教育格差

日本の子どもの教育費の現状②-教育格差の原因は学校外教育にある

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 代表理事 今井悠介

今回の記事では、「これからの社会を担う子どもの教育とお金のあり方とは?~すべての子どもたちが必要な教育を受けられるために~」と題して、2013年6月29日に東京都港区の日本財団ビルにて開催したフォーラムの内容の一部についてご紹介いたします。

第一回目の「日本の子どもの教育費の現状①-教育費は親が負担すべきが当たり前」の続編の記事となります。

学校外教育費(塾・習い事等)の占めるウエイトが大きい

1年間で家庭が負担する学習費の内訳

上記の表は、1年間で家庭が負担する学習費の内訳(1人あたり)について整理したものです。日本では、学校教育費や給食費などよりも圧倒的に学校外での教育費に多くの割合が割かれています。これは、日本の教育費の大きな特徴です。例え高校を無償化し、幼稚園から高校まですべてが公立の学校に通ったとしても、一定の金額負担がかかる原因がここにあります。

公立の小学生・中学生を抜き出し、円グラフにすると学校外教育費がいかに多くの割合をしめているものなのかよくわかります。

公立の小学生・中学生を抜き出し、円グラフにすると学校外教育費がいかに多くの割合をしめているものなのかよくわかります。では、学校外教育の内訳はどのようになっているのでしょうか?

中学3年生の学校外教育サービスの利用状況をまとめたもの

こちらは、中学3年生の学校外教育サービスの利用状況をまとめたものです。複数回答可の調査になりますので、複数のサービスを併用している子どももおります。他の習い事に比べ、学習塾や進学塾に通っている子がとても多いことがわかります。塾や習い事をしている子が8割におりますが、残りの2割は学校外教育サービスを利用していません。

相対的貧困状態にある経済的に苦しい家庭を対象とした調査

この調査は、相対的貧困状態にある経済的に苦しい家庭を対象とした調査です。塾や習い事をしていな理由として、「経済的に余裕がないから」というのが一番の理由として挙げられています。やはり、このグラフを見ていただくと一目瞭然で経済的な状況によって、こういった学校外教育の機会が得られないという状態は存在しています。

「教育費で負担が大きいと感じるものはなんですか?」という質問をしています。ダントツの63%の方が「学校外教育費」と回答

さらにこの調査では、「教育費で負担が大きいと感じるものはなんですか?」という質問をしています。ダントツの63%の方が「学校外教育費」と回答しており、大半が負担が大きいと感じています。学校に関する費用を負担に感じている方は、さほど多くないこともわかります。

学校外教育費支出と学力には相関関係がある

学校外教育費支出と学力には相関関係がある

明らかに「学校外教育費」と「学力」には、相関関係が存在します。月に5万円以上を学校外教育に対して支出している家庭と全く支出していない家庭では、明らかにテストの点数にも差がついています。このグラフは算数ですが、二倍近く点数が違います。こういった差がつく傾向は、他の教科についても同じことが言えます。

貧困が連鎖していく負の螺旋ループ

これまで見てきた通り、日本は教育費を自分で負担しなければならない額が多いため、結果として所得の格差から教育の格差が生まれる構図が出来ています。これによって低学力、低学歴を招いて不安定な少額就業に陥っていきます。

また、彼らが大人になった時にも貧困状態が続いてしまい、貧困が連鎖していく負の螺旋ループが起こっています。貧困の原因は、各国によって異なると思います。少なくても日本の教育格差は、学校外教育で起きていることは明らかです。

予想し得る最悪の未来

ここまでちょっと子どもたちの教育費の現状を見てきたわけなんですけれども、ここまで聞かれてみなさんどう思いますか?「日本の子どもはかわいそうだ」と思われた方も多いのではないでしょうか?この事実は、そんな他人事では済みません。今の子どもたちが厳しい状況に置かれているというのは、それよりも上の世代にも確実に影響を及ぼします。

予想し得る最悪の未来

このグラフは、これまでの結果とこれからの予想について、日本の人口推移を10年ごとに区切ったものです。今、日本は少子高齢化が急速なスピードで進んでいます。

2050年には、生産年齢人口といわれる15歳から64歳は、現在の人数ら約-55%になります。一方で高齢者は、約120%ぐらい増えます。一人の高齢者を支えるために働く若い世代というのが、2010年の段階では2,77人ですね。それが、2050年の段階では、1,33人になるとそれだけ一人あたりの負担というのは増えます。

さらに、生活保護受給者が増えているっていうような話を聞かれたことがある方も多いのではないでしょうか?今、生活保護受給者は日本に約205万人いるという風に言われていて、その内訳をみるとすごく特徴的なのが、働ける層、15歳から64歳の生産年齢人口の生活保護受給者がすごく増えているという状況です。

どういうことかというと、要はこれから普通にいっても働ける人たちがすごく少なくなっていって、支えなければいけない高齢者の方が多くなっていくにも関わらず、働ける層の中で支えてもらう側になっていく人たちもどんどん増えています。

これはもっと最悪の未来を想像すると、これを加味して生産年齢人口で割ってみると、2010年には一人の高齢者を支えるのにいる生産年齢人口が1,09人になるんです。もう、ほぼマンツーマンディフェンスです。

「子どもたちは未来を担う」という言葉ではなくて、本当に子どもたちを支えるということは、自分たちの地域を支えるということであり、自分たちの国を支えるということと同義です。

この問題を解決するためには、やっぱり教育の投資を増やすしかありません。「なんでこれは投資なのか?」というと、これは自分たちの問題であり、子どもたちに対して教育費を支出するということは、自分たちに返ってくるものです。だから、これは教育支出ではなくて、教育投資なのです。

Editor:今井悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事。大学在学中に、不登校児童等の支援に携わる。卒業後、株式会社公文教育研究会(KUMON)に入社し、子どもの学習指導や学習教室のコンサルティング業務に従事。東日本大震災後、チャンス・フォー・チルドレンを設立し、代表理事に就任。子どもの貧困対策センター・公益財団法人あすのば アドバイザー、学校法人軽井沢風越学園評議員。共著「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」。

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チャンス・フォー・チルドレン

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(CFC)は、日本の子どもの貧困・教育格差という深刻な社会課題に対して「学校外教育バウチャー」という新しい課題解決の手法で挑んでいます。経済的困難を抱えた子どもに、塾や習い事等で利用できる「教育クーポン」を給付することで、子どもたちが未来の展望を描き、夢に向かって学ぶ環境を提供しています。

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