今回の記事では、「これからの社会を担う子どもの教育とお金のあり方とは?~すべての子どもたちが必要な教育を受けられるために~」と題して、2013年6月29日に東京都港区の日本財団ビルにて開催したフォーラムの内容の一部についてご紹介いたします。
日本は子どもの教育にお金がかかる国
みなさんの中で、日本という国がどれぐらい子どもの教育費を出しているってご存知でしょうか?対GDP費で言うと、大体3.6%。これだけ聞いても、実際多いのか少ないのか分からないですよね。
これを国際比較してみると日本が子ども達に対して出している教育費というのは、実は世界的に見たら非常に最低ランクであることがわかります。例えば、1番のデンマークと比べると、国が出している教育支出というのは半分以下の状況です。これは裏を返して言えば、『日本は家庭が自分で教育費を負担する割合が非常に多い』ということがわかります。
このグラフでは、OECD諸国を教育費の私費負担額の割合が多い順番に並べています。特に東アジア、日本や、韓国では子どもの教育費を自分で負担しなければいけない額が比較的多いことがわかります。一方で、北欧の諸国に関しては、国が子どもたちの教育費を持つというような文化があります。
さらにその私費の内訳を見てみると日本は、高等教育(大学等)に関する支出の割合が極めて高いことがわかります。日本は、小学校~高校にかけては、諸外国に比べて公的支出が少なくないですが、特に大学等の高等教育に対する公的支出が少ないことが特徴です。
なお、データにはありませんが、幼児教育も私費負担割合が高く、大体6割ぐらいは、自己負担をしなければいけないというような現状があります。
このデータを見た時に、皆さんはどのように思われましたか?私自身は、「全部国が負担してくれる国があるんだ」と驚きました。なぜなら、私たちの認識の中では、『教育費を親が負担することは当たり前』という感覚があるからではないかと思います。
教育費は親が負担すべきが当たり前
このグラフは、「子どもの教育費は誰が負担すべきか?」ということを意識調査したものです。だいたい半分くらいの家庭が「子ども達の教育費というものは、親が負担する、ということが当たりだ」という認識をしています。こういった背景があって、「所得による教育格差があるということに対してどう思うか?」という調査をすると、半分以上が「仕方が無い」と思っているのが日本の現状です。
また、そのように思われている方の割合は、年々増えており、半分以上の方々は、それは仕方ないものだというようなことを思っています。しかし、海外に目を向けてみると、実はそういったことが当たり前でないことの方が多いのです。
日本の教育費の支援制度
では、日本の政府は「何にもしていないのか?」というとそうではなく、この教育費の問題というのを認識していろんな動きがあります。2010年から高校の授業料は無償化になりました。2014年度からは、幼児の教育費を第三子からは無償化し、第二子までは半額まで補助する補助制度もつくろうとしています。
日本では、大学の奨学金のほとんどは返済の必要な貸し付けがメインですが、国際的にみると、メインは給付型になっています。今、実際、雇用の状況がすごく悪いので、奨学金を受けたけれども、なかなか仕事に就けずに返せないという状況も出てきているので給付型の奨学金も検討されているそうです。また、民間の寄付を原資にした奨学金というものも日本には多数存在しています。
高校の授業料が無償化されたとしても全く負担がなくなるということはありません。幼稚園から高校まですべてが公立の学校に通ったとしても、およそ500万円ほどはかかります。「なんで無償化している状況でもそんなにかかるの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?では、どのようなことにお金がかかっているのでしょうか?詳細を次回の記事で説明したいと思います。
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事。大学在学中に、不登校児童等の支援に携わる。卒業後、株式会社公文教育研究会(KUMON)に入社し、子どもの学習指導や学習教室のコンサルティング業務に従事。東日本大震災後、チャンス・フォー・チルドレンを設立し、代表理事に就任。子どもの貧困対策センター・公益財団法人あすのば アドバイザー、学校法人軽井沢風越学園評議員。著書「体験格差」、共著「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」。
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