”子どもの貧困”という見えにくい課題。
この課題解決に取り組み続けている、一つの団体がある。
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下CFC)。CFCは、経済的な困難を抱える子どもたちに、塾や習い事、体験活動等で利用できるスタディクーポンを提供する事業を展開しながら、家庭の経済格差による子どもの教育格差を解消し、貧困の世代間連鎖を断ち切ることを目指している。
CFCの東京事務局に勤務している山本雅(やまもとみやび)さん。現在、彼女は広報担当として、様々な関係者に「伝える」ということに、日々尽力している。
前編(課題を社会に発信し、共感と支援の輪を広げる)は、山本さんがCFCで働くことになった経緯など「過去」を中心に、後編では仕事のやりがいや、今後の目標など、より「未来」の部分に触れていく。
子どもや支援者の声が何よりの励み
CFCの事業は、個人や法人から寄付を募り、それをクーポンのお金に充てるというモデルとなっている。集まった寄付額によってクーポンを支給できる人数が変わってくるため、一人でも多くの子どもに届けるために、継続的に寄付を集め続ける必要がある。
当然、寄付を集められなければ、クーポンを支給できる人数が減る。受益者への影響が目に見えてわかり、非常にシビアな面もある。
CFCの仕事のやりがいとは、一体何だろうか?
「一番は、子どもや保護者さんの声を聴いたときですね。広報の仕事として、お子さんに実際に話を聞いて、寄付者さんに届けたりもするのですが、クーポンを使って頑張っている、という話をお子さんから聞くと、すごく嬉しくなります。この間も保護者さんからお手紙をもらって、不覚にも泣いてしまって」
長らく学校に行けていなかったあるお子さん。そのお子さんはクーポンを使って、パソコン教室に通い始めたそうだ。できることが増えて少しずつ前向きになり、少しずつ学校との接点もできてきた。クーポンをいただいたおかげで、とても感謝している、とその手紙には書いてあった。
クーポン利用者だけではなく、寄付者の声を聞くことも、またやりがいにつながっている。お子さんの声を寄付者に届けて、「寄付してよかった」「これからも応援したい」と言ってもらえると、素直に嬉しい。
山本さんの仕事は、クーポン利用者と寄付者の架け橋だ。寄付者の「応援しているよ」の声とともにクーポンを利用者に届け、利用者の「ありがとう」の声を、寄付者に届ける。地道で、丁寧な発信が、両者をつなぎあわせることができる。
問題を構造的に解決する
「教育に携わりたい」と思うと、どうしても学校や学童の先生など、直接子どもに関わる職業が思い浮かぶ人も多いだろうが、CFCの広報の仕事は、直接的な対人支援ではない。
家庭環境によらず、より多くの子どもが学校外教育の機会を得られるように、下支えをしていくこと。決して目立つ仕事ではないし、子どもの反応を毎日肌で感じられるわけでもない。
だからこそのおもしろさ、やりがいもあると、山本さんは話す。
「CFCは、子どもの貧困問題を、構造的に解決しようとしているんです。どのような社会構造から、これらの問題が生み出されているのか。どうしたらいち早く解決できるのか。自分たちの力だけでは難しいので、行政に提言をして、自治体の政策として実施してもらえるよう、働きかけたりもしています。自治体という大きな機関が動いているのを間近で見るのは、大きなやりがいですね」
子どもたちの直接的な支援は現場の方々に任せ、自分たちは別の角度から問題にアプローチする。それぞれの強みを活かし、役割分担をしながら取り組むことで、より早いスピードで課題を解決していくことができる。
そう信じて、日々の仕事に取り組んでいる。
いろんな人の力を借りながら、一つのことをやりとげる
CFCの職員は、東京、仙台、関西の事務局を合わせて全部で10名。事業規模からすると決して多くはない人数で、課題解決に取り組んでいくためには、社外の人の存在はとても大きい。
「職員がたくさんいるわけでもないから、社内だけではできないことを、社外の方にお願いしたりすることは多いですね。デザインやWEBサイトの構築とか。年に1回の年次報告書は、特に多くの方の協力が必要で。社外の人とコミュニケーションをとりながら一つのことをやりとげる、ということが、少しはできるようになってきた気がします」
NPOは資金も人手も豊富にあるわけではないからこそ、自分たちだけで何とかしようとせず、関係者の力をいかにうまく借りられるかがキーである。
協力してもらう際に大事なことは、「相手の気持ちに立って考える」ことと「感謝を忘れない」こと。基本的なことだが、ついつい忘れがちなことでもある。
書面などで何かを伝える時は、「相手がこれで理解できるだろうか?」と何度もチェックする。やってもらってあたりまえではなく、感謝の気持ちを忘れずに伝える。それがないと、人に動いてもらえない。
