経済的な困難を抱える子どもたちに対して、塾や習い事、体験活動などに利用できる「スタディクーポン」を提供する公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下、CFC)は、2022年7月21日に、新型コロナウイルスの感染拡大が生活困窮世帯の子どもや家庭に与えている影響について、調査結果を発表しました。
本調査は2022年2月21日~3月25日の期間で、CFCのスタディクーポンの利用者募集に申請した保護者(子どもの学年は小学生・中学生・高校生)を対象に行なわれ、1,902名が回答しました。本記事では、本調査の結果や、明らかになった課題などについて、整理してお伝えしていきます。
◆調査結果①:生活困窮世帯の7割以上が、所得減少の影響がある
新型コロナウイルスの発生による所得の影響を尋ねた質問では、「既に世帯所得が減少した」と回答した割合が49.8%、「今後減少する可能性がある」と回答した割合が24.8%であり、合わせて74.6%にのぼることがわかりました。
所得が減少している背景には「勤務日数の減少」「休職・休業」「失業・廃業」などがあります。「勤務日数が減った」という割合は39.6%と最も多く、「休職または休業した」が14.2%、「失業または廃業した」が9.8%と、雇用状況の悪化が目に見えて明らかになっています。
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◆調査結果②:生活困窮世帯の3割~4割の子どもに「学習機会の減少」「学力の低下」「学習意欲の低下」等の困りごとが生じている
新型コロナウイルスに関連した子どもの学習や教育についての困りごとを尋ねた質問では、「学校事情による授業機会減少(休校・学級閉鎖等)」が45%、「家庭での学習環境(学習スペース、ネット環境等)を整えられない」が32.6%、「学習塾に通えない、または通う機会の減少」が31.9%でした。学習をする機会や環境を整えにくくなった状況がわかります。
また、「学習意欲の低下または学習習慣がなくなった」が40.6%、「学力の低下(成績が落ちた、授業がわからない等)」が37.3%という結果もあり、学習機会や環境を整えにくくなったことが、学習への姿勢や、実際の学力にも影響を与えていることが推察できました。
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◆調査結果③:子どもの教育や学習に関する困りごとのうち、「体験機会の減少」と回答した割合が最多であった(学校内の体験:7割、学校外の体験:5割)
調査結果②と同じく、新型コロナウイルスに関連した子どもの学習や教育についての困りごとを尋ねた質問において、最多の割合だったのは「部活・クラブ活動・学校行事の中止または縮小」で70%、「学校外での体験機会の減少(文化・スポーツ活動、キャンプ、イベント等)」で51.4%でした。学校内外の体験機会の減少について困ったと感じているご家庭が、非常に多いことがわかりました。
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調査結果から、コロナ禍による子どもや家庭への影響は長期化しており、今後も子どもの教育格差がさらに拡大することが強く懸念されます。その背景にあるのは、以下の2つだと考えられます。
背景①:生活困窮世帯における所得減少の長期化
調査では、生活困窮世帯の7割以上がコロナ禍で所得が減少又は今後減少する見込みであるという結果が明らかになりましたが、所得減少の背景として、本調査対象の生活困窮世帯の保護者の約半数以上が非正規雇用労働者であることが関係していると考えられます。雇用形態が不安定であるために、有事の際に勤務日数の減少や失業等に繋がりやすい状況にあるのです。
所得の減少は、子どもへの教育支出を断念せざるを得ない状況を生み出し、特に子どもの学校外での教育機会の格差を拡大させる要因になると考えられます。また、保護者の声からは、経済状況の悪化に関連し精神的なストレスや家族関係の悪化などの声も多く寄せられており、子どもの安定した生活の基盤が奪われてしまっている現状もあります。
背景②:子どもの体験機会の減少
調査では、子どもの学びに関する困りごとの中で「子どもの体験機会の減少」が最多であることが明らかになりました。部活動や学校行事、学校外での習い事など、子どもの楽しみの場や人と交流する機会が減少したことで、子どもが無気力になったり、大きなストレスを感じたりしているという声があがっており、子どもの学習意欲の低下に影響を及ぼす可能性があると考えられます。
学校内の体験機会は、生活困窮世帯に限らず全ての子どもたちにおいて減少していますが、生活困窮世帯の子どもたちは、学校で失った体験機会を学校以外の場で補填するだけの経済的・精神的余裕が少ないという状況もあります。これらを踏まえると、家庭間における子どもの体験機会の格差は、これまで以上に拡大している可能性があると考えられます。
今後、CFCでは、「東京圏での生活困窮世帯の子どもへの教育支援の継続」「スタディクーポン事業(学校外教育支援)政策化の推進強化」「子どもの体験格差の解消に向けたモデル事業の開始」などの方針を設定し、子どもの教育格差の解決に向けて、引き続き取り組んでいくとしています。
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。