先日の8月下旬に平成25年度全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果(以下、全国学力テスト)が文部科学省より公表されました。毎年、全国の小学6年 生と中学3年生に対して、算数・国語の二科目について、抽出又は悉皆調査が実施されています。(※平成25年度は悉皆調査)
学力テストが公表されると必ずといっていいほど、「◯◯県が一番!」、「◯◯は最下位だ!」と都道府県の平均正答率ランキングの話題が上がります。確かに良い結果を出している事例から 学び、活かしていくことは大切なことです。しかしながら、この平均正答率ランキングの話題が大きすぎて、日本の教育を捉えるうえで重要な結果が忘れられてしまっています。
今回の記事では、前回の記事に引き続き、そのもう一つの結果について検証していきたいと思います。
自然体験
Q.自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがありますか?
自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがあると回答している小学6年生は約8割、中学生は約7割となっています。小学6年生は平成24年度よりも減っていますが、中学3年生は平成24年度もよりも増加しています。まだ、2年間のデータのみであり、現時点では、なぜ、自然体験の経験のある小学6年生の割合が下がり、中学3年生の割合が増えているのかは十分に推測することができません。
地域との関わり等
Q.今住んでいる地域の行事に参加していますか?
Q.地域の大人(学校や塾・習い事の先生は除く)に勉強やスポーツを教えてもらったり、一緒に遊んだりすることがありますか?
Q.年上や年下の友達と一緒に遊んだり、勉強したりすることがありますか?
Q.地域の大人(学校や塾・習い事の先生は除く)から注意されたことや、友達や他の子供が注意されているところを見たことがありますか?
Q.地域の大人(学校や塾・習い事の先生は除く)から褒められたことがありますか?
小学6年生で約6割、中学3年生で約3割が今住んでいる地域の行事に参加したことがあると回答しています。平成22年以降に小学6年生・中学3年生ともに参加したことがある子は増加してきており、特に中学生に関しては約4割まで増加しています。
また、「地域の大人(学校や塾・習い事の先生は除く)に勉強やスポーツを教えてもらったり、一緒に遊んだりすることがありますか?」という問いに対して、 「よくある・時々ある」と回答した小学6年生は約45%、中学3年生は約23%となっています。
2年間のデータのみですが、小学6年生・中学3年生ともに増加しています。地域行事や大人との接点を持つ子どもが増えてきているようです。しかしながら、小学生の頃に比べて、中学生になると地域との接点となる行事などへの参加も大幅に減っていることは、年度に関係なく一定している結果になっています。
昔は、異年齢の子どもと関わり合う機会も多かったという話をたびたび耳にすることがあります。「年上や年下の友達と一緒に遊んだり、勉強したりすることがありますか?」という問いに対しては、 「よくある・時々ある」と回答した小学6年生は約74%、中学3年生は50%となっています。
非常に興味深かったのは、地域の大人に怒られたり、注意された経験よりも褒められた経験の方が多いということです。地域の大人からしても子どもを叱ったり、注意することはトラブルのもとになる可能性もあり、褒めるよりもずっと難しいことなのかもしれません。
社会に対する興味・関心
Q.地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がありますか?
Q.地域や社会をよくするために何をすべきかを考えることがありますか?
Q.地域社会などでボランティア活動に参加したことがありますか?
Q.新聞を読んでますか?
Q.テレビのニュース番組やインターネットのニュースを見ますか(携帯電話やスマートフォンを使ってインターネットをする場合も含む)?
「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がありますか?」という問いに対して、小学6年生・中学3年生ともに約過半数が「当てはまる・どちらかといえば、当てはまる」と回答しています。
また、週1回以上新聞を読んでいる小学6年生は約32%、中学3年生は約26%であり、テレビのニュース番組やインターネットのニュースを見ている小学6年生と中学3年生はともに約85%となっています。小学6年生と中学3年生では、地域や社会に対する興味・関心はあまり変わらないようです。
しかしながら、「地域や社会をよくするために何をすべきかを考えることがありますか?」という問いに対しては、小学6年生に関しては4割近いにものの、中学3年生になると約3割を下回り、約1割は減ってしまうようです。
地域社会などでボランティア活動に参加したことがあると回答している小学6年生は約32%、中学3年生は約45%であることから考えると、何か主体的に考えて行動をしているというよりは、学校や地域関係の行事としてボランティアに参加している子が多いと推察されます。
外国に対する興味・関心
Q.英語の学習は好きですか?
Q.学校の授業や英会話教室で英語を学び始めたのはいつからですか?
Q.外国の人と友達になったり、外国のことについてもっと知ったりしてみたいと思いますか?
Q.将来、外国へ留学したり、国際的な仕事に就いたりしてみたいと思いますか?
英語を学びはじめた時期は、就学前から学んでいる子が1割ほどおり、一番多いのは小学5・6年生からのようです。残念ながら英語の学習が好きな子は、小学6年生で約76%、中学3年生で約53%と大幅に減少しています。
また、外国の人と友達になったり、外国のことについてもっと知りたいと思う子は、小学6年生で約71%、中学3年生で約61%となっており、将来、外国へ留学したり、国際的な仕事に就きたいと思っている子は、小学6年生で約39%、中学3年生で約31%となっています。海外への興味・関心は、小学6年生よりも中学3年生の方が約1割ほど減少しているようです。
次回の記事では、子どもたちの「コミュニケーション能力」、「将来に対する意識」、「自尊意識」などを取り上げてご紹介したいと思います。
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。