「『巻き込む』という言葉は個人的には嫌いなんですよね。どちらかと言うと『協力してもらっている』でしょ?と思ってます」
(社内ミーティングでの議論も活発。役職に関係なく意見を交わしている。)
混沌としている中でも、やるべきことを見つけていける
応募してもらっている全ての子どもにクーポンを届けること―。
それがCFC全体としての目下の目標である。団体発足から、少しずつ支援の範囲を広げられるようになってきたが、まだまだニーズに追い付いていない面もある。
支援の範囲を広げていくために、今後は広報担当としての発信力がより求められる。それには、広報の知識だけではなく、教育全般への理解を深めることも必要だ。通信制大学に通っているのは、そのためでもある。
最後に、CFCで働くことに向いているのはどんな人か、尋ねてみた。
「地道に活動することができる人でしょうか。CFCの活動に対する共感があって、自分なりにやりがいを見つけていけるのは大事かなあと。今一緒に働いている人は、静かな熱がある人が多いかもしれないです。混沌としている中でも、自分で仕事を見つけたり、作り出したりしていくことも必要ですね」
より多くの子どもにクーポンが届き、多様な教育機会が得られるようになるために。
家庭による経済格差が、教育格差に結び付かない社会になるために。
山本さん、CFCの取り組みは、これからも続いていく。
スタッフ募集:チャンス・フォー・チルドレン
チャンス・フォー・チルドレンでは、ファンドレイザー、マーケティング・広報担当のスタッフを募集しています。現在のスタッフは、異業種・未経験からのスタートしています。興味関心のある方は、下記の「スタッフ募集の詳細」からご連絡ください。
団体名 | 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン |
職種 | ファンドレイザー、マーケティング・広報 |
雇用形態 | 契約社員 |
給与 | 月給23万円~(年齢、経験を考慮し、社内規定に基づく) ※昇格・昇給あり【モデル年収】 例1:28歳(役職なし・入社1年目) 月給24.5万円 年収イメージ385万円(賞与含む/別途、時間外勤務手当・交通費実費支給)例2:35歳(マネージャー職・入社5年目) 月給32.3万円 年収イメージ508万円(賞与含む/別途、時間外勤務手当・交通費実費支給) |
福利厚生 | ・賞与年2回(6月、12月) ・時間外勤務手当 ・扶養手当 ・社会保険完備(健康保険・厚生年金・雇用保険) ・交通費支給(上限あり) |
業務内容 | 下記のような仕事をチームメンバーの一員として取り組んでいただきます。 ・ファンドレイジング施策の立案(マーケティング) ・講演イベントの企画運営 ・寄付者とのコミュニケーション(法人・個人) ・WEBサイトやSNSの管理、情報発信 ・広報媒体の制作(年次報告書、寄付募集チラシ等) ・その他、法人の管理業務、事務局業務全般 |
期待する成果 | 下記のような仕事をチームメンバーの一員として取り組んでいただきます。 ・ファンドレイジング施策の立案(マーケティング) ・講演イベントの企画運営 ・寄付者とのコミュニケーション(法人・個人) ・WEBサイトやSNSの管理、情報発信 ・広報媒体の制作(年次報告書、寄付募集チラシ等) ・その他、法人の管理業務、事務局業務全般 |
勤務地 | 東京都江東区亀戸6-56-17 稲畠ビル3F 最寄駅:JR総武線亀戸駅から徒歩2分 |
勤務時間 | 10:00~19:00(休憩1時間) ※ただし、勤務時間は希望に応じて調整可能です。 |
休日休暇 | 週休2日制(土・日)、祝日休み ※土曜・日曜に出勤の必要がある場合は別の曜日に振替 ※有給休暇、夏季休暇、年末年始休暇有 |
応募資格 | 20代、30代の方を優先します。 ※ただし、スキル・経験等により、上記に該当しない場合も応募できる可能性があります。 |
求める人材像 | ・子どもの教育格差解消というミッションに共感する方 ・社内外の方と円滑にコミュニケーションをとれる方(営業経験者歓迎) ・企画書や提案書を作成する基礎的なスキルを持っている方(基礎的なPCスキルは必須) ・自ら業務を組み立て、遂行できる方 ・こつこつと地道な仕事ができる方 ・チームで仕事をするのが好きな方【こんな人は向いていない】 ・混沌としたところや決まっていない中で物事を動かすのが嫌な方 ・地道な仕事を継続することが苦手な方 |
採用予定数 | 1名 |
選考プロセス | ・書類選考(履歴書、エントリーシート) ・面接選考(採用担当者、代表者等) ※面接選考は3回程度行います。 |
Author:Eduwell Journal 編集部
本記事は、山田友紀子が担当。Eduwell Journalでは、子どもや若者の支援に関する様々な情報をご紹介しています。子どもや若者の支援に関する教育や福祉などの各分野の実践家・専門家が記者となり、それぞれの現場から見えるリアルな状況や専門的な知見をお伝えしています。