子ども支援専門の国際NGO公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2022年3月に現職の小学校から高校などの教員を対象として、「学校生活と子どもの権利に関する教員向けアンケート調査」を実施しました。その結果、子どもの権利の認知度・理解度と権利教育の実施状況や課題点が明らかになりました。
子どもの権利の認知度・理解度について
「子どもの権利を知っていますか?」という質問に対しては、約5人に1人の21.6%の割合が「内容までよく知っている」と回答しました。一方、「全く知らない」「名前だけ知っている」という回答は「よく知っている」を上回り、合わせて30%にのぼりました。勤務年数が短い教員の方が、認知していない割合がより高かったとしています。
子どもの権利としてふさわしい内容を選ぶ設問では、「すべての子どもは、大人と同じように1人の人間であり人権を持っている」を88.2%が選択しているものの、一方で、ふさわしくない内容である「子どもは義務や責任を果たすことで権利を行使することができる」を27.6%が選択していました。まだ、「遊ぶ、休む権利」や「意見を聴かれる権利」を約40%が選択していなかったりと、正しい理解が進んでいない状況が明らかになっています。
子どもの権利の尊重・心がけていること
「あなたは、学校生活において子どもの権利を尊重していますか?」という質問に対しては、48.5%が「尊重している」と回答しました。一方、「ある程度尊重している」という回答も45.3%にのぼりました。
「普段、学校で子どもと接する際にどのようなことを心がけていますか? 」という質問に対して、いくつかの項目についてどのくらい当てはまるのか聞いた設問では、「学校・学級運営において、子どもの意見を聴き、その意見を取り入れている」について「どちらともいえない」「あまり当てはまらない・当てはまらない」と回答したのは、15%以上にのぼりました。
子どもの権利教育の取り組み状況・課題
「直近の1年間で、子どもたちに子どもの権利を伝えるために、あなたの学級ではどのような取り組みをしていますか?」という質問に対しては、約半数である47%が「特に取り組みはしていない」と回答しました。「授業で教科書を読んで、子どもの権利に関する内容を伝えた」「授業外で子どもの権利についてより深く学ぶ機会をつくった」などの各項目について、取り組んでいる割合はおよそ20%程度でした。
取り組みが実施されにくい背景には、教員が感じる権利教育の難しさがあります。「適切な教材がない」「教員が多忙で子どもの権利についての授業を実施する準備ができない」「子どもに関心を持ってもらうのが難しい」などの意見が、上位となりました。
セーブ・ザ・チルドレンは、本結果をもとに、多くの子どもたちが一日の大半を過ごす学校において、子どもの権利を学ぶ機会が保障されるよう、教員・学校関係者を中心とした子どもの権利の啓発活動や、子どもの権利教材の開発・普及を進めていきたいとしています。
<参照記事>
・セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン:学校生活と子どもの権利に関する教員向けアンケート調査結果
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。