り込む必要があると思われた方は、ぜひ、パブリックコメントとして寄せください。

行政としては、まずすでに行っている他の施策と重複しないようにと考えます。全てを包括した対策計画なのか、全体の子どもの支援ビジョンの中で子どもの貧困対策に特化した計画とするのか考えていくことが各地域でも大切だと思います。

今回の計画案のなかで、大事な部分がもうひとつあります。

計画の進捗管理

(1)本計画に記載した施策については、基本的にPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のサイクルに沿って実施し、学識経験者、学校関係者、子育てに関する関係者、就労に関する関係者等で構成する「京都府子どもの貧困対策検討会」において点検・評価を行います。

(2)計画期間内であっても、急激な社会変化等により、計画を維持することに不適切な事態が生じた場合には、適宜、本計画を改定します。

京都府子どもの貧困対策検討会は、常設であり、状況に応じた見直しをしていくことです。実態調査や事業評価や社会の状況の変化によっては、プラン変更が必要な場面が出てくると思います。

それを踏まえ、より良い対策を実行と平行してさらに練り上げていく、磨き上げていくということがとても重要だと思います。まだまだ本当に効果的な支援が確立されていないテーマだからこそ、点検・評価、改定は重要になると考えています。

2015年は、子どもの貧困解決に向けた大きな実践の一年になると思います。この拙い文章に最後までおつき合いいただいている皆様、ぜひ全国で共にアクションをしていきましょう。

「子どもの貧困対策に関する大綱」を読み解き社会に活かす方法①-美しい建前にしないために今するべきこと
2013年に成立した「子どもの貧困対策推進に関する法律」から1年と2ヶ月。法律に基づき、今後政府として解決に取り組んでいくための基本方針や柱となる施策を示すものとして「子どもの貧困対策に関する大綱」(以下、大綱)を策定し、8月29日に閣議決定されました。今回の大綱の内容や、具体的にどのような流れで具体的な支援が進んでいくのか、現状の課題などについてお伝えします。
「子どもの貧困対策に関する大綱」を読み解き社会に活かす方法②-支援を「誰に」「誰が」届けるのか?
子どもの貧困対策の動きが、各自治体で少しずつはじまってきました。栃木県小山市では2015年度に重点事業として子どもの貧困対策を予算編成し、事業化に取り組む動きもあります。検討会で議論に上がっているのは「だれに届けるのか」「だれが届けるのか」がわからない状況を打破する方法がないということです。このような社会問題を解決するにあたり、現状を把握することは非常に重要なことです。
「子どもの貧困対策に関する大綱」を読み解き社会に活かす方法③-学習支援と生活支援で解決できるのか?
第3回となる「子ども貧困対策に関する大綱」についてのシリーズです。大綱として一定の指針を示したあとで、争点としてはあまり表にでていない子どもの貧困対策ですが、将来を見据える上では重要であることは変わりません。どこまで踏み込んで実践されるかはこれからの市民からの声次第です。そのためにも、この大綱についても、実現に向けてしっかり議論をしていく必要があります。
Author:村井琢哉
NPO法人「山科醍醐こどものひろば」理事長。関西学院大学人間福祉研究科修了、社会福祉士。子ども時代より「山科醍醐こどものひろば(当時は「山科醍醐親と子の劇場」)に参加。学生時代には、キャンプリーダーや運営スタッフを経験し、常任理事へ。ボランティアの受け入れの仕組みの構築等も行う。副理事長、事務局長を歴任し、2013年より現職。公益財団法人「あすのば」副代表理事、京都子どもセンター理事、京都府子どもの貧困対策検討委員。
著書:まちの子どもソーシャルワーク子どもたちとつくる貧困とひとりぼっちのないまち

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NPO法人山科醍醐こどものひろば

「ひとりぼっちの夜の家で育つ子どもの気持ちを知っていますか?」 あなたの力で寂しい夜を過ごす子どもにほっとする一夜を。

子どもたちは生まれてくる親や社会(地域や時代)を選ぶことはできません。今の時代は親の自己努力や従来の地域のつながりだけで、子育てが何とかならない時代に突入しています。だからこそ、そのような子どもに責任のない「子どもの貧困」を軽減するために、市民の力を必要としています。NPO法人山科醍醐こどものひろばの子どもの貧困対策事業をご支援ください。

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