初等教育中等教育

全国学力テストで平均正答率ランキングよりも大切なこと-日本の子どもの現状を知る①

勉強する子ども

先日の8月下旬に平成25年度全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果(以下、全国学力テスト)が文部科学省より公表されました。毎年、全国の小学6年生と中学3年生に対して、算数・国語の二科目について、抽出又は悉皆調査が実施されています。(※平成25年度は悉皆調査)

学力テストが公表されると必ずといっていいほど、「◯◯県が一番!」、「◯◯は最下位だ!」と都道府県の平均正答率ランキングの話題が上がります。確かに良い結果を出している事例から学び、活かしていくことは大切なことです。

しかしながら、この平均正答率ランキングの話題が大きすぎて、日本の教育を捉えるうえで重要な結果が忘れられてしまっています。今回の記事では、そのもう一つの結果について検証していきたいと思います。

あまり知られていませんが全国学力・ 学習状況調査には、国語・算数の結果を調査するだけではなく、学校や子どもの現状を把握するうえで重要な質問紙調査を同時に行なっています。

この質問紙調査は、年々内容が拡充されており、子どもには学習意欲、生活習慣など120項目に渡って調査しています。学校には指導方法や児童生徒の学習態度などを聞いています。文部科学省では学力テストの結果とクロス集計して学力向上策に活かそうとしています。今回の記事では、この質問紙調査の一部を取り上げながら、日本の小学6年生・中学3年生の現状を検証していきたいと思います。

 基本的生活習慣(朝食・睡眠時間)

Q.朝食を食べていますか?

朝食を食べていますか?

Q.普段(月~金曜日)、1日どれくらいの時間、睡眠を取ることが最も多いですか?

普段(月~金曜日)、1日どれくらいの時間、睡眠を取ることが最も多いですか?

学習面のみならず、子ども心身の成長にも関係している朝食と睡眠時間は、上記のグラフの結果が示されています。平成25年度を見ると、小学6年生で96.2%、中学3年生で93.7%の子どもが朝食を取っていると回答していますが、毎年、小学6年生で1%、中学3年生で2%前後で「全くしていない」と回答しています。

また、睡眠時間では、8時間以上の睡眠を取ることができているのは、小学6年生で74.4%、中学3年生で23.3%となっており、小学生から中学生になると睡眠時間が大きく減少している傾向があります。中学3年生においては、約1割が「6時間よりも少ない」と回答しており、明らかな睡眠不足の子が10人に一人はいることになります。

基本的生活習慣(メディア)

Q.普段、1日当たりどれくらいの時間、下記のメディアに接していますか?(見たり・聞いたり・やったりする)

①テレビやビデオ・DVD

テレビやビデオ・DVD

②テレビゲーム(コンピュータゲーム、携帯式のゲームも含む)

テレビゲーム(コンピュータゲーム、携帯式のゲームも含む)

③インターネット(携帯電話やスマートフォンを使う場合も含む)

インターネット(携帯電話やスマートフォンを使う場合も含む)

④携帯電話やスマートフォンで通話やメールをしていますか?

携帯電話やスマートフォンで通話やメールをしていますか?

小学生・中学生ともに携帯電話やスマートフォンの所有率は、増加傾向にあり、小学6年生で43.8%の約半数が所有し、中学3年生は69.5%の約7割が所有している。それに伴い、インターネットの利用率も増加し続けており、携帯式の機器を利用してのテレビゲームを行う子も増えています。スマートフォンが普及するにつれて、インターネットやテレビゲームがより身近なものになっています。

テレビやビデオ・DVDの視聴時間は、3時間以上の長時間利用している子は減り、1時間未満の短時間利用の子が微増しています。高機能な携帯式の機器が普及に伴い、家族で共有することなく、個別でインターネットやテレビゲームを行うことができ、インターネットに関するリテラシーを啓発していく必要が高まっています。

土曜日の過ごし方

①午前

②午後

土曜日の過ごし方は、午前と午後に分けてみると上記のようになります。午前・午後ともに小学6年生の場合は「習い事やスポーツ、地域の活動に参加している」という子が多く、中学3年生の場合は圧倒的に「学校の部活動に参加している」という子が多くなっています。また、「家でテレビやビデオ・DVDを見たり、ゲームをしたりしている」という子も午前・午後に関わらず2割前後いることがわかります。

午後になると両方とも「友達と遊んでいる」と回答している子が増えます。小学生から中学生となり「家族と過ごす時間」は、午前・午後ともに減っています。「学習塾など学校や家以外の場所で勉強している」という子は、全国平均のデータからするとさほど多くないこともわかります。

家庭でのコミュニケーション等

Q.家の人と普段(月~金曜日)、夕食を一緒に食べますか?

家の人と普段(月~金曜日)、夕食を一緒に食べますか?

Q.家の人と学校での出来事について話をしますか?

家の人と学校での出来事について話をしますか?

Q.家の手伝いをしていますか?

家の手伝いをしていますか?

Q.携帯電話やスマートフォンの使い方について,家の人と約束したことを守っていますか?

携帯電話やスマートフォンの使い方について,家の人と約束したことを守っていますか?

平日の夕食を家族と食べている子どもの割合は、小学6年生で9割、中学3年生で8割となり、例年同程度です。逆を返せば、小学6年生で1割、中学3年生で2割程度の子が家族と一緒に夕食を取っていないことになります。

とても興味深いのは、小学6年生・中学3年生ともに「家の人と学校での出来事について話をしますか?」という質問に対して、「している」又は「どちらかといえば、している」という子が年々増えてきていることがわかります。これは子ども自身だけでなく、学校生活に対して関心を持つ親が増え、親の働きかけが変化してきている可能性があります。

「家の手伝いをしていますか?」という質問に対しては、小学6年生で8割、中学3年生で6.5割程度の状況であることは例年変わらないようです。

先にメディアリテラシーの必要性について述べましたが、「携帯電話やスマートフォンの使い方について,家の人と約束したことを守っていますか?」(携帯電話を持っている子のみに質問)に対しては、平成21年度の調査から比べると、以前よりも「守っていない、または、約束はない」と回答している子は減っていますが、それでも小学6年生で1割、中学3年生で2割近くが「守っていない、または、約束はない」と回答しています。小学6年生においては、平成24年度の調査に比べて、「きちんと守っている」と回答した子の割合が下がっています。

スマートフォンなどの高機能携帯を持つ子が増えていく中で、どのようにルールを決めていくべきか家庭でも頭を痛めているところも少なくないように思います。定期的にルールを見直しながら、子どもの実情も踏まえて取り決めをしていくことが大切です。

次回の記事では、子どもたちの「自然体験」、「地域との関わり」、「社会や外国への興味関心」などを取り上げてご紹介したいと思います。

Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、岩切準が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報を毎月ご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。
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