コロナ禍の影響が長期化する中、多くの人が様々なストレスや困りごとを抱えています。特に経済的な事情を抱える子育て家庭の「食」については、急を要する課題です。
前編の記事では、経済的な事情を抱えている家庭が具体的にどのような状況に置かれているのか、いくつかの調査をもとにお伝えしていきました。
「自分は1日1食、子供はお休みの日は2食」
「昼ご飯を抜き、ご飯は基本子どもが残したものを食べている」
これは、アンケート調査に実際に寄せられた声です。中には子どもの食を優先するため、自分の食を削り、20kg以上痩せてしまったという保護者さんの声もありました。予断を許さない様子が、浮き彫りになっています。
これまで多くの家庭の食を支えていた「こども食堂」も、コロナ禍では従来通りの開催が難しい状況に置かれています。
食は生きる上で必要不可欠なもの。言い換えると、食が保障されていないと生きていくことはできません。
経済的な困難を抱える子育て家庭への「食」の支援は急務です。本記事では、コロナ禍における新たな食の支援の取り組みについて、ご紹介していきます。
まちのみんなの力で、子どもの食から支える
認定NPO法人夢職人(以下、夢職人)は、株式会社フィノバレー(以下、フィノバレー)と連携し、2020年12月より子どもの「食」応援クーポン事業(Table for Kids)を開始しました。
この事業は、コロナ禍における経済的な事情を抱える親子に対して、デジタル通貨を用いて、地域の飲食店と共に「食」の支援を行う取り組みです。「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」の助成を受けて実施します。
(「Table for Kids」の仕組みについて)
この事業を開始することになった一つのきっかけは、食の支援の一環として、夏休みに行われた地域のお弁当配布のお手伝いでした。周知期間が短かったにも関わらず、整理券はあっという間になくなり、予定していた時間よりもはるかに早く、配布は終了しました。
新型コロナウィルスの感染拡大により、従来通りの「こども食堂」の開催が難しい状況の中、支援を必要とする家庭が増えていること、食の支援へのニーズの高さを感じました。
しかし、一方で地域の有志で続けていくには限界があるとも感じました。運営する人員の確保、配布場所の確保や設定、お弁当の衛生管理、感染症対策など、多くの人に届けていくことや継続していくことはとても大変です。
ふとまちを見渡せば、多くの飲食店がありました。その飲食店の多くも、新型コロナによって、経済的な影響を受けています。
「もともとまちにある飲食店を活かして、まち全体を『こども食堂』にできないだろうか。」
「雇用の受け皿にもなっている飲食店の支えにもなる仕組みにできないだろうか。」
そんな発想から、本事業はスタートしました。
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「Tabele for Kids」の特徴とは?
本事業は、スマートフォンアプリの「カケハシコイン」を利用して実施します。
「カケハシコイン」は、個人や企業・団体等からの寄付や助成金などの支援をもとに、まちの飲食店(加盟店)の所定のメニューで利用できるデジタル通貨を付与・管理するアプリです。先駆的にデジタル地域通貨事業に取り組まれていたフィノバレー様の全面的な協力のもとリリースされました。
デジタル通貨は、一ヶ月につき家族分(子ども全員+保護者2名まで)×約3回分を半年間に渡って提供します。なお、利用できる加盟店は、東京都江東区内の11店舗から開始し、順次拡大していく予定です。本事業の特徴をいくつかご紹介します。
(「カケハシコイン」のアプリ利用イメージ)
1.経済的に困っている親子に早く、確実に支援を届けられる!
「カケハシコイン」は、加盟店の所定のメニューにおいてのみ使用できるデジタル通貨です。よって、目的外に使用されることはありません。また、デジタル通貨に有効期限を設けることで、貯蓄されることなく、消費してもらうことができます。支援対象者が決定次第、すぐにデジタル通貨の付与やお店での利用が可能となります。
2.いつでも行ける!いろんなメニューから選べる!
お弁当や食材配布などの支援の場合、どうしても日時が決まっている場合が多いですが、本事業で食を提供してくださるのは、もともとまちで営業している飲食店です。そのため、飲食店の営業日・時間であれば、いつでも利用することができます。また、状況に応じて、店内での利用やテイクアウトを選ぶことができます。メニューの幅も広く、アレルギーについても相談や対応ができ、あたたかく栄養満点のごはんを食べることができます。
3.QRコード決済で、周囲の目を気にせず利用ができる!
会計は、アプリでのQRコード決済となります。近年、様々なQRコード決済の仕組みが広く普及しました。スマートフォンさえあれば、簡単に決済することが可能です。また、通常のQRコード決済と同じ流れになるため、「カケハシコイン」を利用していることは、他のお客さんにはわかりません。誰かの目を気にすることなく、利用できる仕組みになっています。
4.まちに新たな“つながり”ができ、飲食店の支援にもつながる!
本事業では、まちの飲食店に参画してもらうことで、地域の社会課題について知ってもらい、支援の必要なご家庭を気にかけてもらうきっかけができます。子育て家庭とまちの飲食店の「つながり」ができることは、地域全体でのセーフティネットづくりにつながります。
また、前編の記事でもご紹介した通り、コロナ禍では多くの飲食店が苦しい経営状態に陥っています。その飲食店は、地域の大切な雇用の場にもなっております。本事業は子育て家庭への支援はもちろんのこと、ご協力を頂く飲食店への支援にもつながります。
本事業は、現在、特定のエリアで試行していますが、他の地域へ同じ仕組みを展開していくことも可能です。今後も民間企業・団体や個人等からの寄付金や助成金等をもとに、継続的な運営と支援の拡大を目指していく予定です。ブラッシュアップを重ねながら、より必要としている方に支援が届くように、取り組んでいきます。
一人ひとりの応援が、大きな支援に
都市部では新型コロナウイルスの感染拡大が進む一方です。今後も解雇や休業、勤務時間の減少等が続き、経済的に苦慮する家庭が増えることが予想されます。苦しい状況を自己責任にせず、まち全体で子育て家庭を支援していきたいと考えています。
より多くの経済的な事情を抱える子育て家庭を支援していくためには、皆さまからのご寄付が必要です。「Table for Kids」では、寄付で応援して下さる方を募集しています。
食が「生きること」や「命」そのものを支えることはもちろんですが、応援してくれる人の存在もまた、生きる希望につながっていきます。一人ひとりの応援が積み重なると、大きな支援になります。まちのみんなの力で、子どもの食を支えましょう。
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。